紙の本
前著の非論理性は薄まったが・・・
2016/12/31 11:45
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投稿者:親譲りの無鉄砲 - この投稿者のレビュー一覧を見る
矢部宏治氏の前著「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないか」に続く第2弾。内容の多くは重複しており、引き続き日米外交史上の両国指導層による密約的取り決めが正式な条約類に落としている影について述べている。多くは、ジョン・フォスター・ダレスの用いた交渉相手に当方の真意を見抜かれないように細心の注意を払って、米国に有利な、逆に日本にとって不利な取り決めを飲ませていくテクニックが明らかにされる。ダレス話法とでもいうべきものだ。今回は、吉田アチソン交換公文というあまり知られていなかった密約に必要以上のスポットライトを当てている。彼らの交渉過程すべてが日本国民に(場合によっては理想主義的な米国民にも)知らせたくないことばかりなので、今後仮にこの手の同様な密約が暴かれても屋上屋を重ねるようなもので、取り立てて意味はない。実はその交渉当事者の政治理念やメンタリティの解明の方が重要なのだが、著者にはそのあたりに切り込んでいく余力は無いようだ。ただ、これらのテクニックを、「インチキ」と決めつけたことには、思索上の進歩が若干みられる。
前著では、やや扇情的に日本国憲法の上位法規として日米安保条約と関連協約類が置かれている、という指摘があり(例えば沖縄の実情を鑑みればそう言いたくなる部分も理解はできるが、法のauthorizationの観点からすると暴論である)、これらを無効化するには、米国人が書いた日本国憲法特に9条2項を改憲し、フィリピンモデルを採用せよ、のような本末転倒の主張がなされたりしていて、頭に血が上った人の本は部分的に正しいことが書いてあっても、全面的に鵜呑みにしてはいけないな、と痛感させられたものである。但し本書では、そのあたりは若干トーンダウンしており、少し冷静になっていることは理解できた。
インチキの法は随時改めていくことができる。それにはreviseされるべき前の取り決めとの「文章的な整合性」が問題なのではない。それを重要視しすぎると、ダレス話法に絡め取られるのだ。前に取り決めた約束の何が間違っていたのかを、その本質論について誠心誠意説得交渉することなのである。米国にも国そのものの高潔さを求める人たちは沢山いる。そういう人たちと団結していくことも重要なのだ。体裁の良い文章として矛盾のない法体系があれば、沖縄の基地問題や原発の問題が解決されるわけではない、ということを今一ご本人が分かっていないようだ。違憲状態で日本がそのままその状態を放置した或いは事態を悪化させたのがその証拠ではないか?!密約は、悪い取り決めで両国を牛耳っていこうとする人たちだけの覚書であり、彼らにとっての精神安定剤にすぎないのだ。
マッカーサーモデルなら理想的であり・・・、的な記述も見られるが、マッカーサー本人にさほどの公正さを認める必要はない。マッカーサー草案の理想主義的な部分のソースはGHQ民生局のケーディスらである。(憲法24条の人権条項(女性の権利等)に関するところは、ベアテ・シロタ・ゴードンが担当した。)彼らは本国にマッカーシズムが勢力を増すことにより、マッカーサー在任中のGHQ内でも力を失い解任され帰国していったのだ。(GHQ内での反共のウィロビーらに追い落としを食った。)さらに、トルーマンによれば、マッカーサー解任の最大の理由として、朝鮮戦争での核兵器使用を強硬に主張したから、とさえ言われているご仁なのだ。また連合国占領軍のことを、国連軍と書くのも間違いである。英語は同じでも、成り立ちが全然違う。どうもこのあたりが、著者の誤解の根本部分にあるようである。
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戦後、日本は米国の属国であることを、ある意味自ら選択したのではないか、と思った。今の日本人、特に政治家にこの状況を変えようとする意志があるか。「戦後レジームからの脱却」なんてうそっぱちだとしか思えない。ポピュリストのもとで危険度は増している。
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『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』を書いて地域協定の問題をあぶり出した矢部さんの第二弾。本書では、安保条約などの条文化されたものの他にいくつもの日米密約なるものがあり、これが日本をしばっていることを問題にする。その一つは、日本の基地を自由に使えるという密約、もう一つは戦争になったら自衛隊はアメリカ軍の指揮下に入るという(指揮権)密約である。実際、自衛隊が使っている兵器はそのほとんどが警察予備隊のときからアメリカ製(のお古)で、データも暗号もGPSもすべてアメリカ軍とリンクしているらしい。だから、戦争になったら米軍の指揮下に入るというより、最初から米軍の指揮下でしか動けないようになっている。また、自衛隊が守っているのは日本という国土でなく、在日米軍とその基地だという。オスプレイの導入にしても、その動かし方をみていてもいちいち腑に落ちる点だ。矢部さんは、こうした問題を公開された膨大な英文の機密文書を細かく読むことで繙いていく。その切り口はわかりやすいし読みやすいが、それでも本書を理解するのは決してやさしくない。矢部さんによれば、現在の日本は白井聡さんの言う占領体制の継続ではなく、まだ占領下にあったアメリカへの戦争協力態勢が、いまも法的に継続しているということである。つまり、中国の統一を横目で見て、いまなら朝鮮半島を統一できると思って南へ攻め込んだ金日成の軽率な行動(それはスターリンの承諾を得ていたのだが)が、戦後の日本を含むアジア情勢を大きく狂わせたのである。もちろん、朝鮮戦争がなければ日本の復興はもっと遅れていた。しかし、この戦争は日本が真に独立する機会をも失わせた。矢部さんの結論は、この論理からは必然なのだが、ある意味意外でもある。それは、朝鮮半島統一を促進させるプロセスの中で、日本は一旦は米軍基地を追い払ったフィリピンモデルに学び、アメリカとの不平等条約を解消していくことだと言う。それはドイツが東西統一過程で行ったことでもあった。/本書の冒頭では、六本木の真ん中にヘリポートがあり、それが米軍横田基地と結んでいることが明らかにされる。(横田空域なるものがあり、日本の飛行機がその上を飛べず迂回していることはかなり知られては来たが)また、最後のところでは憲法を改正するのではなく、修正条項を追加するという方法があることが、先の著の批判を受けて紹介されている。政治家の人たちにぜひとも読んでほしい本である。(山本太郎さん、ぜひ国会で質問してください)
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前作の『日本はなぜ基地と原発を止められないのか』よりも、条文解釈が多かったので、読み進めるのに時間がかかった。でも、読んでよかった。
今までとは全く違った視点で、条約締結や、日本政府やアメリカ政府の行動を見ることができる。
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「日本はなぜ、基地を止められないのか」
「日本はなぜ、原爆と被曝を止められないのか」
「日本はなぜ、戦争を止められないのか」
これらの問題の大きな構造の根幹に横たわっているのが、まだ占領下にあった時代のアメリカへの戦争協力体制が、今も法的に継続し続けているという、「戦後日本」の歪んだ国のかたち。
この本の中で紹介されるアメリカの公文書の多くは、アメリカ国務省歴史課のホームページで誰でも閲覧できる、とか。
特定秘密保護法によってこれから国家にとって知られたくないことは隠されるのではないか、ということを思った。
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「日米両政府は5日、沖縄県での米軍属による女性暴行殺害事件を受けた再発防止策で合意した。」このような報道が流れると日本政府は沖縄のことで米政府としっかり交渉しているとの印象をもつ国民もいるのでしょうが、このような弥縫策では日米の関係はなにも改まらないことがこの本を読むとよく分かります。要するに、占領下にアメリカとの戦争協力体制を法的に結ばされてしまったという、この根幹部分をひっくり返さないかぎり日本はアメリカの属国であり続けるのです。果していまの日本の政治家でこの難題を解決できるのでしょうか。
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日本はなぜ基地と原発を止められないのか、の続編。アメリカには日本における基地権だけでなく、指揮権もあるということを証明した本。
これも前作に続いて恐るべき事実です。
つまり安保法制の混乱は全く無意味であって、最初から決まっていたということがよくわかる。
一方で、トランプの考え方にも近く、こんな所でトランプの主張でマッチしてしまうというのも、だいぶアメリカも時代の価値観の変化に合わせて変わってくるものだというのも理解です。
一方でこの議論と原発反対の主張はどうも噛み合わない。不思議な著者です。
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歴史で学んできた戦後の高名な政治家が、いかに虚構でしょうもない実力しか無かったのか、とちょっと絶句する。そして、現状を見るに、それを打開する力のある政治家がいるかと考えると、なんとも厳しいと言わざるをえない。
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つくづくアメリカのその場しのぎで行き当たりばったりのやり方には怒りを通り越してうんざりしてしまう。自国の利益を第一にするのはもっともだが、それにしても大国の意識を持って欲しい。
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占領下のアメリカへの戦争協力体制が、今も法的(安保+行政協定+密約+砂川判決)に継続し続けている。
憲法改正により、「完全にアメリカに従属し、世界のあらゆる場所で、戦争が必要と米軍が判断したら、その指揮下に入って戦う自衛隊」という体制が、名実ともに完成する。
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「戦争の脅威が生じたと米軍司令部が判断したときは、すべての日本の軍隊は、アメリカ政府によって任命された最高司令官の統一指揮権のもとに置かれる」(p.127)
日本は本当に独立国と言えるのか。
日本の戦後史に潜む闇に迫る!!!
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』もご一緒に!
【神戸市外国語大学 図書館蔵書検索システム(所蔵詳細)へ】
https://www.lib.city.kobe.jp/opac/opacs/find_detailbook?kobeid=PV%3A7200488521&mode=one_line&pvolid=PV%3A7200488521&type=CtlgBook
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1950年7月~12月
朝鮮戦争での米軍との共同軍事行動で、踏み込んでしまった米軍の別部隊(警察予備隊)としての役割。
米国の要請通りに突き進んだ憲法違反の道。
米軍を国連軍だと錯覚した日本政府。
形式上の非戦の誓いになってしまった9条。
安倍さんの現状と被って仕方がない。
倒錯している日本と米国の状況を
「サンフランシスコ・システム」
として、一刻も早く終わらせなければならないものとして、実は少なくない米国人が望んもいる。
読んでいて悲しくなったが、
日本もドイツ、フィリピンのような本当の独立国家としての道を歩むのか、このまま米国(米軍)の占領状態を続けるのか、日本人一人一人が考えて答えを出すべき問題。
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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』
より内容が難しかった。
さらっと通しで読んだ後、再度、動画を観ながらポイント確認してなんとかでした。
著者の憲法、防衛に関する主張は賛同できないんですが
戦後処理の詳細な記述は前作同様に読み応えある。
参考文献の記載が5ページもあり、数えたら109冊だった。
田原総一朗×矢部宏治
https://youtu.be/0JF5KV30NLc
矢部宏治・孫崎享
https://youtu.be/Ds-USLMcwAk
矢部宏治・天木直人
https://youtu.be/M4HdaJ60jic
鳩山友紀夫×高野孟×矢部宏治
https://youtu.be/0iwbSUEhcQk
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『日本はなぜ「基地」と「原発」がやめられないのか』を読んでいたのですぐさま読んでみた。
分かりやすく纏められてる。
日本の外務省が、体系的に保管、分析、継承することをしないことに.....?????
民主主義について、自衛隊について、憲法改正 追加条項方式について、勉強あるのみ。
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民政は許すが軍政は握る。義務は無くして権利を広げる。豪腕ダレスのしたり顔が目に浮かび不快です。占領下で、国連にも未加入の時期、四面楚歌のなか、独立を悲願とする日本を相手に、赤子の手を捻るような交渉で実質日本を属国化する道筋をつけてしまいます。万感の思いはありますが、先ずは、国民が広くこの事実を知り、どう受け止めるのかということです。