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産婦人科に勤める冴えない37歳童貞の弓削。
そこに屈強な体つきでお尻から血を流す25歳岩本が診察にきたところから物語は始まる。
正直に言ってタイトル、イラスト、このあらすじだから、コミカルでぽんぽん軽く読める小説だと思っていました。
でも中身は違います。BLだけどBLじゃない。
弓削の一人称の独白が昭和の純文学のように思えてそういう印象になったのかもしれない。でもその声に出さない心の中で語られる言葉が、激しいものから諦めが入った深い落胆や自分への失望、人を好きになる喜びと好きになったからこその自分の変化、だからこその深い暗い感情など、様々に弓削の世界に色がついていきます。
反面いつもはしおれた草のような存在の弓削ですが(ひどい表現)、岩本とのエッチはとてつもなく官能的で濃厚で、湯気がたつのではないかと思うくらい熱いものです。
そして屈強な岩本が、童貞の弓削のために妖艶だったり子ウサギのように震えて翻弄されたりします。
だって弓削はエッチの時は野獣だから。本当に野獣だから「えげつねぇ」とは岩本談。童貞怖い(笑)
しかも思考が内向的だから無言なの(笑)心の中では饒舌なのに無言なの(笑)そりゃ岩本も不安になりますよ、それでいてガツガツされるんだから(笑)
でもそのギャップがたまりませんでした。新たな扉開いちゃったなぁ。
しかし受ける岩本はスパダリならぬスーパーハニーなので最強です。こんな人彼女に欲しい。マジで。
個人的に弓削の「静かに腐っていく日々」という言葉が印象に残っています。
そこから抜け出したいと、岩本と出会って彼のように健やかに生活したいと思った弓削に心が震えました。
本当に本当にタイトルや表紙に騙されました。なんども通勤中に泣かされることになる一冊だったとは。
外見に惑わされず(笑)手に取ってみて下さい。琴線に触れる人にはたまらない一冊になると思います。