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火を使った肉料理がいかに人間の進化に優位に働いたのか?!という仮説は説得力がある。それが全てではないかもしれないが、ヒトが現時点繁栄している理由の一つと感じる。
ダンパー数で著名なロビン・ダンパー氏のエキサイティングな一冊。
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ダンバー数で有名な著者の新作。
従来の社会脳仮説に加え、時間収支とヒトの進化の関係についても語られるが記載はとても冗長。進化心理学的な話を期待して読み始めると、延々と続く考古学的な考察にちょっと食傷気味になる。
人類は、生物学的な進化よりも文明的な発展によって地球上の覇者となってきた。
脳は大きさが全てではない。共同体の規模は前頭葉の大きさによって決まる。ネアンデルタール人は大きな脳を持っていたが、北方に居住していたため赤道付近よりも薄暗い中での生活を営んでいた。そのため視覚システムおよび基礎的な身体機能に特化した脳を必要とし、結果的に“スマートパート(高機能な部位)”が少ししか残らなかった。後方優位に脳が大きくなり、前頭葉は小さかった。
前頭葉から見た適正なヒト集団の数は150人で、これは血縁関係を認識できる最大の数
もう一つ重要なのが時間収支で、これは食べ物探しなどの必須時間を引いて残る、社交に費やされる時間。
言語の役割は社会的なつながりを肉体的なもの(毛づくろい)から音声に転換することで複数の個体を同時に「毛づくろい」することで、より大きな共同体をつくることを可能にする。
毛づくろいは、その恩恵を受けるのは毛づくろいを受けている個体だけだが、笑いの場合は冗談を飛ばす一人とそれに耳を傾けている二人全員がエンドルフィンの作用を経験する。(笑いを共有できるのは3人までだと著者は言う)
その他、物語と宗教の果たしてきた役割も大きい。
・結核菌はニコチンアミド(VitB3)を産生するが、VitB3は主に肉からしか摂取できず、不足するとペラグラなどの症状を引き起こす。DNAの研究からはヒトの結核菌は7万年以上前にその起源があり、人類の脳が急に増大した時期とも近い。ある種の共生関係にあったのかもしれない。
・単婚社会というのは自分たち夫婦以外と仲良くすることを妨げるため、大きな社会をつくるのには本来不向き。しかし、単婚のシステムがないと子殺し(他のオスが産ませた子を殺すことで、メスを妊娠させやすくしようという戦略)がおきやすくなる。また、メスの用心棒としてオスを雇うということも単婚化のメリット
・女性が閉経するという現象は哺乳類では人間ぐらいでかなり珍しい。しかし、そのおかげで自分の子育ての後、娘の子育てを手伝う(祖母による子育て)が可能になった。
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無慈悲である。人間の行動原理はあきれるほど遺伝子(つまり自然淘汰の結果)に依存している。殺人も、宗教も、浮気も、接待も、ゴルフも、合唱もなにもかも。
ポイントは、サルは毛づくろいをするということ。集団が大きくなればなるほどその維持にあたり毛づくろい=エンドルフィンを伴うコミュニケーションが必要になり、限られた時間の中で効果を最大限にするため笑いや歌や食事会や酒や宗教が生まれた。
この本を読む一つの目的が、なんだかいろいろと種類の見つかっている猿人、旧人、そしてホモサピエンスへという流れをちゃんと知ることだったが、予想した以上に詳細に進化の過程を辿ることができた。
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ヒト科の進化の歴史を独自の尺度で再度紐解いていく。
まずは、エネルギー収支で脳の容量をまかなえるだけの食料を得るための時間と休息から計算していく。脳の容量でカロリーが計算でき、現生人類は25%が脳に取られている。ヒト科の各種もそれぞれ進化するにつれて収支が厳しくなってきた、それをコミュニケーション(まずは笑い、そのあとは言語)で時間は取られるが安全を確保する。肉を食べることでカロリーおよび栄養の摂取効率をアップする。火を使って料理することでも大幅に効率はアップするが、その前に地球が寒冷化することで、日中の消費カロリーが抑制されたことも大きいと思われる。現生人類は五次の認識ができるため宗教を生み、それが求心力となって、ネアンデルタール人などよりも大きな社会集団を生成できたことが生存につながったと著者は見ている。
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化石情報だけに頼らず、著者の手持ちの武器である「進化心理学」を使って人類進化の道筋をとらえなおそうとする。24時間という制約の中で、食料を調達する時間、コミュニケーションに費やされる時間をどう捻出するか。そこに「人間」の進化が現れるというアプローチはなかなかおもしろかった。
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多くのパラメータを「社会脳仮説」と「時間収支モデル」の2つに収束させることでこれだけスッキリと人類の進化を捉えられるというのが面白い。
あくまで仮説やモデルであり、新たな考古学的発見によって修正を余儀なくされることもあるだろうが、非常に俯瞰的な取り組みに思える。
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摂食と移動、社交、休息に必要な時間収支モデルを使って、人類の進化を考察する。霊長類では、社交時間と集団規模は正比例する。生息地の豊かさ(降雨量に依存する)と集団の規模によって移動時間が決まり、それが大型霊長類の生物地理学的分布の制限要因となる。
人差し指の長さの薬指に対する比率(2D:4D)は、胎児が子宮内でさらされたテストステロン濃度の影響を受ける。オスどうしがメスを争う多婚種では2D:4D比が小さく、単婚種では1に近い。体の大きさの性差ともあわせて、現生人類につながる種はどれも多婚だったと思われる。
アウストラロピテクスが生息した土地での予測時間収支を合計すると、7%超過する。これを、食性を変えること(肉、骨髄、シロアリ、根や根茎)、水辺や洞窟で暮らすことによって解決していた可能性がある。また、チンパンジーよりも、ヒヒに近い食べ物探しをしていたと推測される。
初期ホモ属(原人)は身体と脳が大きくなり、大きくなった脳は共同体が大きくなったことを意味するので、時間収支はエルガステルで30%、エレクトスで34%超過する。エルガステルが出現した180万年前に、熱帯アフリカの気温が2℃下がり、休息時間を減らすことができた。歩幅が大きくなったことにより、移動時間を短くできた。火を使った証拠が豊富に見つかるようになるのは50〜40万年前からで、これ以前は料理が習慣にはなっていなかったと思われる。笑いはエンドルフィンの分泌を促し、3人まで影響を与えるので、社交時間を減らした可能性がある。
ハイデルベルク人の脳容量は、30万年前に飛躍的に増えた。火を使いこなす時期の後なので、肉を料理したことが要因と思われる。ネアンデルタール人は、網膜から入ってくる情報を処理する後頭部が発達しており、眼窩が現生人類より20%大きいのは、高緯度地帯の弱い日射しに適応したためかもしれない。共同体の規模は、ハイデルベルク人と同じ約110人で、前頭葉は大きくなかった。多くの人を巻き込み、タイミングを合わせるリズムによって共時性が得られる音楽によって、社交時間を減らした可能性がある。
火を灯として使うことで、活動時間を伸ばすことができた。解剖学的証拠からは、発話能力は50万年前に旧人とともに進化したようだ。言語に不可欠なメンタライジング能力は、眼窩前頭皮質の容量と相関があり、アウストラロピテクスは2次、初期ホモ属は3次、旧人は4次、現生人類は5次の思考意識水準にあったと推測できる。遺跡で見つかった道具から原材料の移動距離は、ネアンデルタール人では70%が25km未満だが、現生人類では60%が25km以上で、より大規模な社会ネットワークがあった。衣服に付くヒトジラミは、頭髪に付くアタマジラミから進化し、DNAの変異によると、10万年前から衣服を身に着けるようになったことがわかる。
方言は、出身地が同じであり、互いに血縁のある人々の共同体を特定することに役立つ。病気の温床である熱帯では小さく結束の強い共同体を形成するが、植物の生育期が短く、盛んな交易関係が必要な高緯度地域では、集団の規模や同じ言語が話される地域が大きい。
新石器時代の定住地の人々は、同時代の狩猟採集者より小柄で、農業によ��栄養の推定回収率は食べ物探しよりかなり低いことから、定住に転換した背景には、きわめて深刻な理由があった。共同体の存続期間は、構成員に要求する犠牲の大きさに比例する。酒は大量のエンドルフィンの分泌を促す。オオムギとヒトツブコムギは、パンではなくビールをつくるために栽培されたらしい。神を熱心に信じる人は、他人に対して親切に振る舞い、集団の規則を守る傾向が強い。
これまでの人類進化の議論は、主に脳の拡大がいかにして実現されたかといった点に注目されてきたが、本書は、脳の大きさと集団規模、活動時間を包括的に考察している点が画期的だ。特に、集団の規模が大きくなることによって必要になる社交の増大を、笑い、音楽、言葉、酒によって解決してきたとする考察は、それぞれの発生時期の議論は残るものの、これらが現代社会でも大きな役割を果たしているという意味で興味深い。
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他の類人猿といろいろ比べて人類の過去を推測する、みたいなの。扱うデータとかどんどん進んでてすごいねえ。しかし謎はまだまだ多い、っていう見方によってはぜんぜんわかってないってことでもある。
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ちょっと時間がたつとあっという間に謎は謎ではなくなる。
でも私が仕入れた知識の源はこの本だったのかと思いました。
ちょっとだけわかりやすくした論文か教科書を読んでいる気がした。友達の数は何人のほうが面白かったし読みやすかったです。