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日本の野山にはかつてニホンオオカミが食物連鎖の頂点に君臨し、野生鳥獣の個体数の調整弁を担っていた。そのオオカミが日本人による森林乱開発等が起因で絶滅に至る。その張本人である人間は今度は中国からオオカミを移入し、南アルプスに放獣し、個体数の維持を復活させる一大プロジェクトを企図する。
はたして、幾多の困難を乗り越え、3頭のオオカミは八ヶ岳に放たれるも…。又しても、そこには肯定派・反対派・地元の政治家・中央官庁、各々のエゴと思惑が渦巻き、オオカミは激しく翻弄され、彼らの虚しき咆哮が八ヶ岳に木霊する。
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帯や裏表紙の解説を確かめもせず、最初の頁を開いたとたん、七倉航というなつかしい名前を見つけ、この作品が『約束の地』の続編だと、初めて知った(笑)。
もちろん、単独で読んでも少しも支障はないと言っていい。
『約束…』が、七倉の娘が小学校5年の時の出来事であるのに対し、この春中学生になったという説明から、本書はその2年後の話のようだ。
七倉は、支所長をはずれ一管理官となっており、キャリア丸出しの新支所長が赴任している。さらに、新メンバーとして新人二人が加わる。
そのうちの一人関千晶は、同著者の別シリーズ「山岳救助隊K-9」で活躍する隊員関真輝雄の妹のようだし、県警航空隊のヘリの操縦士たちがチョイ役で登場するのも、ファンにとっては楽しい。
今回は、急増する野生動物の被害に対処するために、オオカミを中国から移入し、八ヶ岳に放つという計画の話。
中国奥地での辛酸をなめる調査活動や移入地の反対派との対立等、計画がどういう決着をつけるのか、息を持つかせぬ展開とともに、ただ頁をめくるだけ・・・
植物連鎖の頂点に君臨し、自然界で生きる誇り高き存在としてオオカミを描き、農業及び環境破壊を懸念する一方、著者は作中人物に、オオカミ放獣をただセンセーショナルに取り上げるマスコミを批判させる。
南アルプスの麓で暮らす著者だからこそ書ける山岳冒険小説。
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自然を操るように、操る事ができると思っている人間社会。立場を変えれば○も×になる。中国に議員、公安、マスコミなど少し広がり過ぎ感はありますが、自分なりに深く考えて行くことは必要、と再認識
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生活の中で野獣を見る機会がなく、獣との共存など考えたこともない。 被害に遭われた方には申し訳ないが、鹿に対しても害獣という意識はなく熊の被害すら現実感に乏しい。 樋口さんは、そんな私をいつも野獣の吐息が頬に当たるほどの森の奥へ連れて行ってくれる。 今回は野山を颯爽と駆け巡る狼の姿が目に焼き付いて離れない。読み終わって以来、狼の画像をインターネットで眺めてる。(^_^)v