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釧路の高校を卒業してまもなく、20歳以上も歳上の菓子職人と駆け落ちした順子。親子3人の貧しい生活を「しあわせ」と伝えてくる彼女に、それぞれ苦悩や孤独を抱えた高校時代の仲間たちは引き寄せられる。
自分にとっての本当のしあわせを問い続ける彼女たちが綴る、順子という女性を軸にした短編集。
前に読んだ同じ桜木紫乃さんの「星々たち」と似た匂いがする作品。
軸になる人物が1人居て、その人物と関わりのある(あった)人たちがその人物について語る。だけど最後までその人物が語り部になることはなく、本心を掴むことは出来ないまま物語は終焉する。
その「分かったような、分からないような感じ」がまさしく、この世界に生きていて日々感じることなのだと思う。
誰かのことを見てその心情を想像することは出来ても、その人にならない限り本当のことは分からない。
順子という女性は、他人から見ると恐らく幸福には見えない暮らしをしている。駆け落ちして、その後の生活はずっと安定せず貧しいままだ。
彼女は高校時代の友人たちにしばしば手紙や葉書を送る。そこには「私は今とてもしあわせだ」と綴られている。
それは強がりや見栄なんかではなくて、きっと彼女の本心だ。
彼女は幸福の基準をあくまで自分の中だけで測れる強い人で、他人と比較することにはそもそも興味がないのだ。
だけど順子を取り巻く女たちは、他人と比較することで自分の幸福を測る。
だから順子が「しあわせだ」と言い切ることに疑問を覚えるが、同時に強く嫉妬しているのだとも思う。
6つの章に分かれている短編集で、4つは同級生、1つは順子の母親、そして残る1つは順子の人生を語る上では外せないとある人物が語り部を務める。
全員女性。だからこその少しずつの醜さや嫉妬、打算が見え隠れする。
ただそこにあるのは日々を必死に生きようとする女たちの姿なのだけど、誰かと較べずして自分のことを「しあわせ」と言い切るのはとても難しいのだということを感じる。
女が、ものすごく冷めた感情で男のことを観察するように見る描写も所々に。
それはもはや、彼女は彼に盲目状態ではない、ということ。
自分のことを「しあわせだ」と言い切れる人が言葉通り一番幸福なのかも。周りの人間が、どう思おうとも。
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釧路の高校を卒業してまもなく、二十以上も年上の和菓子職人の男と駆け落ちした順子。親子三人の貧しい暮らしなのに「私は幸せだ」と伝える彼女に、高校時代の仲間と母親、そして捨て置かれた女性の心情を描く連作小説。
「しあわせ」という価値観を改めて考えさせられる。人生に行き詰まった時に見えてくる客観的な自分という存在が、誰かに必要とされているのかどうか。他人との比較では、決して幸福とは思えない順子が、なぜ素直に幸せと口に出せれるのか。とても深い人生論を教えてもらった。
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まっすぐ生きることって、難しい。
蛇行して、色々巻き込んで、最終的にどこに辿りつけば、しあわせと言えるのかな。
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ほとばしる生。
順子の生き方は眩しい。
自ら気づいて自ら一歩をふみださなければならない。なにものでもない自分への戒めを込めて。
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道内出身の作者
直木賞受賞のホテルローヤルを図書館で
借りつつも読めずに返却を繰り返し(笑)
こちらを先に読み終えてしまった・・・
初めての桜木作品
かなり読みやすい(*´˘`*)私でも2日で読破
内容も高校時代の仲良し女子のなかの順子を
中心に物語が進む
直子の好きだった相手が誰だったのか・・・
友達と結婚した男。 が気になる(笑)
順子のような女に憧れる、が私は
誰に近いかな(笑)?
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目次を見た時、あらすじの女性がタイトルのお話がなくて、ちょっとびっくり。けれど読んでみてなるほど。そういうことなのかと。順子を巡る数々の女性たち。それぞれが思う「幸せ」。そして順子の幸せ。誰もが、それでいいの?と疑問を持つ、順子の幸せ。でも当人がとっても幸せで、生き生きと暮らしているのがとても良かった。お金じゃないんだよね、ということがよく分かる。一番好感が持てた女性は、順子が奪った男性の妻。かっこいいです。順子の母、酷い生活だけれどこれは自業自得。しかし最終話でちょっといい方向へ。少し安心した。
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高校の部活の仲間。というだけのつながりで、つながれるのは女の特権なのかもしれない。それぞれにそれぞれの人生を歩んでいるが「順子」という彼女を軸に物語は進む。和菓子職人と駆け落ちをした順子。見るからに貧しい暮らしぶりだが、真っ直ぐに「しあわせ」と口にする順子と直にあった彼女も、順子の様子を聞く彼女も何を思うのか。交差する人生も平行する人生も悲喜交々。
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1984 清美
高校卒業後、ホテルに就職。須賀順子とは同級生で同じ図書部。
札幌の和菓子屋に就職後、20以上年上の旦那と駆け落ちすると知らされる。
1990 桃子
フェリー乗務員、同じ乗務員と船上のみの不倫関係。順子は東京でラーメン屋「宝食堂」を旦那と営む。自分の関係より大変なのに幸せだった。
1993 弥生
福吉弥生は札幌で「幸福堂」営む。職人だった婿の恭一郎は順子と駆け落ちした。失踪届を出した旦那に東京まで会いに行く。
2000 美菜恵
順子が高校時に教職員住宅まで押しかけて告白した谷川先生。その彼を密かに思い同じ教職の道へ、職場で再開した美菜恵は谷川と結婚することに。
2005 静江
順子の母。若い時は娘よりも男を追いかけた母だが、年老いて一人になった時、娘を思う。
2009 直子
地元で看護師として働く直子も両親を失い一人に。ふっ、と順子の手紙が気になり会いに。あった瞬間に順子の重い病気を知る。こんな大変な順子なのに、そこに幸せを見出す彼女を見て、自分の姿のあり方を思う。
順子は自分の人生を一生懸命に生きている。小さくても一番の幸せを感じている順子を周りの女たちは、彼女の周りを自分勝手に取り巻いている。
何だかなぁ〜。
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桜木紫乃さん特有の終始陰鬱な雰囲気が流れ、内面に様々なものを抱えながら生きる6名の女性の関係性を時系列で描く。中でも高校時代の図書部員であった個性的な4人を中心に、所々出てくる駄目な男たちがさらにストーリーに陰鬱さに際立たせている。
途中から順子を中心に物語が展開。他者から見ると終始何かしらの問題を抱えながら生きている登場人物達から感じ取り方は人それぞれ違うのだろう。
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桜木紫乃さん、時々無性に読みたくなるこのローテンションな感じの世界観。憂鬱で圧迫感があってもやもやして、それでもそれが日常で、ドラマチックなことを期待するわけでもなく淡々と過ぎて行く日々の中で物語が少しずつ変化して進んでいくところが、妙にリアルでけっこう好き。静かに色々考えを馳せたくなる一冊。
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桜木紫乃の作品は、どれも読後やるせない気分になる。なのにやめられない。最近全然読んでないけど津村節子みたい。
蛇行する月ってなんだ。川ならわかるけど。そんな気持ちで手に取った。
表紙の絵は南伸坊。意外。親子三人が川べりを歩いている。読み終えて改めて見ると、ぐっとくる。
弥生。
和菓子屋の跡取り娘。夫が20歳も年下の店員と子どもを作り、逃げてしまう。失踪宣告が受理されそうになった矢先、夫の居所がわかり、東京に会いに行く。
「家を継ぐ」という大義名分ゆえに、夫に対する思いを伝えられなかった後悔のようなものがある。
・心に残った部分
思いは伝えねばならぬということに、気づけなかった。
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高校卒業後に年上の既婚者男性と駆け落ちした順子。転々と逃避行をしながらも、自分は幸せだとなんのてらいもなく無邪気にまわりに伝えてくる彼女に、不審なり疑問なり優越感なり友情なり、何らかの気持ちを抱いて関わってくる同級生や回りの女性たち。
順子のかざらなさ、幸せと言い切れる真っ直ぐさに、それぞれが惹かれ、悩み、自分の幸せを探し始める。
はたから見たら、決して幸せそうには見えない貧しい生活のなかで、強がりではなく幸せと言い切れる順子の純粋な強さ、愚かさ、魅力。
幸せとは人と比べることではなく、自分が幸せと思えればよいのだろうけれど、つい比べてしまうんだろうな。比べない順子は、今なかなかいないタイプ。自分の生き方や幸せ感についても考えさせられる小説だった。
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著者の市井の人々の生活、生き方、内面の描写はいつもながら見事です。
人は生きるために生きてるんだと思わせてくれます。
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順子の高校時代の友達や、関係者を章の主人公としたショートストーリー。さらっと読める。幸せの形って人それぞれ違う、幸せかどうかは自分の心の持ち方1つなんだなと思わせてくれる本。自分の幸せを疑わない人は眩しい、浄化されるな。。
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the complication wemen. I don't know happy life for the other, but pretty good.