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菊池寛は戯曲の形でも抜群のストーリーテラーです。
小説の形でも発表している、藤十郎の恋・敵討以上(恩讐の彼方に)・入れ札のほかに、精神薄弱の兄にとってまともな人間に戻るほうがよほど不幸ではないかとシニカルに指摘し今では放送禁止用語が散りばめられた’’屋上の狂人’’、坊主どもの禁犯を唯物主義を逆手にとって趣深く諫めた’’奇蹟’’、家族不幸の父を拒絶する長男とそれでも家族であるが故の絆を押し出した’’父帰る’’、明治維新直前に勤王に就くか佐幕に就くかで家族内や婿候補との意見が割れた様を巧みに描いた’’時勢は移る’’、知恵の足りない腕自慢がかえって不幸を招くという訓話’’岩見重太郎’’、逃げ延びる際に楊貴妃が死を選んだ理由と玄宗皇帝の心境をひねてとらえた’’玄宗の心持’’、ストーカー遠藤盛遠を罠にかけ誤って殺される袈裟夫人に対する夫渡辺渡の複雑な男心を描写した’’袈裟の良人’’、美人のプライドを愉快に書き表した’’小野小町’’、そして、今時の感覚だと夫が妻を殴って普通な描写に面食らいはしたけど夫婦喧嘩は犬も食わぬを取り上げた’’時の氏神’’、どれもこれもオーヘンリー並みのニヤリが続きます。不当に評価が低いのはもったいない
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父帰るのみ
会話形式で、その場にいるかのような臨場感がある。
賢一郎の気持ちも新ニ郎の気持ちもどちらもよく分かる。
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別途、小説も読んでいるので、ストーリーがすっと入ってくる。
正直、小説を読んでいる感じと大きな違いが感じられず、それは良い意味で、菊池寛の小説がとても分かり易く、動的であるからかもしれない。
短いストーリーの中に、人間の情、義、等々、心に訴えかけるものを、サラッと忍ばせているところが心地よい。