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子どものころの怪我、信頼していた神父の出奔、親友の自死。これだけそろえば、そりゃ内省的に生きるようにもなるだろう。ひっそりと人との深い付き合いもせず静かに静かに生きる人生。
けれど、一人の美しい教え子との出会いが彼の人生を動かし始める。
淡々と進む。大きな事件もドラマもない。淡々と、淡々と。その淡々とした中で人の人生、というか生きていく日々、というか、そういうものの断片が少しずつつながっていく。だれもが多かれ少なかれ抱えて生きている孤独。孤独を自覚し受け入れた時、人は初めて誰かとつながれるのかもしれない。
「八雲立つ 八雲八重垣 妻籠みに、八重垣作る その八重垣を」
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様々な過去の出来事を抱えながら今は研究者・教育者として静謐に暮らす男の前に現れた魅惑的な女子学生。てっきりファムファタールの話型に沿った物語かと思ったが、それにしては、彼の過去の話ばかりが出てくる。結び近くで、ようやくそれらしい話になってきたが、そのさなかに驚くべき事実が明かされる。結論を言えば、人間賛歌というか、生きることへの強い肯定を記した一冊であった。
書評が気になって読んでみた。思っていたのとは少々違ったが、これはこれで面白かった。女子学生の「真琴」が魅力的に描かれているが、いまどきこんな話し方をする女子学生はいないだろう。一種の理想形としては理解できるが。
それと、出雲の国の風景の描き方が美しく、まだ行ったことがないこともあり、一度訪れてみたいと強く思った。
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ひたすら淡々と進む。
淡々としているようで、主人公の心にはちょっとした変化が生じている。
…けど、そのちょっとした変化が起きたから何なんだ、とこういった話を読むたび思う。
松山周辺の雰囲気は良さそうだった。
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新聞の書評を読んで、図書館にリクエスト出していた本。
毎度のことだけど、ようやく手元にきた時は、なぜリクエストしたか忘れている。
(これ、結構モヤモヤして気持ち悪い。)
最後まで感情移入できないまま…結局流してしまいました。
過去の話なのか、現在なのか、わからない部分があり。
(どの箇所か忘れたけど、私の読解力のせいかな…)
何というか、きれいごと過ぎて、読むのが嫌になった、というのが正直な感想。
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独り身のまま初老を迎えた大学教員の男が、自分を慕ってくる若く美しい女子学生への恋慕を抑えられなくなる我が身に戸惑う。
そして、小説の舞台は、男の少年時代、青年時代の回想を巡り、男の、また作者の故郷でもある石見地方へと移っていく。
年甲斐もない男の恋心の機微が描かれることを期待して読み始めたのだが、宗教的で生と死の神々しさを感じさせるテイストであった。
どこか夏目漱石の小説(『こころ』とか『それから』とか)を彷彿とさせるところもある。
終盤明かされる衝撃の事実は、いくらなんでもご都合主義的で、やや興醒め。