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恋愛要素も入れたサスペンスで、出だしから物語に吸い込まれ没頭してしまいます。
現にこの本読みながら目的地では無い駅で降りてしまったり、読みふけってる所携帯のバイブ音で心臓跳ね上がったりと、常に耽ってしまった。
作家の天谷柚は編集者である夫に束縛されている。肉体的暴力はないが精神的にじわりじわりと追い詰めていく感じが厭な夫だ。そんな柚は、趣味で小説を書いており事情があって外に出られない28歳の専業主婦・凛子と名乗り、見知らぬ人と文通ができる会『綴り人の会』で自称・金沢住まいの35歳のエリートサラリーマンのクモオに出会った。実際クモオは21歳の三流大学三回生で就活もろくにせず彼女ともうまくいっていない魚津住まいの航大。
はじめは普通の文通であった(や、はじめから何かまとってはいたか)が次第にそれは恋文となり、やがて殺人計画となる。狂気そのもの。
クモオの気持ちはわかりやすい。背伸びしてエリートサラリーマンを名乗り妄想の自分を偽りながらも、まだ見ぬ凛子に素直に思いを馳せ、凛子に会いたくて会いたくて、就活はやる気はでないし恋人や同級生には嗤われるしで凛子しかいない世界になってしまった。そんなクモオの気持ちはまっすぐ過ぎて純、言い方は悪いがバカすぎて痛々しい。
凛子の気持ちもわかる。それは私が女だからだろう。世間から見れば幸せで成功していて身なりも悪くないし、旦那との仲も良く何もかも手に入れている女。それを旦那に酷い暴力を振るわれている私を助けてほしいと偽る凛子の気持ちわかってしまう私もメンヘラなのかも笑。
そう、メンヘラすぎるのだこの話は。どっちもどっち。
凛子の変わらない日常、契約的な不安定な関係、歪んだ愛情なラストと、クモオに少しだけ明るい未来が待っていそうなラストだったのがまたよかった。
井上荒野さんの作品の中でお気に入りの一冊になりました。
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メディアリクエスト
凛子、クモオというペンネームで文通を続ける二人。狂気じみてくる後半は怖い。
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「錦繍」を読んだ後にまたもや往復書簡の作品。
これは、随分趣が違う。前者が再生への物語なら、これは、破滅への物語…とみえた。
凛子、クモオというペンネームで文通を続ける二人。どちらも現在のリアルな自分に閉塞感を覚えている。
凛子、クモオになりきることで、もう一人の自分として手紙のなかで生きる。
凛子はクモオに自分の人生を変えてくれる何かを期待して、罠を仕掛け、クモオはクモオで何者にもなれない自分を変えられるきっかけを凛子に求める。
特に、クモオがだんだんと壊れ、狂気を帯びていく過程が丁寧に描かれていて怖い。
クモオにも、凛子にもイライラのしっぱなしだったけど、最後に二人が会うことで、現実に目覚め、前を向いていく姿に安堵する。
これもやはり、再生の物語だった。
さすがは荒野さん!
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読んだことを忘れてしまっていて、再読。手紙だけで殺人教唆をしてしまう女性作家の技。就職活動もしないでいる大学生がどんどん罠にはまる様がサスペンス。落ち着いて考えてみれば、そんな馬鹿なと思えることが起きてしまう。ネットだともっと多いんだろうね。荒野さん、こわいわ~。
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書評を読んで図書館にリクエスト。
もはや書評も思い出せないけれど…。
この時代の若い男子(クモオ)が手紙をこんなにも、書くのだろうか?
という疑問はさておき。
メールでもよかったような気がするが、月に2回の手紙のやり取り、という限定された状況がかえって、妄想(男子の)をヒートアップさせたかもしれない。
DV夫から逃げたい女、かと思いきや、そうではなかったし、結局、年上女性に振り回され妄想が止まらない男子としか思えなくなっていった。
勉強にも就活にも身が入らない、最後は人を殺めそうになるとは、踏んだり蹴ったり。
最後は、お金がなくても愛さえあれば…と無謀にも上京しようとまで思い詰める男子。
全然ダメダメの空手で食べて行こう、とか、もう無茶苦茶に壊れていく一方で、女性は冷静でいる。
肉体的ではない精神的なDVってわかる、こういうのあるよね、と思ったけど、こんな風に人を巻き込むのは、あまりにかわいそうな気がしてしまった。
お話としては面白かったし、あっという間に読んでしまったが、後味はあまりよろしくなかったな~。
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面白かった。
あえて隠さず、嘘を嘘として書き綴るやり方でここまで惹きつけるとは、センスが相当良いと認めざるを得ない。
最後、終わり方としてはとても良いと思う。
このことを通して何かが変わり、そしてこれからが始まるのだということに。
誰かと文通をしたくなった。
私も違う誰かになれるだろうか。
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現実にイライラし、もやもやと過ごす女性の描き方が本当にうまい。クモオという若い男については、やはり若さゆえの愚かさとエネルギーがみられ、恋愛と呼ぶにはちぐはぐすぎる、文通で進むストーリーも意外とおもしろかった。
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文通だから書ける言葉
文通だから燃え上がる気持ち
SNSより
直筆の文字を手紙という物体を
やり取りする分重みも増すやろうね。
クモオが実際に行動にでたくらいからが
怖くなってきて、
久々に本で恐怖を味わったわ。
でも、クモオは結局当て馬にされただで
凜子はやはり夫が好き、って、
ちょっぴりクモオくんに同情してしまうわ。
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文通というのが何とも言えない
161頁で柚の夫が「ウイイイ、ウイイイ」と唇から声が洩れ出す。ここからワクワク感がとまらなかった
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依頼殺人って、ありきたりなあらすじだけど、会ったこともない人間に、しかも文通を通じて…という、逆に新鮮な感じがした。SNSだったなら、タイムロスが描けないし、この「間」がよかったのかも。映像化し易そうな本。
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綴り人の会という住所も名前も名乗らずに文通の橋渡しをしてくれる会を通じて出会った二人。35歳の児童作家と21歳の大学生。お互いのプロフィールを詐称し、その虚構の人物になりきることで大きな罪を二人で犯してしまう。最後は淡々とした自由を手に入れたかもしれないし、元に戻っただけかもしれない。静かだが、ひたひたと恐れを覚える物語である。
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読んでる間は面白かったが、特に心に残ったり、読んで良かった!と思うほどではなく。
文通していていかにも擬似恋愛に陥りやすいのは想像できる。特にこのクモオのような人。だんだん現実との見境がつかなくなっていく描写は良かった。空手の辺りの、完全にクモオが現実と理想を混同している所は薄気味悪くて印象的。ずっと薄気味悪いトーンが続いているような本。
それにしても、凛子は良く分かりませんでした。題材自体は面白いんだけど、凛子にもクモオにも共感したり感情移入したりできなかった所が、自分としては評価高くなかった原因か。
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途中から、結末はどうなるか気になり読み進めたけれど、登場人物がどうも幼稚というかなんというか。意外性もなく、特に惹かれるものもなくがっかり。次の作品に期待。
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いまどき、匿名の相手とメッセージをやりとりするというのはよくあるシチュエーションだが、それをわざわざ「手紙」という前時代のメディアで試みたところは着眼点としては面白い。しかし、その手紙の持つ特性(書くまでの時間、届くまでの時間など)を必ずしも活かせているかというとそうではなく(ただし、「物理的な存在」としての特性は活かされていて面白い描写が多い)、これなら e-mail でやった方が良かったんじゃないのという感じ。というか、著者が e-mail 文化を抜け出せていないせいで、個々の手紙の内容が拙く、全体として興醒めになっている。いくつかあるサスペンス・シーンは、流石のストーリー・テラーぶりが発揮されていて、楽しめる。
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文通で繋がった凛子とクモオ。
凛子は自分をじわじわと拘束する夫を殺してほしいと、クモオに願うようになる。
不気味な雰囲気が漂うストーリー。
柚と柚の夫の関係性がそれを象徴している感じ。
やる気のないハッキリしないクモオが嫌。
クモオというペンネームにも違和感と、気持ち悪さを感じました。
手紙の中で、架空の自分を作り、凛子にハマっていくのは気味が悪かった。
昔からある文通、メル友など、ここまでの事はなくても、こういう世界はいつの時代にもあり、その盛り上がり方は想像は出来る気がします。
設定からはもっと綺麗でハッピーな話も出来るのでしょうが(ハリウッド映画 ユーガットメールは大好きです)、著者ならではの展開と納得。
先が気になり一気読みでしたが、後味はイマイチ良くない話でした。