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今回、別読書サイトではじめて献本が届き、とても嬉しく思った。読みかけの本を急いで読み、今月読む予定を変更して読み始めた。
はじめて読む作家さんの本ではあるけれど、ミステリーだから大丈夫だろうと気楽に読み始めた。
とんでもなかった。
内容が酷いということではなく、読むことが辛いのだ。
普段なら二日くらいで大抵一冊読むのに、どうしても数十ページを読むことしか出来ない。
本を読むことを仕事としているわけでもなんでもないので、読みにくいと数日かかることはある。それでも、献本書評の期限という日にちを過ぎても読み終えることが出来ない。
今月、今までに読んだのはこの一冊。こんなにかかったことはない(そこまで読みにくければリタイアしているだろうし)。
辛い読書だった。
この書評を読まれたかたのために、この作品を書かれた作家さんの名誉のためにももう一度書く。
内容は酷くない。
きちんとミステリーとして読ませる作品だった。
多分、わたしにはリアルすぎたのだ。だから辛くて読み進められなかった。
記者ディクテの隣家の厩舎が火事になった同じ夜、学校が放火される。
そして、隣家にいた女性の惨殺死体が発見される。彼女は放火された学校の教師でもあった。
この事件の謎を主人公ディクテ、刑事ワーグナーを中心に解明していく。
ミステリーなら、特段珍しくもない設定だ。
ディクテの家庭環境、母親との確執、手放した子供、離婚を経験したのちの恋人との生活、こういった主人公の背景に、全く同じではないところもあるが、わたしには辛い部分があり、なかなか読めなかった。主人公の苦しみが痛々しくてならない。
また、被害者家族の抱える父親による虐待、外聞と信仰のために子供を救えず抑圧する母親といった内容も、身近にいる親しいひとの生活に重なった。
そのため、こんなに読むことが辛いことがあるだろうかと、丸一日本を手に取れないこともあった。
今回、この本ははじめての献本であるためになんとしても読みたい、そう思いなんとか読み終えた。
書評が遅れたことをどこに謝罪したら良いのかわからず、言い訳と謝罪の混在した書評らしからぬ文章になってしまったことを、この文章を読まれたかたにもお詫びしたい。
過去のことであっても、自分なりに落とし所を見つけたと思ったことでも、思わぬ形で生々しく甦ることがあるということを実感出来た良い機会だった。
今回の読書で無理に良かったことを挙げるのなら、こうなる。
主人公の心象描写、事件と解決への運び方など、きっと多くの読者のかたは面白く読める作品だろうと思う。
北欧が舞台で、一時北欧ミステリーブームもあり、この本も多くの読者を楽しませると思う。
北欧ならではの社会の仕組みというかお国柄というか、日本人にはすんなり納得しづらい描写が北欧ミステリーにはあるように感じたことがあり、今回も少しそれは感じた。
はじめての献本書評であるのに、ろくに作品自体の良し悪しが述べられず申し訳ない。
どうぞ、この感想はあるひとりの人間のもの���して、多くのかたが読んでみてはと思う。
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エルスベツ・イーホルム。デンマークの作家である。
色々あって、今がある人、特に女性を描くのがうまい。
1巻目でも、その「色々あって」はじっくり書いていた。しかもディクテをはじめとする女性3人分。いや、刑事ワーグナーを入れれば4人分か。よって、話がなかなか進まなかった。
それが、2巻目のこちらでは、ヒロインを一人ディクテに絞っている。すばらしく読みやすくなった。
じっくり描いているのだが、じめじめはしていない。
悲しみを描くにも、怒りを描くにも、程よくユーモアを添加して、しかもそのあんばいがうまいので、うまく読ませるものとなっている。
「わたしは正しい。正しいは高くつく」
「いろいろあって」生きてきた人物の実感が、真実の格言として沁みる。読み手の状況によって、沁みる言葉は違うだろう。言葉がうまいなあと唸る。これは1巻と同じ。
出版年は2004年。その頃だったろうか。
欧米では、先進国では、人権の国では、ではではでは、加害者に寄り添うのが素晴らしいことのように喧伝されていた。
「犯罪者なんていません。この出来事は、彼の悲痛な叫びなのです」と断じる風潮があった。
それは犯人も色々あって、犯罪に走ったことだろうけれど。同じ色々あった人が皆、罪を犯すわけではない。
叫びというならば、被害者の叫びにこそ耳を貸すべきではないのか。
「見習うべき」人権の国、北欧の国では、皆、加害者の声にのみ耳を傾けているのかと、「喧伝」を目や耳にするたびに、こみ上げる怒りがあった。
けれども、違っていたらしい。
北欧の国デンマークにも、ディクテや、ジョン・ワーグナー、そして作者のように、その風潮に憤りを覚える人はけっこう居たものと見える。でなければ、人気シリーズになりえないだろう。
子育てについても、「親の愛情神話」に否と述べている。
親の愛情こそが、全ての犯罪を防止するという意見。
そこまで親に負担をかけたら、親がかわいそうではないかと思う。
デンマークでは人気らしく、ドラマにもなっている。
2012年からはじまって、2016年まで続いたらしい。
主人公ディクテが、私の想像よりきりっと美人で驚いた。
どうにか見てみたい。
そして、次巻以降を楽しみにしている。
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デンマークのミステリ。
新聞記者ディクテ・スヴェンスンのシリーズ2作目。
内容がぐっと重くなり、ライトなミステリではなくなっていました。
ディクテの隣家で留守中に火事が発生、飛び起きたディクテは馬小屋から馬を助け出すのに奮闘します。
この夜、実は別に事件も起きていました。
1作目の事件解決に寄与したディクテは、一躍、有名人になっています。そのおかげで、プライバシーを暴かれるという羽目に。
事件を担当した警官のジョン・ガードナーの視点からも描かれます。
ディクテはガードナーにコネがあると思われていますが、ないこともないけど、壁もあるという(笑)
アラフォーでバツイチのディクテは、動物好きでなかなか感じのいい女性ですが~何かと振り回され気味?
カメラマンで年下の恋人ボーとの付き合いは、波乱含みで、ごたごたと慌ただしい。
離婚の傷もまだ癒えないうちに、娘のローセは年頃になって恋人が出来、早くも彼と暮らすことを考えています。
子離れしなくては思いつつ、寂しさに悩むディクテ。
実は彼女も10代で家を出ていて、それには深刻ないきさつがあったのですが‥
身近な人達との微妙な緊張やすれ違いが細やかに描かれていて、とてもリアル。
ディクテが、何だか酷い目に遭い過ぎな気もしてきますが。
いや、隣人のほうが辛いか‥
ミステリとしては一番重いタイプというほどではなく、北欧ミステリとしては普通かも?
日常感覚がありあり描かれているため、普通の人が巻き込まれるにしては酷、という感じになるのでは。
いやこれは、かなり筆力あるってことですよ!
親友がディクテを語るあたり、ちょっと深いです。
主人公たちの成長も描いていく、このシリーズ。
あちらではもう9作出ているとのこと、翻訳発行をお待ちしてます☆
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デンマークの作家「エルスベツ・イーホルム」の長篇ミステリ作品『過去を殺した女(原題:Selvrisiko)』を読みました。
「エルスベツ・イーホルム」作品は昨年の7月に読んだ『赤ん坊は川を流れる』以来なので約1年半ぶりですね… 北欧ミステリは10月に読んだデンマークの作家「レナ・コバブール」と「アニタ・フリース」の共著『スーツケースの中の少年』以来ですね。
-----story-------------
「ディクテ」の隣家の厩舎が火事になり、同夜、市内の学校が放火された。
さらに隣家で留守番をしていた女性が、惨殺死体で発見される。
彼女は放火された学校の教師だった。
二つの事件は繋がっているのか?
調べるうちに次第に明らかになる、殺された女性教師の意外な過去。
母との確執、父の死、娘の巣立ち、年下の恋人との関係と、自らも悩み山積の新聞記者「ディクテ」が、事件を追う。
訳者あとがき=「木村由利子」
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デンマークでは2004年(平成16年)に出版された新聞記者「ディクテ・スヴェンスン」シリーズの第二作、、、
邦訳されたのは2016年(平成28年)なので、10年以上のタイムラグがあるようです… 2015年(平成27年)時点でシリーズは9作品まで出版されているらしいので、売れ行きしだいでは、順次邦訳されるかもしれませんね。
前作から1年半後の物語です… デンマークの地方都市オーフスに住む女性新聞記者「ディクテ・スヴェンスン」は、離婚を機に娘「ローセ」を連れて、コペンハーゲンから学生時代を過ごした町に戻り、町外れの古い農家に住んでいる、、、
その「ディクテ」の隣人「グラウゴー夫妻」の厩舎が火事になった… 「ディクテ」は消防に通報し、何頭かの馬を助け出す。
原因は放火らしく、母屋も荒らされていた… 「グラウゴー夫妻」は旅行中で留守だったが、留守番をしていた妻「カーアン」の妹「インガ」が見つからない、、、
翌日、「ディクテ」が煙まみれになって出勤すると、同じ日に、市内の学校・メレヴァング校が放火され全焼したことを知らされる… 1日のうちに2件の放火事件が発生し、行方不明となった「インガ」はメレヴァング校は教師だったことが判明する。
そして、「ディクテ」の娘「ローセ」が、街はずれのキャステズ沼で「インガ」の惨殺死体を発見する… 「インガ」は沼地で首を絞められたうえ、斧で頭を割られていた、、、
「ディクテ」は、2件の火事と殺人は関連があると睨む… 親友「イーダ・マリー」のパートナーである担当刑事「ジョン・ワーグナー」と情報交換しながら、記事にすべく調査を進めていく。
やがて、「インガ」の教え子である非行少年たちが逮捕されるが、「インガ」とカルト教団の関係を掴んだ「ディクテ」は訝しむ… そんな中、3歳の息子「ヨナタン」への虐待疑惑をかけられて姿を消した「エスター・ランツェン」が「インガ」と同様の手口で殺された、、、
そして、16歳のときにエホバの証人である家族に見捨てられ、生んだばかりの息子を養子に出した古傷がある「ディクテ」に、殺人予告の脅迫メールが届く�� 「ディクテ」は、自分を獲物に選んだ未知の敵に怯えながら、真相を知るために独自の調査を続ける。
次第に明らかになる、殺された「インガ」の意外な過去… 母親との確執、父の死、娘の巣立ち、年下の恋人との関係、リストラの危機と、自分自身も悩みが山積みの新聞記者ディクテが事件を追う!
1940年にキャステズ沼で発見された首にロープを巻かれ斧を頭に受けた骸… 1660年に起きた猟奇的な事件との関係や、SM殺人により教祖「アナース・ラングバレ」が逮捕されたカルト教団、そのカルト教団への入団を希望していた男「クラウス」、DVや望まぬ出産等の家族の暗部や確執、少年犯罪等々、散りばめられた伏線が終盤の事件解決に活きていましたね、、、
前作は、「フェミクリミ(femikrimi)」とも称されるライトミステリで、女性たちの日常生活や恋愛が中心に描かれており物足りなさを感じましたが… 本作品は、女性たちの日常生活や恋愛を描きつつも、ミステリ要素が強くなり、前作より愉しめました。
とはいえ、今ひとつ感情移入できなかったのも事実… 恋愛観、家族観に少しズレがあるのが要因かもなぁ、、、
北欧ミステリに共通することかもしれませんが… 本シリーズは、それが顕著な感じがしますね。
以下、主な登場人物です。
「ディクテ・スヴェンスン」
アヴィーセン社オーフス支社の記者
「ローセ」
ディクテとトーステンの娘
「ボー・スキュッテ」
ディクテノ恋人。カメラマン
「トーステン」
ディクテの元夫。心理学者
「ソフィー」
ディクテの姉
「ヤン・メラー」
ローセの恋人
「イーダ・マリー・ヘンリクスン」
ディクテの親友。旅行代理店経営者
「マーチン」
イーダ・マリーとタイスの息子
「アネ・スコウ・ラーセン」
ディクテの親友。スカイビー病院の助産婦
「オットー・カイサー」
ディクテの上司、アーヴィセン社コペンハーゲン本社編集局の編集局長
「ホルガー・ダーヴィズスン」
ディクテの同僚、支社編集主任
「セシリー・トフト」
ディクテの同僚。スポーツ担当記者
「ホルガー・セボー」
記者見習い中の研修生
「エヴァ」
ボーの妻
「トビアス」
ボーとエヴァの息子
「ニンカ」
ボーとエヴァの娘
「クリスチャン・ハートヴィスン」
オーフス警察の主任警部
「ジョン・ワーグナー」
オーフス警察の刑事
「イヴァー・K」
オーフス警察の刑事
「エリクスン」
オーフス警察の刑事
「アーネ・ピータスン」
オーフス警察の制服警官
「ヤン・ハンスン」
オーフス警察の制服警官
「カーアン・グラウゴー」
ディクテの隣人
「セアン」
カーアンの夫
「インガ」
カーアンの妹。メレヴァング校の教師
「リーセ」
インガの娘
「イェアン」
カーアンとインガの父
「アナース・ラングバレ」
インガの元恋人。カルト教団の教祖
「ミッケル・アナスン」
メレヴァング校の卒業生
「エスター・ランツェン」
子供への虐待疑惑をかけられている女
「クラウス」
カルト教団への入団希望者
「クアト」
自動車整備工