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監獄と流刑 イヴァーノフ=ラズームニク回想記 みんなのレビュー
- イヴァーノフ=ラズームニク (著), 松原 広志 (訳)
- 税込価格:5,500円(50pt)
- 出版社:成文社
- 発売日:2016/06/29
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紙の本
「収容所群島」で使われている本
2023/05/23 21:39
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソルジェニーツィンの「収容所群島」の冒頭の2巻で多用されている本だが、邦訳が出るとは思わなかった。第三帝国の強制収容所もの(といっても「ユダヤ人問題の最終的解決」絡みが主体だが)と違って、ソ連の獄中記はサッパリ。類書と言えるのはマルガレーテ・ブーバー-ノイマンの回想録の新訳くらい?著者が間違えた記述を底本の校訂者が注釈をつけて訂正している個所を本文に取り入れているので、「収容所群島」の訳文とは変わっているところがある。重い内容だが、訳文は読みやすい。
「収容所群島」でソルジェニーツィンが著書を利用しているのでグロテスクに書かれているクルイレンコは自分自身が投獄されてから、「彼は両手で頭をかかえて、「こんなことを考えもしなかった!」」とわめいていた」そうだ。十月直後に自分がロシア軍の最高司令官を就任して解任されたが拒否したドゥホーニン将軍に赤衛軍がリンチしたところから、数々の人々を居丈高に裁いた末にみっともない姿を見せたものだ。
スターリン憲法発布まで「搾取階級出身のため選挙権その他の公民権を奪われた」という「市民権喪失者」という露骨な身分差別があったとは知らなかった。成り上がりにしろ貴族出身のウリヤーノフ家の人々や父親の代で成り上がりの地主の息子で従兄弟は出版社を経営していたトロツキーと貴族出身のセドーヴァの家族といったボリシェヴィキ、貴族で近衛将校だったトゥハチェフスキーに代表される赤軍に勤務したロシア軍人などは明らかに「搾取階級出身」でも違うわけだ。ブルシーロフ将軍のような「帝国主義戦争」で武名を馳せた人物でも赤軍に勤務していたし。ここまで大物でなくてもエヴゲーニヤ・ギンズブルグはピアノを習っていたというから「革命前」に両親はそこそこ裕福な商人か何かでもカザーニ市ソヴィエトの議長の妻で共産党員になれたので、早いうちに「勝利者」につけば問題にはならなかったのだろうか?
訳者あとがきにドイツ軍がツァールスコエ・セローを占領してから著者がたどった晩年を紹介している。本文の末尾に赤軍が敗走してから「ロシア人により組織された都市管理局」が出て来るが、自発的に「組織された」か、それともアレクシエーヴィチの「ボタン穴から見た戦争」でチラリと出てくるドイツ軍占領下の「新秩序」を担う末端の行政機関なのだろうか。
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