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猫弁が好きで流れで手に取った作品。
大山サンらしい一冊。
ふんわりした中に芯が通ってるイーヨくん。優しい母の語り口。
一人一人が何かを抱えてる姿を、流れるように書く感じ・・・と言えば良いのかな?(汗)少し変わった人物を優しく描く大山サン、やっぱり好きです。最後、イーヨくんの幸せな時間を見れて良かった。
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イーヨくんも薫さんも、
自分の内面のなかの気になる部分を
みせられているようなキャラクターだと思った。
案外そう思う人って多いんでないかな。
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ちょっと不思議感のある物語。おばけが語り手になっていたりね。かるーい気持ちでサクッと読んだ。
何でも「いいよ」と受け入れてしまうイーヨくんは、亡くなったお兄さんの妊娠した恋人と結婚することになってしまう。それでも「いいよ」と受け入れた。そんなイーヨくんが変わり者に見える薫さんの心を溶かしていく。その裏に過去の出来事があったりするんだけどね。
何でも受け入れちゃうイーヨくん。自分もこんなふうに何でも「いいよ」と受け入れることができたらなと思う。受け入れることができるって屈託なくできる能力をもっているからでもあるだろうし。一方で、イーヨくんの気持ちが全然描かれないから、何でも受け入れるって人間ばなれした一種の不気味さもあるような。
話は変わるけど、「いいじゃないか。なにものでもないって」「なにものかになるって、ほかの選択肢を捨てるってことじゃない?」って会話の箇所(p.123)があって、ちょっとチクッときた。何者でもないって可能性に満ちていることでもあるけど、一方で、何のとりえもスペシャリティもないってことでもあるよね。この年になっても何者でもない自分はついつい後者のようにとらえてしまう。
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母親は20年前に事故で亡くなっている。
父親は妻の突然の死を受け止められずに、父親を放棄し家出。
それ以来、母親の兄妹である叔父伯母に育てられた5人兄弟の長男がこれまた突然病死した。
その通夜に長男の婚約者を名乗るおばさん妊婦が現れた。
そこから始まる物語。
末っ子の伊代太は、どんなことにも「いいよ」と引き受けてしまうボンヤリさんで「イーヨくん」と呼ばれており、叔父も手を焼き「この女に伊代太を押し付ける」ために妊婦と伊代太を結婚させることに。それにも「いいよ」と受け入れてしまう。
20年前に死んだ母親が、伊代太を心配するあまりにあの世からこの世に戻って見ている視点。
叔父・伯母の視点。
伊代太の兄弟の嫁や彼女からの視点。
幼馴染の女性からの視点。
そして問題の妊婦からの視点。
それらが交差してお話が進んでいく。
終盤に驚きの展開もあり、イーヨくんが「いいよ」と言い続ける理由も、母親が急死した喪失感を埋めきれないそれぞれの心の中もほんわりと出てきて、悲しいけれど優しい。
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初めての作家さん。
大山さん好きの友人が貸してくれた1冊。
猫弁やら何やら…数冊大山さんの小説を貸してくれたけれど、なんだろう…なんとなく引かれるようにしてこの小説を読み始めました。
読了後、読むべくして手にした一冊だったなぁと実感。
初めはどんな展開になるやらと思いながら…気付くとぐいぐいストーリーに引き込まれてあっという間に読んでしまった。
ぽ〜っとしていてふんわり柔らかなイーヨくん。
頼りなげなのに実はぜ〜んぶ分かっていて「いいよ」と言っている逞しさ、強さ、優しさ、柔らかさ…本当はとても頼もしい人なのでは?
全ての事に感謝し受け入れられる人って実はとても強い。
人に合わせている様できちんと自分の中で咀嚼して受け入れられて何も言わず納得出来る人って実は強い。
本当の優しさってすごく強い。
その分委ねてしまった人は強烈な罪悪感に苛まれる…優しさって時に残酷だから。
最後の最後はイーヨくんらしい。
ほっとけないよね、イーヨくんは。
でもほっとけないじゃなくてイーヨくんはそうしたかったのでしょう。
だから薫さん、そこに罪悪感はいらないんじゃないかな?
だって「いいよ」じゃないイーヨくんの意思だったから。
なんだか最後はとても美しく清らかな温かな結びでした。
本当の意味でイーヨくんと薫さんが幸せな人生を送れるといーな。
読んで良かった(*^^*)
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『あずかりやさん』『猫弁』に続き、大山淳子さん3冊目の読了。人物の性格、心情を描くのが巧みで、いずれも温かな余韻の残る読後感です。
まずは登場人物の名前。これはジョークですか? 文豪をもじった名前のオンパレード!
5人兄弟の父・夏目銀之助(漱石の本名は金之助)、伯父・志賀直弥(文豪は直哉)、長男の婚約者・太宰、幼馴染み・堀、とまぁ著者なりのオマージュと受け止めました。
周囲から「イーヨくん」と呼ばれる夏目家五男・伊代太が主人公です。受け答えはいつも「いいよ」。歩く無意志・厄介者とみなされ、使い勝手のいい便利な人間として描かれていますが‥。
読み手としては、この伊代太を最初は「可哀想」と受け止めますが、次第に、「そこは<いいよ>じゃないでしょ!」と言いたくなるくらいに「イライラ」も覚えます。
しかし、読み進めるうちに、素直で成績優秀、人の要求をこなす能力があり、頼りになる人間として、周囲は認識を改めていきます。
20年前に事故で他界し、この世に降臨して伊代太を心配する母の目線も、慈愛に満ち胸を熱くさせます。
ありえない状況と様々な謎に引き込まれながらも、次第に秘密が明かされていき‥、ついにイーヨくん人生初の「いやだよ」! よしっ! よくぞ言った!
とまぁ、これだけ物語に完全没入している私なのでした! いや〜、やっぱり大山淳子さん、上手いなあ。
仕事や人間関係に疲れている方に、是非手に取っていただきたい一冊です。