投稿元:
レビューを見る
<目次>
はじめに 昭和史を「教養」として読み直す
第1章 昭和初期の人たちは、案外今の私たちと似た状 況にあった
第2章 満州事変はなぜ後戻りできなくなったのか
第3章 復活の兆しのあった政党内閣と日中戦争の泥沼 化
第4章 避けることのできた日米開戦
第5章 現代の日本の仕組みをつくった戦後という時代
<内容>
山川出版社の『詳説日本史B』(教科書界の大ベストセラー)を基にして、如何に教科書は記述が簡単すぎるのか。そこに事実がどのように漏れているかを、わかりやすくつづった本。今日から即授業に使える!
投稿元:
レビューを見る
協調的な幣原外交 強固な田中外交
どちらも中国の既得権益および日本人居留民の生命と財産を守るという点では一致していた。しかしその間に中国情勢が大きく変化したため、幣原と田中の対応に変化が生じた
1930 ロンドン海軍軍縮条約 日米英3カ国は協力してギリギリのところでまとめた。そこで信頼関係が生まれた 民政党に対する英米の評価が高まる
浜口雄幸 昭和恐慌の只中で、「いまは耐えてください」ときちんといえた政治家だった
1930年代 国内で満州権益に対する関心が失われ始めた
満州の権益 所詮は猫の額ほどの土地と細長く伸びる鉄道線のみ
1930 日中関税協定 経済的に対等
なぜ蔣介石を怒らせてまで赤字路線を守らなければならないのか
満蒙の危機 満蒙が見捨てられる危機
そこで元満鉄副総裁 松岡洋右 1931 帝国議会で満蒙は日本の生命線と演説
松岡にとっての満蒙は日本の生命線は、条約で認められた権益を守りつつ、中国とも良好な関係を築き、日本と満蒙の経済関係を活発にさせましょうという意味
515事件 国民は軍部に同情的
226事件 逆に軍を疎ましく思う
1932 日満議定書 満州国を正式に承認
幣原の案で、リットン調査団 内容は日本に譲歩する案 バランスのとれた報告内容だった 日本はうけいれず
国際連盟脱退 発効は2年後 その前に気が変われば戻ることができた
外務省 対日避難勧告がでたあとに熱河作戦が始まってしまうと、経済制裁が発動
熱河作戦が近いうちに決行されるのであれば、その前に先手をうって、国際連盟脱退の意思表示をすればいいと判断した
脱退通告と同じ年 1933 日中停戦協定 満州事変は一区切り 万里の長城以南に手をださない
大政翼賛会 まとまりに欠ける
柳条湖事件(満州事変) 条約で認められていた日本の権益である南満州鉄道を関東軍が爆破した
盧溝橋事件 日中軍事衝突が北京郊外、中国本土でおきている
1900義和団の乱の後、居留民保護で各国の軍隊を中国に置くことが国際条約で認められていた
4日後7/11 すぐ停戦協定
1937 トラウトマン工作 ドイツを仲介とした日中和平工作 成功せず
国民政府を相手にドイツを仲介とした和平工作をしていたけれど、うまくいかなくなったので、和平工作打ち切りの意味合いを国民にしらせるため、「国民政府を対手とせず」との声明をだした
日本と中国は明らかに戦争をしているのに、米国にたいして「これは戦争ではありません」といい続けなければならなかった
戦争となると米国は中立の立場をとらざるを得なくなるため
当時米国は事実上アジアに植民地をもっておらず、日米間で植民地をめぐる戦争というのはありえなかった
要するに植民地をめぐる対立が戦争に発展するような自体は日英なら十分にありえた
本来起こるはずだった、日英戦争を、事実上米国があ肩代わりした格好になった
ABCD包囲網は軍部が考えた国民向けのプロパガ��ダ
投稿元:
レビューを見る
歴史の振り返る事の大切さについては皆が認める。しかしそれは教科書の暗記として表面の事象を知る事ではなく、背景にどの様な状況があったのか、本来の目的はどこにあったのか、何故意図したことと反対の方向進んでしまったのか、を知る事が必要である。
この本に書かれている時代は、自分が経験する以前の話ではあるが、今につながる出来事であり、歴史を振り返るにあたっての考え方とか観点を示してくれる良い導き手となる。
投稿元:
レビューを見る
日本政治外交史の専門家が、昭和史を語り下ろす。高等学校「日本史B」を引き合いに出しながら、教科書には載っていない背景等を分かりやすく解説。例えば、教科書では「協調外交=幣原」、「強硬外交=田中」といったイメージを持ちがちだが、幣原外交も田中外交も中国での既得権益や日本人居留民の生命と財産を守るということでは両者とも一致していたが、中国の情勢が大きく変化(北伐の開始、南京政府の樹立)があったために幣原と田中の外交も変化が生じたのだという。中高生が読んでも理解が深まるだろう。大人も、学び直しに最適。
投稿元:
レビューを見る
軍国主義、国体、大東亜共栄圏などキーワードは覚えていましたが、第二次世界大戦に参戦した理由はボンヤリしていました。本書では志那事変を中心に太平洋戦争に突入していく様子、また、度々戦争回避する機会があり、参戦が必然ではなかった様子が説明されています。戦前の日本が二大政党制の弊害により意思統一しきれなかったことも説明されていて、現在の日本を考えるうえで大変参考になる書籍だと思いました。
投稿元:
レビューを見る
すっごく個人的な理由で必要に駆られて昭和史を読んでますが、この本とても良いです。高校の日本史教科書の副読本とかにすればいいのに。
私、勉強はそこそこできたほうだと思うんですけど、好き嫌いでいえば日本史がめっちゃ嫌いでした。
日本現代史の第二次世界大戦参入までの教科書を読むと、非常に愚かなだけの登場人物たちが、私利私欲と無知だけの理由で、大量の犠牲者を出した物語に読めるので、テストの解答用紙は埋められても、正直「???」って感じでした。あれ、昔の人ってこんな思慮浅く愚かだったの?と。
この本は山川出版社の日本史Bの教科書を引用しながら、その行間の間に、何があったのか、その時の軍部は、その時の与党と野党の状況は、世界経済は、列強の事情は…等々の情報を非常にすっと入るリーダビリティの高い文体で書いています。
歴史って単純化しちゃいけないものの最たるものなのに、なんで、高校の歴史は、アンパンマン張りに単純化した歴史を教えるんだろう。そんなの想像力を削いで、アジテートされやすい大人を量産するだけなのに。
でも、この本プラス、まったく史観の異なる似たような本を副読本として、高校日本史教育をやったとしたら、果たして、良識ある教養人がたくさん排出されるのかな?っていうとまあ、わからない。歴史のイフを立てることは、価値があるけど、立派な動機も、根拠ある取り組みも、予定通りの結果を生むとは限らないから。この本が書く歴史みたいに。
投稿元:
レビューを見る
本書では憲政の常道といわれた二大政党制の時代から現代の憲法論争や安保闘争に至るまでを取り扱っています。
本書の大きな特徴は、山川の教科書を引用しつつ、その行間には誰のどのような思惑があったのかという背景の説明に力を入れている点です。近現代史がしばしば丸暗記で済まされてしまうのは、歴史的事実をただ配列しただけという教科書のつくりにも原因があると思います。本書の読了後に教科書にあたるとその記述がより活き活きとした人間味のあるものに見えてきてます。
もう一つの特徴は、語り下しの形式で書かれていることです。そのため何度か同じ内容が繰り返されることがありますが、私のような素人からするとその都度確認できるためむしろ理解に役立ちました。
歴史は繰り返すと言われますがまさにその通りですね。それぞれが党利党略、組織利益を追求した結果、良からぬ方向に進んでしまった、ということが多くあったように思います。
現代政治のトピックとしては、保守と革新のねじれについての説明が大変わかりやすく腑に落ちました。保守政党がかかげる改憲と親米は本来であれば矛盾した立場であるはずです。このねじれは一体どこから生じたのか、歴史を紐解いて解説してくれています。
歴史を学び、同じ過ちを繰り返さないようにしたいですね。
本書は無味乾燥な丸暗記から脱却したい社会人、大学生の学び直しに最適な一冊と言えるでしょう。
投稿元:
レビューを見る
学習院の学長である著者が、山川出版社の『日本史B 高校日本史』にツッコミを入れていくスタイル。教科書の記述というのは概ね間違いはないのだろうが、解釈としてやや古い部分や簡潔な説明が原因で説明不足な所があり、結果として誤解を与える部分がある点に言及している。
日本史Bは進学校向けで日本史Aは非進学校向けなので、レベル的には高校時代に日本史Bをやっていてさらに深く勉強したい人向けであり、大学1年生の一般教養科目のサブテキスト的位置づけといったところか。文体的には学校の先生が学生向けに語りかけるというテイストなので好みは分かれるだろう。
投稿元:
レビューを見る
明治以降の歴史が学校教育で十分になされていないと言われるけれど、結局は今の政財界の闇に関わるので手がつけられないというのが本音だと思う。
幕末の志士だの明治の偉人だの呼ばれるのは今の政財界の創設に絡んだ人が多く、ヘタに英雄視するのは問題。
この本は昭和戦前史のみに限定した読みやすい本でした。
昭和でもこれだけ政財界はブラックなのに、明治・大正には触れられないよね。
いつの時代も官僚は優秀なのに国の方針を決定する政治家が政党間の足の引っ張り合いなどで国益に反するようなことをしているようだ。
総括して外交官経験のある人は視野が広くバランス感覚が良いようで、そういった経験のある政治家に力があるときは歴史的に良い判断ができているように感じました。
歴史は多角的にいろんな視点の意見を読んだり聞いたりして自分なりに学んでいく必要があると感じた1冊でした。