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L
思えばこの視点のはなしを読んだことがなかったので新鮮。大奥トップの話ではなく、それぞれ階級や出自も違う女中どもの嬉々交々。たった1日が長い。長いけれど退屈せずに読ませてもらったと思う。十数年大奥にいたら、徳川や仕える主人達への想いや忠誠も半端なく、そりゃ下界を恐れる気持ちもわかるわ。
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江戸城明け渡しの前夜、大奥に奉公する5人の女中が退去命令に背いて大奥に残る。
生まれる前から当たり前に存在し、未来永劫続くと信じられてきた江戸幕府。
女中達にとっては「家」であり、女が自らの足で立てる唯一の「職場」。
その生き甲斐と誇りを奪われ戸惑うのも無理はない。
今までの大奥に対する陰湿なイメージとは違って、女達のイキイキとした大切な「場」であったことが分かった。
奉公する場も居残る理由も異なる「残り者」5人は明け渡しに納得し、無事新たな道に踏み出せるのか!?
天晴れな5人!
読後、清々しい気持ちになれた。
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大奥解散の日。
奥女中の見届けた江戸城明け渡しである。
江戸開城自体が大きな事件なので、これといった事件は起こらず、女中たちの目から見た明治維新、そして篤姫、和宮が淡々と語られる。
天璋院篤姫に仕える奥女中たち、『呉服之間の「りつ」』『御膳所の「お蛸」』『御三之間の「ちか」』『御中臈「ふき」』
静寛院和宮に仕える『呉服之間「もみぢ」』
5人の女たちは、それぞれ胸に秘めたものから、朋輩たちがすでに退去してしまった江戸城に残り、夜を迎える。
仕事の内容が異なる故、今まで顔を合わせる事は無かったが、いまや仕切りは取り払われたのだ。
彼女らは、探り合い、いさかいをしたりしながら、己を語り始めるのだった。
日本史上何本の指に入るだろうか…
大量失業!
しかも女だけの!
それはそれは、いろいろあっただろう。
天璋院は、彼女らの再雇用先や縁談を身も財もつくして心を砕いたという。
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江戸城明渡し前夜、大奥に務める様々な職階・境遇の5人の女を出会わせ、大奥の内部事情や働く矜持を見せてくれます。ありえない話ですが、ユーモアがあったり、人情話であったり、話の運びが巧みで最後まで読ませてしまいます。まかてさんの物書きとして器用な一面を知りました。
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大政奉還後、大奥退去の日のお話し。あまり今まで大奥の奥女中の立場から大奥退去を見た話を読んだ事がないので興味深かったけれど、一番盛り上がるかと思っていた官軍が江戸城に入場する場面があっさりでやや物足りなかった。ただ明治になって残りものだった5人が、ちゃんと時代に乗り遅れることなく元気に過ごしている様子が最後に描かれていたのにはホッとした。
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明治維新の江戸城御引き渡し前日、江戸城に残った大奥詰めの女性達の物語。
よー、こんなシチュエーション思いついたなぁとまず感心した。
大奥と聞くと、男は(というか俺は)淫薇と陰気をゴチャまぜにしたような、怖くて近寄り難い女の園、ってなことを想像するのだが、実際そういう部分もありぃの、でもお役所仕事・官僚仕事的な(当時は立派な行政機関であるわけで)部分もありィの…もう、絶対近寄りたくないような、魑魅魍魎でケッタイな世界。
そこに居残った登場人物たち、今風に言えば、親会社倒産と企業合併に伴い、明日から職場がなくなる女性のバリバリキャリア官僚(将軍のお手付きがない立場の人ばっかりです、ちなみに)たちがおりなす物語。
プライドは高い・スキルは高い・未来は暗い・今まで生き凌いできた複雑怪奇な重層カーストは瓦解する…、激動の明治維新にはこんな風に苦労した人たちもいたんだなぁと、そんな気持ちで読み進めつつ、さすがは朝井まかて。決して物語を暗くすることはなく、むしろ滑稽風味を最大限に生かす展開でクライマックスやラストまで進んでいく。
歴史的な大事件が市井(というにはエリート社会すぎるが)の生活に沁み広がる圧倒的な影響力と、そんな影響力の元でもしたたかに元気に前を向く登場人物たちの生き様に、読者のこちらまで勇気をもらえるような、気持ち良い小説だった。
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江戸幕府の終焉に伴う江戸城明け渡しの日、大奥の女たちが去った後にまだ残る五人の女の一晩の話。
その後の篤姫や和宮の話は取り上げられることもあるが、名もなき奥女中や更に下の女中たちから見た江戸城明け渡し、大奥への想いなどは興味深く、新鮮だった。
この五人の女たちはこの一晩があったからその後の時代の変化にも上手く乗れたようだが、大奥でしか生きられない女たちもいたはずで、その後の人生は様々なだったのだろうなとも思うと切なくもなる。
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いやあ面白い。すばらしい、名女優を並べて舞台劇になりそう。大奥を舞台にこういう物語、想像力、素晴らしい、脳内スタンディングオベーションで読み終えた。
大奥、西丸明け渡しの日から始まる。実質、登場人物はわずか5人。呉服之間の「りつ」、御膳所の「お蛸」、御三之間の「ちか」、御中臈の「ふき」、そして呉服之間(和宮付)の「もみぢ」。場所移動もシンプルで時間も交錯せずほんの数日だけの動き、実にシンプルに設えられた舞台のなかで物語は進む。こういうの難しいだろうなあ。でも見事だった、バラバラな性格の5人だけれど、読み進めるうちに、みなのことが好きになれたし、それぞれがかっこよかった。大奥を支えた女性たちの誇りを感じたし、そしてそこを去ることになる日の“心残り”に想いを馳せることができた。ラストで語られる、「その後」の明るさも◎。大満足の読み応えでした。
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いや~、楽しく読ませていただきました。
時代物をこんなにも楽しく描いているのなんて、、、
猫ブームもあやかって、サト姫様。
大奥解体で、残った5人の女性たち。
皆、一生懸命の言葉通り、その場所で、自分の才覚を出していたのに、大奥という場をなくしてしまった。
どうなる。。。。。
後段の明治時代の数ページが、又良い。
残り物(者)に福!
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幕府が倒れ、江戸城を明け渡さないといけないのに、大奥で働く女性数人が残ろうとする。大奥と言えば、ドロドロ女の嫉妬の話が多いが、これは大奥の生活の様子がわかり、どこかほのぼのとした本だった。
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大政奉還、江戸城明け渡しの日、
大奥の女性たちの悔いと葛藤。
旦那様である天璋院の「ゆるゆると、急げ」のひと声で
江戸城を去っていった大奥の女性たち。
針仕事を誇りに思う呉服の間のりつ
天璋院の猫のサト姫を探す御膳所のお蛸
籠城するつもりだった勝ち気な御三の間のちか
静寛院宮側の呉服の間のひねくれ者のもみぢ
天璋院につかえる御中臈の冷静なふき。
明け渡し目前のがらんどうの江戸城に
未練を残したままの5人の
それぞれの気持ちと脱出まで。
大変な時代だったんだろうな、、、と。
みんな個性があって、たまに難しい昔の言葉遣いや
歴史に疎くても、大丈夫。
激動の時代を乗り越えて
身分も年齢も違う5人が再会する最後がまたいい。
とりあえずNHKのドラマで映像化してほしい。
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幕末、官軍への引き渡し前夜の大奥に残った5人の女たちの物語。
最初はごく普通に読み始めたのです。何せ話がどこに向かうのかよくわからな無い。しかし、御中臈・ふきの莫連ぶりが表れ始めたところから、俄然五人のキャラが輝き始めて面白くなって行き、一気に話も進み始めます。そして、穏やかなエンディング。
とても楽しいエンタメ時代小説でした。
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初出 2014-〜15年「小説推理」
さすが私のひいき朝井まかて。今まで描かれることのなかった呉服之間や御膳所という大奥の職掌の人物を取り上げて、江戸城明け渡しという激動の日を、そこにいた人々がどういう思いで受け止めたかを描いている。
貧乏旗本の娘阿藤りつは伯母の世話で大奥に上がり、足を引っ張り合って上を目指す小間使いの御三之間勤めに疲れ、呉服之間へ移って針仕事に生き甲斐をもって働いていたが、退去の日主天璋院(13代将軍家定夫人篤姫)に従って一橋邸に行くべきところ、大奥がなくなり職場を失うことに戸惑いひとり呉服之間に戻る。
りつは、天璋院の飼い猫を探す御膳所の御仲居お蛸、天璋院が大奥に戻るのを待つという御三之間のちか、若侍のようだと人気の御中臈ふき、静寛院宮(14代将軍家茂夫人和宮)の呉服之間のもみぢに出くわす。出て行きたくないとふて腐れるもみぢと針仕事の腕比べをすることになり、日が暮れてふきは自分の部屋に4人を泊め、それぞれが身の上や大奥での仕事への誇りを語る。ふきは天璋院や静寛院宮が薩摩や京に帰らず徳川に残り、徳川家の存続と江戸の市民を守ろうとしていることを説き聞かせる。真の「残り者」は5人の女ではないのだと。
翌朝、隠し部屋から引き渡しと略奪を目撃し、抜け道を通って危地を脱出する。
最後に明治17年の彼女らが集う。
ほっとする。江戸びいきの私としては、こういう人々がいて、苦労して生き抜いたことに胸が熱くなる。
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幕末、大政奉還し江戸城を明け渡すその日、全ての者が引き払ったはずの大奥に残った者達がいた。
江戸城最後の夜をその者達がどう過ごしたらのか、何故出て行かなかったのか。
その夜の出来事とその後を描いている。
大奥女中達の暮らしや矜持が垣間見えておもしろかった。
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大奥で天璋院(篤姫)に仕えるりつ,お蛸ら,ちか,ふき,もみち” らの物語だが,それぞれの身分が違っており,やり取りが面白かった.猫のサト姫の話もよかったが,りつともみち”の御針競べの話が素晴らしかった.千人近くの女性が集まっていた大奥は想像もつかないが,本書でその一端を見せてもらった感じだ.