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謎解きミステリーであったり 胸を焦がすようなラブロマンスであったりするのだけど、
本作の本質はやっぱりあやめの成長!
これは成長物語
久美子を追いかけて歴史の淵に入りゆき
フランスの地に降り立つ、その過程で
いろんな出会いと発見があって
その果てに 自己課題を克服する哲学に触れるっていう
ロードムービー的要素がとても強い 元気になれる作品、
最終頁を繰った後には爽やか気分になれてとてもよかった
それにしても、構成や文体がとてもユニーク!
三人称の語りが独特で、その語り手って誰?!って時々思案してしまった
書き手が語り手である、って捉えて読み進めたのだけど、
まるで ウッディ・アレンが第4の壁を越えて観客に語りかけるようで ちょっと奇妙な感じがした
アンドレと久美子の戦前と
あやめと一良の現代が
交互して物語が進むので、パラレルワールド作品に近しい深みがあり、
この2つの世界が収斂して着地するとどうなる?!と
ひき込まれるような構成もお見事!
あやめと一良のデコボコ・コンビも漫才のようでとても面白く、全体として大満足な佳作だった
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国籍や状況は違っても、これに類するような悲恋が、たぶん戦時中にはたくさんあったのではないだろうか。
時代が変わっても、人を愛する心、求める心、切なさは、いつも同じだ。
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今とは違う時代に密かに愛し合った二人。それをロマンスだと思うあやめが、突き動かされるように真実を明らかにしようとしていき、最後は娘にまでたどり着く。ただ全ては明らかにならず、それでよしとする結末。
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実在した、というので「アンドレ・ジャピー」でググってみたら、病院のベッドの上で看護婦に囲まれた画像まで出てきた。その絵からこんな美しく切ない妄想話を作り上げる著者に完全に脱帽。個人的には、時計屋のオヤジの心持ちにも大いに興味深く読めました。
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1936年、九州帝国大学付属病院の看護婦・久美子は、墜落して重傷を負った飛行士アンドレ・ジャピーと出会う。言葉も通じないふたりの間に燃えあがる短くも激しい恋、そして別れ。80年後、久美子の血を引く26歳のあやめは、ふたりをめぐる不可解な物語を知る。残された古い時計を手掛かりに日本からフランスへ、恋の謎をたどるなかで、あやめが見つけた真実とは―。みずみずしくも濃密に描かれる恋の切なさ、闇に彩られた歴史のロマン。
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本当に懐中時計にウォッチペーパーというのがあったら、すごくロマンティックだろうなと思った。戦前戦後の時代のこと、私もわからないので時計屋の一良の見解はなるほどと思った。ただ物語の内容が矛盾しているところがあるようにも思えたし、想像していたほど劇的なラストではなかったのがちょっと残念。人から勧められたので期待しすぎだったのかも。
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フランスの飛行家アンドレ・ジャピーと、彼を看護した久美子の燃え上がるようなロマンスに酔っているあやめと、二人の関係に疑問を持っているような時計屋のおじさん一良のやりとりがおもしろい。
やがて彼らは、ニワトリの懐中時計に導かれるようにパリへ。
そこで、あやめがフローレンスに語った妄想話は
"作り物こそ真実をみせる"ものだった。
これはあやめと一良の再生の物語でもあるのかな。
本来、空に溶け込む青色であるシムーン機を赤く塗りかえたアンドレは、ジャピー家の中でも浮いた存在だったのかも…
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絶望とまではいかないけれど
人生をどこかでひっそりと諦めてしまった
20代の主人公の女性と初老の時計屋。
二人は、会ったこともない過去の婦人に思いを馳せ
その生涯をかけて人を愛した真っすぐな姿を掘り起こしていきます。
事実の隙間を想像で埋めていくうちに
亡くなった人達の過去からの手紙や日記が、
今を生きる主人公たちを変えていくのです。
事実は大切だけれど、もっと大切なのはそこにどんな物語をみつけるか、何を見るかなのだと思う。
私が日々ダラダラとPCやスマホの中に打ち込むつぶやきやどうでもいい報告は
決して未来の人たちの心を揺さぶったり
役に立つことはないだろう。
時間を大切に、ちゃんと生きよう。
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実際にあった戦前の飛行機事故を題材に、一つ一つの言葉に対しての伝えかた伝えられ方を丁寧に綴った物語。
登場人物それぞれの言葉の受け取り方、思いがせつないな〜。文中に描かれた『せつない』という言葉の表出方法に胸がいたくなった。
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私にはこの物語を読むのは少し早かったのかな。
なかなか世界に入り込めず。
久美子とアンドレの切ない想いは伝わりました。
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時代背景は著者の聡明さを感じる1冊だった。
愛する人の喪失は、生き方までをも変える。
人とのつながりはいつの時代も尊いもの。
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たまたま見つけた懐中時計をもとに、その持ち主である祖父の姉、久美子とアンドレ・ジャピー二人の恋愛を、あやめと時計屋の初老の主人一良が辿る物語。
久美子とジャピー二人の恋愛を辿ることで明らかになっていく様はドキドキしながら読み進めていくことができた。
ただ、あやめと一良自身についてあまり掘り下げられていない印象で感情移入しづらかった。
あやめと一良は久美子とジャピーの忘れ形見であるフローレンスとフランスで会う。両親への愛を感じられず、むしろ少し憎しみを持つフローレンスに対してあやめは久美子の気持ちを語るシーン。
久美子が乗り移ったように話すあやめではあるが、本当に久美子はそう思っていたのだろうか。母からの愛を感じられず苦しんでいたフローレンスに、懐中時計から辿って感情移入しただけのあやめが伝えてよい重さの言葉だったのか、正直疑問だった。
一良がいることで、感情移入しすぎるあやめのストッパーーとなっていただと思う。
彼がいることで、ジャピーが日本を航空機で訪れていたのは戦時中の偵察だった可能性が示唆されるなど、久美子とジャピーの恋愛がただの美しいものにならなかっのだと思う。
あまり文体が私と合わず、個人的には少し読みづらさを感じる文章だった。