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2045年 人工知能が人類を越えるーーシンギュラリティ(技術的特異点)仮説。
中公新書にしてはやけに感情的な文章。
著者の主張を端的に言うと、人間と機械はどこまでいっても違うのでシンギュラリティなんて来ないよ、といったところか。
1956年 米国ダートマス会議から人工知能ははじまった。
以降、厳密な論理であったコンピュータは、曖昧な知識との矛盾に苦しんだ。2010年代に入って、それを克服させつつあるのが「深層学習(Deep Learning)である。
深層学習とは、(本来コンピュータが苦手としていた)パターン認識のための機械学習の一種。その特徴は「ニューラルネット(神経細胞網)」と「特徴量設計の自動化」。これが脳の仕組みに似ている、という印象を与える。
シンギュラリティに対する悲観論。「人間はそれを支配できない」「人類の終焉」。
しかし著者の考えでは、人工知能が人類を超えてしまったが故に人間に理解できなくなる、ということはつまり、人間にとってはメチャクチャな結果を出力する廃品と判断されるだけである。
どうやら人工知能の進化は、曖昧さに対応するために厳密性を捨てた、つまり正確性を犠牲にしているようである。「間違えても学習していけばいいじゃないか」と。
それゆえ、人工知能を過信してはいけない、機械の誤判断を正せるのは人間(の暗黙知)だけだ、という著者の主張には説得力を感じる。
しかし、人工知能が高度になるにつれ、コンピュータの出した結論に対して「これは誤りだ」という判断を下すこと、それ自体が難しくなっていくのではないか。それこそがシンギュラリティの本質なのではないか。
というわけで私はシンギュラリティ悲観論に一票。
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今のIT業界のホットトピックである「AI」と「ビッグデータ」(ついでに「IoT」も)について、客観的かつ分かりやすく説明している本。一般人向けに丁寧に書かれており、非常に読みやすい。でも、AIに関して奇天烈な夢や妄想、あるいは情熱に取りつかれている業界人こそ、本書をしっかり読んでいただきたいものだと思う。
個人的に本書が優れていると思うのは、計算機(コンピュータ)は出現した時点で本質的に人工知能を志向していたという解釈と、その考え方を遡及するとヒルベルトに辿り着くとしているところ。だから、第1次AIブームの人工知能が、巨大な演繹マシンとして構想されたのは極めて自然なことなのである。
確率・統計と帰納・アブダクションから実用的なAIを実現しようする今の風潮は、私の価値観と真逆なので困っているんだよね。とはいえ、そのおかげで利権のおこぼれにありつけるのも事実だし、しばらくは隅っこで大人しくしているつもり。
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2017.0304 シンギュラリティーなぞ起きない。人間と人工知能はまった別の存在で、人工知能が人間の知能を再現することはない。人工知能はいかに使うかが大切。
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情報を専門とする学生にぜひ読ませるべき本である。ただし、これをそのまま卒論の資料にはできないので、あくまでもどう考えるかの本とするべきである。
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人工知能から知識増幅、集合知へ。
の前向きな人工知能ビックデータ本。
ビックデータとは、機械学習の発展・ブレイクスルー、人間を超える?、自由プライバシーセキュリティ、集合知・協働・知識増幅。
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昨今話題となっているシンギュラリティについて批判的な論を展開している。読み手の感想として切り口はあまり鋭くない。ただし、本書の最後にAIではなくIAという概念を用いて説明しているところでようやく著者に歩み寄ることができた。AIに仕事を奪われる未来ではなく、IA知能増幅のユーザーとして、高いスキルや知識を身につけることを志向すると良いのだと感じた。
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AIやビッグデータによる第4次産業革命、AIの知的能力が人間を超えるシンギュラリティと、昨今、多くのメディアが騒いでいるが、これらの騒動に警告を与え、真実を語る本である。博識な著者による解説が実にまとまっていて本質の理解が進む。メディアの記事を鵜呑みにする子供ではなく、他の視点からの認識を持つ大人になるためにも、一読を進めたい。
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ユダヤキリスト教の文化的伝統をもつ欧米の研究者は汎用人工知能の知性を信じ込むかもしれない。そして経済格差から地球環境、民族問題、テロ対策、難病撲滅まで、あらゆる21世紀の難問を大魔神である汎用人工知能・超人工知能に丸投げしようとするかもしれない。汎用人工知能の実現、一神教の支配とは、ほとんどそんなものである。絶対者の権威のもとで、統一的な支配の論理が言あげされ、下々の人々はそれに従わざるを得ない。人工知能の学者はユダヤ系普遍主義者。彼らは単なる技術者やビジネスマンではない。インターネットや人工知能技術の基層には、高見を目指す一神教的な理想主知と宇宙観がある。
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昨今のIT産業の背後にある文化的な思い込みというのが非常によくわかる。技術は中立であるが、その運用やそれを取り巻く言説は、中立ではありえない。
つい先日読み終えた「ダーウィンの思想」と同様、科学の成果の背景にある考え方を強く意識する必要がある。
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この人はITなどという言葉で呼ばれる前から
この業界にいる人ですが、正直、僕には全然合わない。
AIの知性というものに限界があるのだから、
万能であるかのように思ってはいけない、
という主張それ自体は受け入れましょう。
というよりも、それはむしろ当たり前なんです。
ただ、その主張をする時に
万能AIという夢想が一神教的なものに通じているとも述べるのは
あまりに粗雑な議論です。
少なくともその夢想がヨーロッパから来たという証はなく
同時発生的に同じような概念が自生するという
可能性をほとんど顧みていない。
また、これは議論の中核ではなくて、単に言ってみた程度の話であり
要は万能ではないという主張を補強する為の小話です。
まぁ、こういうのは手癖でやってしまって自覚はないんでしょうが。
人間と同じでないから人間と同じ知性にならないのは当たり前です。
どこまで成長してもそうでしょう。
それでもなお、シンギュラリティは起こりうると私は考えています。
何故なら、人間とは違う形の知性が存在しうるからです。
優劣とは関係なく、理解が不可能であっても
意思を持っているとみなすことが、
それが人間の能力のひとつなのです。
ヒューマニズムにとらわれるのでなく、
絶えず人間という概念を拡張しようと試みることの一端に
シンギュラリティの夢想は揺らめいているのです。
(ここはとても危うい言い回しですが)
まぁ、情報処理の発展史については概説を抑えていますよ。
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最近、何冊か人工知能関連の本を読んだが、本書が一番納得感があった。ディープラーニングはビッグデータを統計的に処理する手法の一つに過ぎず、今の技術の延長に汎用人工知能はない。その論拠を、機械と人間の違いから説明していく。
人工知能という言葉は何かと誤解を招きがちなので、本書のような主張は、メディア等でもっと周知すべきだと思う。
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この本を読むと、人が工知能が仕事を奪われてしまうとか、
意識を持った人工知能によって支配されてしまうとかいう心配はしなくていいようだ。他の人工知能関連本ではずいぶん煽っていたようだが。これは喜ぶべきことなのか。
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シンギュラリティ。最近よく聞くこの言葉を真っ向から否定する、わかりやすい論考だった。
フレーム問題の記述では、某厚労大臣のごはん論法を思い出した。そうか、あの違和感は人と話している感じがしないことからくる違和感なのかと変に納得した。
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単なるバズワードの解説本ではない。
シンギュラリティに騒ぐ世間を批判し、AIではなく、IA (Intelligence Amplifier)こそ来たるべき未来だと説く。地に足をつけて、自分もこの時代のエンジニアとしてコンピュータの可能性を広げていきたい。
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情報工学の専門家によるビッグデータと人工知能に関する本。主として人工知能について、どういうものかが説明されている。今後どうなっていくかについては、人間の脳に並ぶとか超えることは考えられないというのが結論。人間の脳と同じような仕組みを目指すというような研究開発は失敗する可能性が高く、安易に乗らないことを警告している。説得力があった。ただ、自らが関与した研究や哲学的な論述など、回り道が多いようにも感じた。
「ビッグデータ分析の最大の魅力は、当初の使用目的とは異なるさまざまな角度からデータを眺めることで、思いがけない発見が得られることに他ならない」p30
「(人工知能キーワード「論理」→「知識」)人間は問題を解決し意思決定をおこなうとき、筋道を立てて論理的に考えようとする。だが、それは積み重ねられてきた社会的体験に基づく知識を踏まえたものなのである。難しいパズルに挑戦するときのように、論理だけで判断するわけではない」p59
「人間は日常、常識に基づいてフレキシブルに行動している。だが、この常識というのがクセモノで、いわば矛盾や誤りだらけのしろものなのである」p64
「軍需産業の支援の下で、人工知能技術が進歩発展していく可能性は高い。そして、その詳細は一般には決して公開されないだろう」p103
「ロボットに搭載された人工知能は、基本的に、論理処理を行う機械である。そして、ロボットの「体」は、多細胞生物である動物とはちがって、あくまで人工知能の指令に従って動く忠実な物体である」p131
「科学技術分野は多かれ少なかれそうだが、日本のIT業界は原則として、徹底した欧米追従である」p163