投稿元:
レビューを見る
ズバ抜けた面白可笑しさはない
でも、案外、こういう四コマ漫画の方が、好みへ地味にハマったりするもんだ
タイトルに食堂と入ってはいるが、厳密に言うと、食コメディではない、と思う
主人公の誠一郎は、二つの顔を持つ男。こう書くと、アブノーマルな匂いのする奴に感じるのだが、実際は食堂の店主と、人気ギタリストの二足の草鞋を履いている次第だ。実際、いるんじゃないだろうか、こういう人
その職業の差も面白いのだが、彼の惚れっぽさが、実に「くすっ」とした笑いを誘う
彼が営む食堂せいちゃんには毎夜、訳アリの女性が訪れる。誠一郎は心にホッコリと来る料理と、生来の人当たりの良さで彼女らの心を癒す。だが、基本的に誠一郎の心に芽生える、「片思い」はオチで呆気なくポシャってしまう。彼には可哀想だが、その成就のしなさっぷりが笑える
ある意味、失恋にもへこたれず、女性に対しての期待も失わずに、理想の女性を求める根気強さに関しちゃ、同じ男として天晴、と感じる
素朴な絵が、キレのいい起承転結を活かしている感もあった
基本的に、誠一郎の恋が始まってから終わるまでを一話完結で描いているので、かなり読みやすい。それに一役を買っているのも、この絵柄だろう
これから、どんだけ多くの女性に、誠一郎が振り回されるのか、楽しみだ。ただ、ふと思うのは、結局、誠一郎は自分の事情を把握し、なおかつ、長い付き合いから気を置かずに一緒にいられるマネージャーのカナコさんとの相性が一番にイイんじゃないかな、ってコト
どの回もオススメなのは、個人的に好きなキャラである、サクマさんがせいちゃんを訪れる回が好きだ。本物かつ超一流の表現者ってのは、薄っぺらいコトバなんか並べずとも、動作一つで自分の気持ちを相手に伝え、ファンを増やしていくもんなんだろう。今後も、頻繁に来店し、誠一郎をテンパらせてほしい
この台詞を引用に選んだのは、誠一郎の人間性がよく出ているので。実際、下拵えを楽しい、と思える料理人ってのは大成する、と私は思う。基礎基本の習得を怠らず、なおかつ、その基盤が崩れない努力を地道に続けてこそ、確固たる実力が宿るって話。下拵えってのは、結果の九割を左右する、と言っても吾過言じゃあるまい