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宮崎勉など実際にあった事件を引用しつつ、精神分析の方法を取り入れつつ人間の心のあり方、その人を形作る心そのものがなんなのかを考えさせられる。
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記憶を消したり書き込んだり。過去の自分があっての今の自分、昔からずっとつながってきている、自分。で、いいのかな?「私」ってなんだろう。
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不気味な文章で始まる手記。
ある恋愛の根底に潜む悪意とは。
一人称で語られる物語です。
二度読まなければ倒錯する構成。
キーワードは「私」と「僕」と各セクションの番号。
なぜ人は壊れるのか、どうすれば壊れるのか。
そして過去を変えるという神を冒涜する行為。
宮崎勤事件の分析から、本当の悪を考察。
ただただ、とても悲しい物語です。
和久井が静かに言う「殺しましょう」は
同著者「掏摸」の登場人物、木崎の紹介文、
「彼はただ殺すんだ」と同様、恐ろしい恐怖を感じる。
あとがきまで読んでやや救われる。
映画化求む。
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読書日数 8日
筆者の小説は、本当に不思議な始まり方をする。ある部屋に通された主人公(ということでいいのか)は、鍵のかかったスーツケースと、テーブルに置かれている手記を見つける。その手記には、とある精神科医の半生が描かれていた。
自分の母親が何人もの男から暴力を受けていたにも関わらず、それを受け入れていた。その加減で連れ子として再婚した家族とうまくいかず、義妹を崖から突き落としたことなど…
どういう展開になるのか予測ができなかった。最後に、とんでもない結末が待っていた。
本書では、題材として「宮崎勤事件」が使われている。巻末には「分析はオリジナルである」と書かれていたが、本当にそうだったのではないかと思えるぐらい、ものすごい理論展開がされていた。
普段から読み続けるのは相当しんどいが、たまに違うエッセンスが欲しい時に、筆者の小説は、物凄い刺激を与えてくれると、改めて感じた。
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帯の文言
「このページをめくれば、あなたはこれまでの
人生の全てをうしなうかもしれない。」
インパクトが半端ない!
うわぁ怖い、でも面白そう!!
読む前からもっていかれた。
かといって内容はつまらなかったりして…
という思いも杞憂で
恋愛ってなんだ、そもそも人間ってなんだ
とどんどん迫ってくる。
思いもよらない展開に
混乱しながらも必死についていった感じ。
宮崎勤やヒトラーについての事
洗脳のあれやこれと雑学も興味深かった。
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やり場のない攻撃欲動の結果、自分を傷つけた者達を自己の体内に取り込み、自己を傷つけることで彼らに復讐するかのように。 p111
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記憶を書き換えられたり、消されることによって、どんどん私が私でなくなっていく。人間をこんな風にしてしまう事が出来るんだと、恐ろしくなった。被害者の加害者に対する復讐。悲劇しか生まないため、あってはならないことだが、自分が被害者の立場だったら、自分も同じ事をしてしまうんではないかと思う。今作も暗いストーリーで、中村文則ワールド全開です。
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犯罪者宮崎勤の異常心理の分析のくだりは惹きこまれた。読んでいるうちに読者である自分もアイデンティティを喪失していく錯覚に陥るのが震えるくらい怖かった。
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かなり偏りはありますが、随分長い間、文学と親しんできました。
時々、「文学はなんて遠い地点まで来てしまったのだろう」と、読後陶然とすることがあります。
ただ、本作ほどそう感じた作品は他になかったかもしれません。
事実、ある意味では最先端の小説作品と言うことができましょう。
最近、すっかり魅了されている、中村文則さんの最新作かつ話題作です。
簡単に言うと、文学と科学が高度に融合した作品です。
「SF作品」という意味では決してありません。
本作は間違いなく純文学の系譜に連なっています。
科学の知見を活用した純文学作品と言うことができるでしょう。
意識とは何か、自分とは何か、つまるところ人間とは何か―。
そんな文学の普遍的なテーマを、本作では扱っています。
これまでの純文学は、もっぱら文学的な技巧でこうした普遍的なテーマを探究してきました。
芥川賞受賞作家という呼称がかすむほど、数々の傑作をものしてきた純文学作家である著者は、もちろん文学的な技巧をフルに駆使していますが、同時に精神医学や脳医学の最新の知見を用いて、これを探究しているのです。
実に野心的な挑戦であり、それだけでも敬服しますが、物語もミステリ仕立てで実に読みごたえがあり、スリルと読後しばらく冷めやらぬ興奮が、この困難な挑戦に打ち勝ったことを私は裏付けていると思いました。
恐らく謎解きも本作を読む醍醐味のひとつでしょうから、あまり深入りはしませんが、簡単にストーリーをご紹介すると―。
「このページをめくれば、あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない。」
1行目に、そんな文章がつづられた、ある男の手記で物語は始まります。
だが、それを読んでいる「僕」とは、実際のところ誰なのか。
読み手は幻惑されながら、さまざまなエピソードに接することになります。
男は、ある女に恋…。
いや、止めておきましょう。
どうやっても興趣を殺ぐことになりそうです。
本書を読みながら、私は、記憶喪失中の若き精神病患者の物語で、「読むと一度は精神に異常をきたす」と言われる夢野久作の「ドグラ・マグラ」を思い出しました。
本書が、傑作であることは言を俟たないでしょう。
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前半が引っかかったけど
後半の流れに上手く乗れて
読み終えることが出来た。
記憶と性格、生活の話
よくわからなかった部分もあるので
読み返そうかと。
やはり中村文則は、ちと苦手だなぁ
でも、まぁまぁ面白かった。
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人の記憶を消すもしくは操作するということはそんな簡単に出来るのだろうか。洗脳されている側が、それに気づかず、自分の意思としているならばそのほうが少しだけ幸福かもしれない。
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自分の人生を消去し、他人に自分の人生を脳内に刷り込ませ、精神的にも心理的にも肉体的にもジワリジワリと追い込ませようとする。精神科医が精神的にダメージを背負っていると、こんなにも恐ろしい手段で復讐をするのか、と。実際にあった事件の犯人の心理を交えつつ話が進むのでリアル感が増す。なんとも魑魅魍魎な世界を感じた一冊でした。
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復讐のために他人の記憶を書き換えようとする精神科医が、自らも果てしない闇に落ち込んでいく。
記憶の改竄というのは、どうにも不気味で昔から恐怖を覚える。たとえば、現実かゲーム内にいるのか区別がつかなくなる『クラインの壺』を読んだときの、言い様のない不安感とか。わかりやすい肉体的苦痛より、自分の存在が曖昧になることのほうが、はるかに恐ろしい。
ことに本作、悪意をもって他人の記憶を変えようとする精神科医なんて、吐き気がするほど気持ち悪かった。今までも病んでいる悪人ばかり登場していたが、それでも作品にはどこか心ひかれるものがあり、満足度も高かったのに。個人的に、これには魅力を感じられなかった。とくに、就寝前の読書には向いていない…。
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うーん、あまりにも難しくて頭の中が混沌として、登場人物もごたごたしてて、誰が誰だかわからなくなってしまった。中村さんの本は2冊目で、以前「遮光」を読んだけれど、やっぱり理解するのに一苦労だった。
それでも、何故だか引き込まれる私がいるのは何故だろう?誰でも心に闇を持っているし、それをどう表現したらいいのか分からすにいるからこういった作品に興味を持つのかもしれない。
この、小説も、精神科医と患者の女性との愛の確執的な要素を含みながら、混沌として内面の闇を表現している。特に「私の内面に入れますか?」とはどういうことだろう?
私は、ただ、単に催眠によって、患者の内面の苦悩を取り除く医学療法だと認識したが、そうではなく、マインドコントロールの一種なのかもしれない。それによって、彼女は一時的にではあるが、記憶をすり替えられるが、時間が経つにつれて昔の記憶が蘇って最後には全てを思い出し自殺するというストーリー。
とにもかくにも、本当に分かりづらい作品だと思う。私みたいに読解力のない人には少々読みづらいかもしれない。
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とっても素敵なタイトルで、否が応にも期待は高まった。
謎の出だしにはワクワクを抑えることができなかった。
なのに、読み終わった今は失望感しかない。
仕掛けが複雑すぎないですか?もっとシンプルでいいんじゃないですか?洗脳、心理学、精神分析的な部分はすごく面白かったのに、肝心の物語部分があまりにも陳腐だと感じてしまった。いつもは激しく共感できる言葉があちらこちらに散りばめられているのに、今回はそれにも出会えなかった。このタイトル、この発想、この材料なら、中村さんにはもっともっとディープな物語を書いてほしいし、書けるはずだと思うのです。下手な小細工はいりません。もっともっと深く人の心に潜行した作品を期待しています。