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新興住宅地で発見された人骨、エーレンデュルに降りかかる家族問題、そしてとある一家の記憶。序盤から前作「湿地」を凌ぐ仄暗さが漂う今作もアイスランドが歩んだ歴史に端を発する哀しい因果の物語。前作の警察小説然とした犯人捜しと打って変わり、埋もれた白骨遺体の身元捜索という地道な展開だが、現在と過去、そこにエーレンデュルのアイデンティティをも絡めた人間ドラマの構築がお見事。勿論、ミステリーの妙もしっかりあるし、ラストシーンが醸す余韻も味わい深い。ローカルで陰鬱な世界観だが、漆黒の暗闇に射す一縷の光は読者の心を打つ。
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なぜ憎い夫と赤ん坊を同じ穴に埋めたのか。そこだけ違和感。
まあ母親はろくに動けなかっただろうし子供達で穴を二つ掘るのは無理だっただけかも。
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インドリダソンもう1つの傑作、これも面白い!もはや推理小説の域ではない。現代の日本の小説は私小説のような書き方をする。登場人物が何を考えてるのか、心の内を書き尽くす。これがまだるっこしい。海外の小説の描写は簡潔だ。心の内なんて書かない。映画を観てるようだ。芥川龍之介のような文章の簡潔さが好きだ。さて、この話。赤ん坊がしゃぶっていたものは人間の骨だった。人骨は古いもので、発見現場近くにはかつてサマーハウスがあったらしい。誰の骨なのか。証言者が語る緑衣のいびつな女とは誰か。エーレンデュル捜査官は捜査を始める。麻薬中毒で身重の彼の娘は血だらけで意識不明の重体で病院に運ばれた。幸せにしてやれない自分の子供との悲惨な関係と彼は対峙する。そしてこの地で封印されていた哀しい事件が明らかになる。一方で妻や子供に肉体的精神的に残虐な暴力をふるう男の家族の物語が進む。親に虐げられた子が大人になって同じように自分の子を虐げる例がある。そして不幸から抜け出せない人たち。エーレンデュルのシリーズは家族の崩壊と再生の物語だ。そしてラストは切なく優しい。今回も希望の中で話は終わるがエーレンデュルと家族の問題が解決するわけではない。これもまた繰り返すのだが少しずつでも光の方へ進んでいると読者が信じたくなる余韻を残す。そこがいい(≧∀≦)
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日本の三分の一の面積で、人口30万人の国、アイスランドが舞台。
火山と温泉の国というイメージだったのだけど、この作品を読むと、薬物依存、幼児虐待、DV等、荒廃した社会が見え隠れする。
とはいっても殺人事件は年に2~3件しかないのだそうだけど。
新興住宅街で発見された60~70年前の人間の白骨。
夫のDVで、心も体もボロボロにされる家族。
流産がもとで意識不明状態の娘を見舞いながら捜査の指揮をとるエーレンデュル。
3つの話を柱にストーリーは進むが、DVの部分を読むのがもう辛くて辛くて。
人としての尊厳を踏みにじられ、子どものためにだけ生きる母。
そんな母を見てみぬふりをすることでしか身を守ることの出来ない子どもたち。
ようやく幸せになれるかと思えるような出来事のあとの、絶望的な展開。
捜査部分は展開がゆっくりです。
だって60~70年前の人骨が誰のものかって、関係者すら死んでしまっているかもしれない年数。
そして、その当時って第二次大戦中で、公的書類は紛失しているし、田舎から食い詰めた人たちがレイキャビクに殺到し、イギリス軍やアメリカ軍が駐留し…とにかく社会全体が混乱している時代だった。
そんな時代の手がかりを捜すことの困難。
そしてエーレンデュル。
妻と幼い子ども二人を残して家を出た彼は、自分を探し当て合いに来た娘からいつも家族を捨てたことを罵られている。
しかし初めて娘が「助けて…」と電話がくる。
薬物中毒者の娘は流産が原因で意識不明の重体。
娘の枕元でエーレンデュルが語る、彼にまとわりついて離れない過去。
これがまたアイスランドならではっていう…。
それでも最後に娘が目を開ける。
重くて苦しい話だったけれど、次巻は希望が持てる展開になるといいな。
ところで考古学者が出てくるたびに引っかかるんだけど、スカルプヘディンって名前がどうしても育毛剤っぽく感じてしまう。
私だけ?
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ミステリを通して社会を描く。最近のミステリの傾向だが、北欧ミステリはマルティン・ベックシリーズを筆頭にそうした傾向が強く、捜査官エーレンデュルを主人公とする本シリーズも同様の指向性を持っている。
冒頭、人骨が発見される。一点、夫から妻に対する暴力の描写。
骨の主は誰なのか、どうして埋められたのか、事件性はあるのか、捜査活動が進んでいく。一方で凄まじい家庭内暴力。人が人に暴力を振るい屈従に追い込んでいく様子がこれでもかと描かれる。
そしてまた、捜査の責任者、主人公エーレンデュルの痛々しい過去が少しずつ明らかにされていく。破綻した家庭生活と捨ててしまった子供たち。ドラッグに身を持ち崩した娘が昏睡状態に陥り、その安否を気遣いつつ捜査をしていかなければならない苦悩。
現在の捜査によって、過去の家族を巡る物語が掘り起こされ、あまりにも哀しい真実が最後に明らかになる。
読み応えあり。
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犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ。込み入ったトリックや推理を楽しむものでは無いが、数十年前の白骨死体の謎が、丁寧に解き明かされていく。アイスランドの空気感も楽しめる北欧ミステリー。
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アーナルデュル・インドリダソンの作品は全部読んでいる。北欧の暗い心情が何となく日本の侘(わ)び寂(さ)びと共鳴する。エーレンデュル捜査官シリーズは現実のリズムを奏でて振幅の大きいメロディーを拒む。頑ななまでに。
https://sessendo.blogspot.com/2021/05/blog-post_11.html
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図書館で。
DV被害にあっている女性と親子の描写が本当につらい。なんでこんな風に自分の配偶者や子供に暴力をふるうのか。暴力というものの便利さや、自分の強さや価値みたいなものをそこに求めるとそうなっちゃうのかなぁ?恐れられることで一目置かれている、みたいに捉えているからなのか。こんな男でも殺したら殺人の罪に問われるんだから納得いかない…。この男が殺さない程度にずっと妻や子供を虐待していた苦しみや痛みは裁かれないのだろうか。
逃げたくても逃げられない状況というのも又恐ろしい。そして怖い事にこういうケースがフィクションではなく現実にも繰り広げられているという事なんだよなぁ。ああ、ヤダヤダ。どうたら被害は無くなるのかなぁ。
主人公と娘は正直なんかう~ンって感じです。男性は特に、子育てに参加することによって「父」になるという話を聞いたことがあるので、そういう意味では主人公は父になる前に逃げた男なので今更父親ぶっても、という娘のセリフはごもっともかもしれない。が。そんな父とどうなりたいのかよくわからに娘の行動の方が不可解。助けてほしいのか、ただ単に父を蔑みたいのか。同僚が麻薬中毒者だし同情の余地なし、みたいな事を言っているけど正直ちょっと同感。娘に必要なのは矯正施設ときちんと彼女の話を聞いてくれるカウンセラーじゃないだろうか、なんて思いながら読み終えました。
後、フィアンセの話は蛇足のような…?
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読後感は、ミステリとかクライム・ノヴェルよりも、ディケンズやデュマに近い気がしました。物語の締め方が上手いですね。あと、一文一文が割と短くて簡潔で、読みやすかったです。
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「家族」とは何か……。
子どもの拾った小さな骨から、次第に表われていく数十年前の白骨死体(徐々に、であることがとても効果的)。
主人公エーデンデュルの捜査とその娘の出来事と並行して、ある家族の過酷な過去の出来事が語られていく。
登場する刑事たちは淡々と調べ、コツコツと人から話を聞き、少しずつ進む道を探る。
そこには、組織犯罪も国家間の軋轢も紛争もなく、派手なカーチェイスや銃撃戦、名探偵の謎解きもないが、確かに「ドラマ」がある。
「ドメスティック・ヴァイオレンス(DV)」という名称のつく前からあった「家庭内暴力」。
「家族」という閉鎖環境の中、DVを見たり受けたりする日常の中で育つ子供たち。
読み進めることすらつらくなるような描写に、訳者は日本語にすることを一度はためらったものの、作者の「表現者としての義務」という強い意志を受け入れることで、そのまま翻訳したとのこと(訳者あとがき)。
現実の事件で「力と言葉の暴力による支配」を、細かく文章化し公表をするのは、ためらいが生まれる。きっと「DV」という名を得るに至った陰に、この作者のような「強い意志」があったことだろう。
アイスランドの厳しい自然の中、寒い冬の海や吹雪の中に消えたといわれる人々。
主人公エーデンデュルにも消すことのできない自責の念と悲しみがあった。
これらのことは、自然の一部のように「すべてがあきらかになることはない」と……。
「家族」という問いかけと「神隠し」の正体も漠然とする横溝正史的な物語に、日本人の心に残る何かがある気がする。
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本作は、2003年ガラスの鍵賞と2005年ゴールド・タガー賞受賞の2冠の作品で、''湿地''に次ぐエーレンデュル捜査官シリーズ第2段です。
・ガラスの鍵賞とは、国際推理作家協会北欧支部の五カ国アイスランド・スウェーデン・デンマーク・フィンランド・ノルウェーでスカンジナヴィア推理作家協会が最も優れた推理小説に贈る文学賞です。
・ゴールド・タガー賞とは、英国推理作家協会(CWA)が選ぶ最優秀長編賞です。ちなみに次点作品にはシルバー・タガー賞が贈られる。
レイキャヴィクから東にある新興住宅地の建築現場の地層から人骨が発見された。
肋骨をしゃぶっていた一歳の赤ちゃんが最初の関係者だ。凄いぞ、骨つきチキンと間違えたのか原始人のDNAが覚醒したのか…のっけから驚きでこの後の展開が楽しみだ。
白骨の洋服の朽ち果て具合から70年近く前の遺体だとの想定でエーレンデュル、エリンボルク、シグルデュル=オーリの3人は当時の付近の住人関係者を探し始める。
白骨の発掘が遅々として進まない中で当時そこに住んでいた家族が浮かび上がった。常習的にDVをする夫に怯える妻、障害を持つ長女と2人の男の子の5人家族。また、その家族に家を貸している資産家の婚約者も当時行方不明でこちらも被疑者として捜査対象となった。
白骨は、不幸な家族の1人なのか? 資産家のフィアンセなのか? 単なる行方不明者の遺体か?
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シリーズ第2弾。
舞台は世界最北の首都アイスランドのレイキャビクです。
幼児がおしゃぶりしていたものが実は人骨だったという、
衝撃的な始まりで物語は幕を開けます。
骨は郊外の造成地に埋まっていたものなのですが、
数十年前のものと思われ、
事件性があるものなのかどうかもわかりません。
その後の捜査は淡々と進んでいきます。
物語は第二次大戦のころの出来事と、
現在の場面とが交互に描かれ、
次第に真相が明らかになっていきますが、
そこに描かれているのはやりきれなさを覚えるものでした。
同じようなことはいまも世の片隅で繰り返されています。
なぜこのようなことが起こるのでしょう。
この物語では
戦争が暗い影を落としていることは否めませんが、
かといって戦争がなければ
この事件は起こらなかったとは思えません。
人間はだれしも、どこかに暴力性を秘めていて、
その性に逆らえないのかもしれませんね。
捜査官も含め、
登場人物の多くは重荷を背負って生きている人たちです。
誰もが生きているかぎり、
多かれ少なかれ荷を背負うことになります。
年齢を重ねるごとに荷が軽くなる人もなかにはいるでしょうが、
多くの場合は荷が増え、重さが増していくことになります。
読んでいて辛くなるほど悲惨な物語ではあるのですが、
本作は英国推理作家協会が主宰するCWAゴールドダガー賞と、
国際推理作家協会北欧支部のスカンジナヴィア推理作家協会が
北欧5ヶ国の最も優れた推理小説に贈る文学賞である
ガラスの鍵賞を受賞しただけあって、
ストーリーは二転三転、予想を裏切る展開をみせ、
ついつい惹き込まれてしまいます。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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家族の件など、個人的な苦悩を抱えながらも、捜査官として事件の真相を黙々と追い求めるエーレンデュルの静かな力強さが良い。捜査の進展と並行してある家族の物語が語られますが、描写こそ淡々としているのに、その悲惨さがひしひしと伝わってきて、読んでいてしんどいのだけど目が離せなかった。
ただ捜査していた2つの可能性のうち、片方の√が終盤で割とあっさり無関係とわかってフェードアウトしたのは少し拍子抜け。あと『湿地』のときも思ったけど、締めのラストシーンだけがなんだか妙にメロドラマっぽい。あのラストも、今作を読めば決して安易な結末でない(むしろ人間そんなに簡単には生まれ変われないよ、という事を残酷な形で突きつけている)のはわかるのですが、なんとなく最後の締め方がそれまで語られてきたことに比べてサラッとしてるというかまたかー的な感じ。でも、もしかしたらそれが狙いなのかも?という気がしなくもないです。
トータルではとても面白かったです。
このシリーズはひととおり読みたいと思います。
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アイスランドを舞台としたミステリー。
前作の『湿地』はその一冊しかないときに読んだのでその続きますと知っていたけれどタイミングがズレてしまって残念。
満を持してついに!積ん読解消。
北欧のミステリー、このアイスランドも。
さて、物語は…
並行して描かれる家族のストーリーは余りにも暴力的で辛く悲しい。
みつかった昔の人骨の正体と、ストーリーとどう繋がってゆくのか、ページを捲る手がとまらなかった。
シリーズなのでまた、読み進めたいと思う。
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この作者の本で読んだのが2作目。
2つの時間軸で物語が進んでいき、少しずつ真相が明らかになっていく感覚はとても良かった。
1作目と同じように、日本とアイスランドで国は違うが、刑事たちがコツコツと足で真実に近づいていく感覚は共通しているように思えた。