紙の本
タイムリーな話題
2018/03/20 09:12
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投稿者:ジル - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年のノーベル賞というタイムリーな話題。トロイカの3名中2名のみがノーベル賞を受けたが数十年にわたるビックプロジェクトがどのように成立したのかをビビッドに描いている。
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アインシュタインがその存在を予測してから100年、2015年秋米国ルイジアナ州とワシントン州に置かれた検知器LIGO (laser Interferometer Gravitational-wave Observation)で、ついに重力波が人類によって捉えられた。長さ四kmのアームの中で、陽子の直径の一万分の一のレベルの時空の変化を捉えたものだ。観測実験技術として想像を超えるほどの高度なノイズ除去技術が必要なことが何も言われなくてもわかる。ノーベル賞がほぼ確実視される偉業であり、宇宙の観測に新しい手段を加えることによって、現在の宇宙論が抱えるダークマターやダークエネルギーという謎に関して新しい発見が今後期待できるものである。
本書は重力波自体についての解説本ではなく、重力検知までの長期わたったプロジェクトにおける個性の強い科学者たちの実に人間くさいドラマを描いたものである。大規模になる組織の中で、対立があり、失脚があり、失意がある。多くの人が重力波を追い求めて、その研究者人生を賭けている。重力波が検出できるかどうかも賭けである(実際に研究者の間で賭けが行われた)。多くの時間とお金がそこに賭けられてきたのだ。そして、運も必要で、それが引き起こす重力波が検知可能なほど大きな天体イベントが適切な時間内に発生することも条件だ。ソーン、ドレ―ヴァー、ワイスという個性的な面々が、ひとつの結果を求めて引き返せない道を突き進む。「この山登りの視界は頂上に向けてしか開けていなかった」中で、彼らは「空はけっこう騒がしい」という方に賭けたのだ。
「重力波の検出はリスクが大きく、論争の的になっており、技術的に不可能に近かった。しかし、重力理論に基礎分野として大きな関心が集まるようにするための唯一の道でもあった」と語る。この本が書かれ始めた時点では重力波が検出されていたわけではなかった。この本の準備もすでにそれほど勝ち目が高くなかった賭けでもあったのだ。
この本を読むと、科学研究というものが一種の賭けであることがよくわかる。賭け金は科学者自らの時間、報償は科学者としての名声。ノーベル賞が最終的な目標でもある。若いころに一発当てて名声を得て、大御所となる。その機会を逸したものは報われるものは少ない。ある意味では芸人の世界とも似ている。個人のタレントで戦う世界の構造は互いに似てくるものなのかもしれない。
もちろん違うところもある。言うまでもない。本書の中でもホイ―ラーの「世界に以前よりもいくらか余分に美と統一性を与えてくれるような世界のビジョンや地図や像を構築したいという衝動こそ、科学の探究を突き動かすものなのだ」。いや、あらためてもしかしたら芸人の想いも相似するところもあるのかもしれない。
現在の科学というものの一端を示してくれる本。これから科学者を目指すような若い人にこそ読んでほしい。
重力波検出という結果は、感動的でもある。そして彼らの重力波検出の裏で、密かに泣いている研究者が幾人もいるのだ。
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LIGO(レーザー干渉型重力波観測所)で2015年9月14日に直接観測された重力波。4キロメートルのパイプを2本、L字型に組み合わせた干渉計で重力波の直接観測に挑んだ科学者のドキュメンタリ。LIGOはアインシュタインの一般相対性理論の正しさを証明するための計測機関だ。大型の加速器と同様に建設するだけでもおおごとな施設を、アインシュタインの最後の宿題を終わらせるために巨額の費用をかける。約2億ドルの予算で研究を進めるのだが、たかが(失礼!)ブラックホールの衝突を検出するために(アインシュタインの理論を証明するために)、科学者は大金を使えることに驚いた。2億ドル使って「何も成果はありませんでした」となる恐れだってある。これほどの大金を使う度胸は科学者の真理を追求する気持ちからくるものだろう。
さて、本書は重力波を解説した本ではない。重力波を直接観測するためにある意味では人生をかけた科学者の物語だ。新聞発表では報じられない人間の物語である。科学者の前に人間の物語がある。小説ではないドキュメンタリの強さを感じられる。難しい理論は出てこないので、科学好きなら難しく感じることもなく読めると思う。また、強引に自分の役に立つように読みたいのであれば、プロジェクトを推進するための予算取りや情熱、メンバーの選定、組織のありかたなどを学べるだろう。
最後に、長い研究期間で、重力波の直接観測に成功した中心的な科学者を挙げる。ライナー・ワイス、キップ・ソーン、デイヴィッド・ライツィー、フランス・A・コルドヴァ、ガブリエラ・ゴンザレス。そして、最終的にはLIGOにいなかった二人の科学者、ロン・ドレーヴァーとロビー・ヴォートの名前も記録しておく。物理学に興味がある人は覚えておいて損はない。きっとクイズ番組に出てくる。
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期待外れ。本書を読んでもLIGOがどのような仕組みで重力波を検出するのか、そもそも重力波の発見にどのような意味があるのかといった科学的知識は全く得られない。科学に携わる人達の政治の話が中心で、人間ドラマと呼べるほどの展開もなく退屈で、いがみ合う人達の嫌な印象しか残らなかった。著者は科学者だが、一般向けに分かりやすく書こうとしたためか妙な比喩や修辞が多くて却って真実が分かりにくくなっている。
エピローグの重力波発見をもっと丁寧に書くべきで、そこから誤検出でないことをどのように検証したのか、ノイズをどう排除したのか、どんなデータが得られたのか、今後どのような展開があるのか等を書いて欲しかった。
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重力波の解説ではなく、それを巡る人間ドラマでした。
純粋さ、野心、欲望などなど同じ目的ではあるけれども、色んな人の思惑が錯綜するまさに”Rasyomon”。
STAP細胞もある程度はこういう感じだったのだろうが、如何せん科学的説明がなされなかった点が致命的に違う。もしかすると存命中は何ともならんかもしれないが、一貫した科学的態度の維持はこの世界で最も重要なものなんでしょうな。当方のようなど素人が言うまでもなく。
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重力波検出に至る科学者たちの人間ドラマ。邦題も、原題の「BLACK HOLE BLUES」も実にしゃれている。
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重力波検出までの、関連する科学者たちの人間ドラマである。もう少し、科学的な解説があると期待したが、全くのドラマである。本書は、目的によって全く評価が違ってくるので要注意!
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LIGOのプロジェクトの話。比較的、技術的・物理的な内容にも触れられていたが、こちらも人間関係の描写が主。個性の強い物理学者がお互いに衝突しながら巨大プロジェクトを進める。仕事のトラブルを思い出して、あまり読んでて嬉しくならない。ただし、LIGOの重力波発見前の、LHO、LLOが巨大プロジェクトとして建設される過程を関係者に取材して書かれているので、冷静な分析資料としては価値が高いだろう。エピローグとして重力波を発見した時のことが追加されているが、全体には大きな影響を与えていない。
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『重力波は歌う』、タイトルがいい。
アインシュタインが存在を予言し、2016年2月にその存在が確認された、ブラックホール同士の衝突で発生するエネルギー波。宇宙の遥か彼方で起こる極微な波をどう捉えるか、LIGOチームを追ったドキュメンタリー。
但し内容はサイモンシンのような本格的科学ドキュメンタリーではなく、LIGOの主要メンバーであるワイス・ソイス・ドレーヴァー・ヴォードたちの人間模様を描いている。天才たちが集うと色々あるんだなぁと思いつつ、著者のジャンナ レヴィン氏自身物理学者なので、もうちょっと学術寄りの内容が読みたかったというのが率直な感想。ゴシップ感が強い。
重力波の直接観測は旬なネタでもあるので、普段科学に興味のない読者も取り込むような科学ドキュメンタリーにして欲しかった。
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アインシュタイン最後の宿題を成し遂げるための科学者たちの苦闘の歴史。重力波発見を巡る悪しき前例を乗り越えるべき開発した装置(LIGO)でも科学者たちが対立し軋轢を高めてゆく。それが約50年も続き、ようやくLIGOが稼働した直後に重力波を検出できたのは奇跡的だったのかもしれない。
今後、日本のKAGRAも稼働し世界的な重力波天文学が発展していくことを期待したい。
それにしても今年(2016年)のノーベル賞はこれだと思っていたのだが、来年以降に持ち越しなのか?
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昨年2月、米国のLIGOなる研究施設が「重力波」などという未知の波動を検出したと騒ぎになった。あのアインシュタインがその存在を予言して後、100年を要したんだとか。二つのブラックホールが衝突して合体する際、途方もないエネルギーが放出されて時空の形状の波動が生じ、それが重力波ってことらしい。もっとも物体が、例えば私が動いても重力波は放出されるものの、そんな振幅は無に等しく、観測できるとすればブラックホール衝突級の大事が必要ってことだ。日本でもKAGRAという検出器が建設されており、重力波をもっと知らねばと勇んで読む。ところが科学解説書ではなく、研究者たちの挫折と苦悩を綴る実録なのだ。そこに興味はないんだけど。
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重力波を観測するという一大プロジェクトがどのように
始まり、紆余曲折を経ていかにして成し遂げられたかを
描いたルポルタージュ。ただし、描かれているのは主に
「人間模様」であり、「観測理論の発展」や「観測機器の
進化」といった一番読みたいと思うことは二の次になって
いて少々残念な読後感。まぁ重力波観測自体が端緒に
ついたばかりのプロジェクトであり、これからの分野だと
いうことなのかもしれない。
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重力波の検出に命を懸けた科学者たちの物語。著者自身が物理学者。当事者のインタビューを通じて、この壮大なプロジェクトの遂行がいかに難しかったかを浮き彫りにしている。
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重力波直接観測成功に至るまでのプロジェクトチームLIGOの軌跡。
13章「藪の中」の原題はRashomonなのだとか!
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★SIST読書マラソン2017推薦図書★
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