紙の本
全ては謎のまま。
2016/10/02 20:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
巨大企業によりすべてを支配されてる街。住人は全員その企業に勤務し豊かな暮らしを送っています。
Uターンして来た一人の青年の憎しみから始まったパンデミックが秩序を崩し始めます。
P1が何だったのか、住民は何を信じていたのか、鑑定士の師匠は何だったのか、全ては謎のままです。
投稿元:
レビューを見る
+++
「この工場で奉仕するために必要なことは、愛情と使命感を持つことだ」ブラック企業を辞め、妻子を連れて地元へUターン就職したアルト。町は巨大工場を中心にシステム化されており、住民は誇りを持って働いている。しかしそこで何が作られているか、実は誰も知らない―。アルトたちも徐々に工場の「秘密」に気づきはじめ…。
+++
疑わなければこれ以上暮らしやすい町はないかもしれない。この町で幸福に暮らしていける人は、ある意味宗教を盲信するようなタイプだったり、人の言葉に疑いを抱かず、素直に信じやすいタイプの人なのだろう。ほとんどがそんな住民で、町のめぐりに取り込まれて暮らす日々に満足していたところに、幼いころに町を出たアルトが、家族を連れて戻って来たところから、少しずつ何かが変わり始める。なぜ町の中だけですべてが完結しているのか。自分は何のために町のめぐりに取り込まれているのか。ほんのわずかの疑問の目が、ぽつりと芽生え、育つことで破綻が生じる。そこから町のめぐりに破綻は生じるのだろうか。読者の期待は膨らむが……。結局、何ひとつ真実は明かされないままであり、それは消化不良を起こし、もどかしさは募るが、だからこそ更なる想像力を掻き立てられもする。いずれにしても、これまで通りということはないだろう。胸のざわめきが治まらないままの一冊でもある。
投稿元:
レビューを見る
内容はええねん。THE 三崎って感じで。なんでわざわざ違和感しかない変なイラストを表紙にしてんねやろ?
投稿元:
レビューを見る
初読。図書館。またしても三崎ワールド。工場という舞台は人間から思考を奪うには格好の装置。私たちもこういう工場でわけのわからないものを知らないうちに作らされている一員なのかもしれないと、足元をすくわれる感覚はまさにメビウスの輪。嘘をあばこうとする人もまた別のメビウスの輪にいるというラストは秀逸。毎回毎回思うのだが、三崎さんは一体どうやってこういう世界を創り出すんだろうなあ。
投稿元:
レビューを見る
巨大工場を中心にシステム化された町。住民の多くは工場に勤めているが、最終的に何が作られているかは誰も知らない。引っ越してきた工場員のアルトは、町の不思議な「ルール」に気づき始め…。
あり得ない設定、でも物語は何事もなかったように進み、結果的にこの世の不条理を描く…典型的な三崎ワールドの作品だった。三崎亜記の作品は設定があまりに非現実的だと投げ出したくなるけれど、本作はそれほどではない、でもそこまで魅力的でもないという微妙な作品だった。
(C)
投稿元:
レビューを見る
へんてこワールドがこの人の持ち味だと思うのですけど、本作はなんだか具体的すぎるミステリで違和感ありありです。ミステリやサスペンスだったら他の作家さん達がもっと上手に書きます。この人にはさらなるへんてこを目指して頂きたいです。
投稿元:
レビューを見る
巨大工場を中心にシステム化された町。住民の多くは工場に勤めているが、最終的に何が作られているかは誰も知らない。引っ越してきた工場員のアルトは、町の不思議な「ルール」に気づき始め…。『小説すばる』掲載を書籍化。
投稿元:
レビューを見る
久しぶりに三崎亜記を読んだ。
不思議世界であるが、今回は分かりやすい。
考えさせられる。
最後が少しもの足りない。
投稿元:
レビューを見る
巨大な企業が支配する、極端に閉鎖的な街が舞台。外界との交流も制限され、小さな世界で何の疑問を持つこともなく暮らしている人々の生活に、少しずつ亀裂が生じてくる。
何を作っているのかもわからないまま、工場で真心を込めて作業にあたることが美徳とされ、素直に恩恵を受けることが強要される。全体主義の社会では、日々の暮らしも通貨も価値観さえも、独自の基準で統一されている。
正体不明の中枢によって情報が操作され、すべてを支配されている様は、まるでどこかの社会主義国家のよう。
本当はねじれているメビウスの輪の上を、何も考えずに歩き続けること、気づかないことが幸せという、そら恐ろしい世界だ。
非常事態には得たいの知れない巨大な力によってスケープゴートが用意され、疑念を抱く者は処分される。
近未来のようでもあり、戦時中の軍事国家でもあるような…。
感情を極力を排した、乾いた短編の多いなかで、珍しく読み手と登場人物との距離も近く、作者にしては起伏に富んだ展開だった。やはり長編には、これくらいの熱があったほうがおもしろい。
ただ、表紙の絵は安直過ぎてまったく似合わないと思うのだけれど。
投稿元:
レビューを見る
自分たちの総意であるかのように錯覚させられて、実は全く別の誰かによって、コントロールされている。メビウスの輪のように、わざとねじれを作り真実を覆い隠し、大きな欺瞞の歯車の小さな歯車となって滞りなく回り続ける人々。何も見ず、何も考えずに歩き続ければ、平坦で歩きやすい道がどこまでも続く。足元を一旦見つめれば、自分がねじれた空間にいることに気づいてしまう。気づいてしまえば、ねじれた部分から振り落とされてしまうだけ。だから、人々は、目をつぶる。そうすれば、足元がねじれていることなど気にかけることもなく、元の通りに平坦な道を歩くことができる。見ないフリをすれば少なくとも平穏に日々を送ることができる。目をあけたらどうなるのか。本書はそれを教えてくれる。
投稿元:
レビューを見る
生まれ育った街に家族とともにUターン就職したアルト。この街で唯一の大工場の生産ラインで働き始める。慣れないことばかりだが、面倒見のいい先輩にも恵まれ、家族も街に馴染んだかに見えた。
しかし、工場で何気なく発した一言が「緊急事態」を生み出す原因となってしまう。
妻も街に違和感を感じ始めた。
それでも、やっていけると信じていた。ブラック企業から逃れ、働きがいのある仕事につけたはずだった。幼き日に失った家庭の幸せを築いて行くはずだった。
工場城下町で繰り広げられる人間模様。
体制の中で生きていくのか。
生じた疑問に蓋をせず生きていくのか。
そもそも、工場で生産されている唯一の製品「P1」とは何なのか。
隙がなく作り上げられた、巨大な街のシステム。黙って従っていれば、全て順調に行くはずなのだが。
完全に管理しようとしても、完璧なシステムなど存在しない。
タイトル通り出口のないメビウスの世界に導く、摩訶不思議な三崎マジック。
投稿元:
レビューを見る
P1と呼ばれる製品を作る工場が全てを支配する街。そこでは工場が管理する電子マネーで暮らし仕事も「奉仕」と呼ばれる管理社会。それは宗教などによる単一価値観の社会を思わせる。
また「20世紀少年」を思わせる部分もあり楽しめるがオチもまた20世紀少年の様に中途半端というか曖昧さを残す。
もう少し収集をつけて欲しかった。
投稿元:
レビューを見る
「となり町戦争」の頃にに戻った作品かと思ったが、新鮮さを失い、凝ってるわりに薄い。この町の構造は欺瞞と矛盾だけで見逃された謎に説得力はなくて、むしろイメージは昔の北朝鮮になる。登場人物も上滑りで、作者の駒という感じ。特別奉仕という町のシステムとして不自然な義務を持ち込んで状況を展開させたが、先に面白味はなく、広がった感じはしない。ラストもとってつけた無意味さで後味が悪かった。
投稿元:
レビューを見る
たった一つの製品を生産する企業に支配された町のSF小説。
作者らしい世界観、キーワードで拘束感を盛り上げてくれます。
後半はその世界が欺瞞に満ちていることに気付いた人々がレジスタンス的に行動しますが、作者得意のジワジワ感ではなくサスペンスアドベンチャー的ですが、転がるような展開は面白かったです。
ただ、落ちとしては不条理感が前面に出て、何がなんだかすっきりしない感じでした。
他の物語との繋がりがあるかなと思いましたが、そうでもないようです。
結局「P1」って何?「ME創研」って何?という疑問のみが残りました。
やはり作者は短編や短編を基に膨らんだ長編の方が面白いような気がします。
投稿元:
レビューを見る
うーむ。いろいろ示唆されるところはあるんだろうけど,私には(特に最後)分からなかったしちょっとついていけなかったかも。