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伝統的な保守政党が批判を受け、より急進的な主張を掲げるポピュリズム政党が現れるのは日本に限ったことではない。本書はそうした事例を、オランダ、スイス、フランス、イギリス、ドイツ、イタリアと既存の保守政党がポピュリズム政党とどう向き合ってきたかを紹介する。そして、最後に日本政治をその文脈の中に位置づける。
大きく、ポピュリスト政党の台頭を受け止めきれずに崩壊、あるいは大きく後退を迫られる場合(イタリア、オランダ)か、保守政党がポピュリスト政党の主張を取り入れることでポピュリスト政党を飲み込もうとする場合(フランス、イギリス)、ある程度うまく受け流す場合(スイス、ドイツ)に分かれる。日本は、第二の場合に近いといえよう。
しかし、こうした国々ではいずれも結局、右傾化したしっぺ返しを有権者から受けている。しかし、日本ではそうした兆しは見えない。2009年の政権交代で先にしっぺ返しを受けただけなのかもしれないが、そのあたりに十分言及できておらず、中北浩爾氏の日本政治への言及は、この本の議論を十分活用できていない。そして、閣僚がその会員であるなど一定の影響力を持つことは事実であろうが学術的な検討に耐えていない日本会議を前後の文脈を無視して挿入するなど、まとめの論文として全力でその役割を放棄しに行っている感があるのは極めて残念。
とはいえ、本書は6か国の事例を紹介することで、ポピュリスト政党の台頭とその影響をある程度一般化することに役立っている。とりわけ、その影響を上手く受け流すドイツの例は実に興味深い。しかし、それがメルケル氏個人のプラグマティズムに大きく依存し、また難民流入を受けてそれへの反発が強まりつつあるなど予断は許さない。現状、保守政党がその再定義に成功している例は乏しいといえよう。