投稿元:
レビューを見る
昔、宝塚星組で「紫禁城の落日」という舞台を観た。清朝最後の皇帝 溥儀とその皇后 婉容の人生を軸に、政治・国際情勢、人間模様(溥儀の弟 溥傑とその妻 浩、日本軍の軍人や清朝の遺臣など)を描いた物語だった。舞台装置も衣装も豪華絢爛だったこと、溥儀を演じこの公演で退団した日向薫さんの長身に中華服がとてもよく似合っていて格好良かったこと、婉容を演じてやはりこの公演で退団した毬藻えりさんが美しく艶やかだったことや、二人の運命が哀しく切なかったことが心に残っている。
当時「ラストエンペラー」という映画もヒットしていたので見たはずだけれど、映画で覚えているのは、迷路のような広くて埃っぽそうな城が壁(塀)で細かく区切られていて圧迫感があるし、住みにくそうだと思ったことだけだ。
後にNスぺか何かで婉容の人生についての番組を見たときは、阿片中毒になってしまう彼女の人生があまりに壮絶で痛々しくて見ていられなかった。溥儀の弟 溥傑さんが日本人の奥さん(浩さん)を迎えていて、仲睦まじかったらしいのとは対照的な夫婦関係。溥儀や、溥傑さんと浩さんについての番組も見たことがあったように思うが、とにかく、一つの王朝が滅亡するという時代が大きく動くときにそのような立場に生まれついてしまった人たちの運命が凄まじすぎて…なんという運命を背負って生まれてきてしまったのかと、気の毒に思う。
当時の中国における様々な事件の前後関係や背景、様々な勢力の思惑がなんとなくわかってきた。2巻目以降も楽しみだ。
投稿元:
レビューを見る
蒼穹の昴に始まる中国清朝末期のシリーズ。50歳を超えた春児も出てくるがちょい役。タイトルからもわかるように、蒙塵(モンチエン)した溥儀の話。1巻では史上初めて中華皇帝と離婚した側妃、文繍の視点が中心。史実として1931年溥儀との離婚を裁判所に申請して認可され、溥儀が慰謝料5万5千元を支払うことで離婚が成立している。蒼穹から一貫してキーワードとなる「没法子(メイフアーヅ)」。個人的にこの文繍という人物が苦手なんだが、この1巻に描かれる文繍がほぼ私のイメージ通りで、そこはストレスが少ないが、やはり没法子。蒼穹の頃は時代劇のようでリアルに感じられず、エンジョイしたが、そろそろ実際に知っている人、自分の生きている時代とクロスオーバーしてくるので、かなりリアリティを感じられる。印象に残るのはチャーリーチャップリンの最新作『ザ・ゴールド・ラッシュ』のくだり。深い。
阿片の香り漂う清朝末期、2巻が楽しみ。
投稿元:
レビューを見る
春児や文秀等、懐かしい面々は嬉しい一方で、イマイチ盛り上がりに欠ける。終焉に向かいつつも、ひと花咲かせるような、何かが無いのが残念。
盛り上がらなくとも、語り口は見事なので、読ませはする。
投稿元:
レビューを見る
文字を追う速さがずいぶん遅くなって、全4巻の作品を了えるのにずいぶんかかってしまいました。満州国皇帝溥儀とその周囲の人物たちの物語です。満州国についても皇帝溥儀についても高校で習った少しの記憶だけしかありませんでした。この時代の日本と中国、そして清国との間にこんなにたくさんの経緯があったことを知りました。
「どうしようもない」っていうのはどうしようもあることをどうしようもできなかったということなのだと思います。はじめからどうしようもないことは、あるがままに!Let it be.
投稿元:
レビューを見る
宣統帝・溥儀の側室・文繡による、溥儀の脱出劇と離婚話
「どんなに高貴であっても、どんなに頭が良くても、臆病な男はだめですね。」それが、溥儀の姿だったんですね。だから、沈みゆく王朝から、文繡は逃げ出さざるを得なかった。
そして、大きな疑問が。西太后は、光緒帝の跡継ぎとして、溥儀を選んだのでしょうか。まぁ、当時3歳だったから、判らなかったのかもしれないけど。
文繡の行動は同時に、張作霖が見限った「溥儀の姿」でもあったのだと思う。天子にふさわしい人物かどうか。天命があるかどうか。天子じゃなくてもよかったかも。自分に相応しい人物(自分を愛してくれる人物)かどうか。に、気が付いてしまった。だから、「自由」という旗印を掲げ、離婚訴訟を、逃避を。
溥儀の魅力は、そのまま清朝そのものに拡がる。”ふさわしくない”ことが齎す、帰結・終焉に。紫禁城を追い出された彼らは、歴史をひも解かなくても、結末が見える様です。
天子蒙塵では、4巻に渡って、最後に記された、張作霖の「天理人心」を説いているようです。いかなる運命であろうと、人間はおのれの力で覆すことができる。だから口が裂けても、没法子といってはならない、と。さもなくば、と。
投稿元:
レビューを見る
蒼穹の昴シリーズの五作目。第一巻は溥儀の側室、文繡の目線で離婚劇を語る。過去の出来事を振り返る語り口は『珍妃の井戸』と似た感じだと思った。
登場人物が少なめであまり複雑ではないので、読みやすかった。