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今や,初版刊行から4か月弱で8版を数えるベストセラー。複雑な人物関係に対して付された懇切丁寧な説明もさることながら,おそらく読者の多くが長年抱いていた応仁の乱に対する「ただぼんやりとした不安」を解消しようという意気込みが,ここまでの売れ行きに繋がったような気がする。
300頁に至る本書の中で,著者が一番言いたかったのは,はたして長期化した応仁の乱の複雑なメカニズムを解明することだったのか?それならば,おそらく第6章の「大乱終結」で,まさに終結していたと思う。本書のクライマックスは,11年の歳月を費やした応仁の乱のあとに突如としてやって来る「明応の政変」にこそあろう。このクーデターで,細川政元が11代将軍足利義材(のち義稙)を廃し,清晃(のち12代将軍足利義澄)を擁立させたことが,室町幕府における「2人の将軍」化と分裂をもたらし,戦国時代の幕を開けさせた。こうした著者の主張は,フェイドアウトで終わらない平成の『応仁記』を読んでいるようで,楽しかった。
我々は普段,室町期の守護大名や国人たち,ましてや本書のストーリーテラーとなる経覚と尋尊といった門跡の門主たちの肖像画にあまり触れてこなかった。おかげで,彼らの顔となり,人となりを,非常に思い浮かべにくい。その点を,著者は文面で最大限に努力してくれたと感じる。
とくに,このような効果によって人間味を帯びた人物が,畠山義就である。大和国の守護になりたくてあれだけ暴れたのか,はたまた権威を徹底的に破壊したかった脱中世人のか,定かではないが,15世紀後半期を代表する"Best Supporting Actor"として描かれていた。もう一人挙げるとすれば,足利義視だろうか。東軍から西軍への寝返り,兄・足利義政との確執,子・足利義材の将軍就任への執着など,単なる還俗武士ではなかろう。
ただ一つだけ残念だったのは,「結果,」(212頁)という「接続詞」が使われていた点である。80年代生まれが著す宿命なのか,いずれは「接続詞」として黙認される日も来ようが,アカデミック・ノンフィクションを並べる中公新書においては,時期尚早であると言わざるをえない。
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興福寺の僧が見た応仁の乱。
乱以前から幕府は揺らいでいたこと。時の将軍の義政の優柔不断さ。乱後は大名が京を離れ、自国の統治に注力したことなどが、わかりやすく描かれている。
応仁の乱に英雄はいないとのことだが、どうしてどうして、細川勝元、山名宋全、義政、日野富子と登場人物は個性豊か。ただ、他の戦の時代に比べ、○○の合戦といったものが少なく、グダグダ続いたのが、物語としての盛り上がりには欠けるのかもしれない。が、その後の影響を見ると正に歴史の転換点だったようだ。
時々出て来る筆者独特の比喩に?中国国連加盟とか(^^;
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2/3程度読んだところでタイムアウト。
応仁の乱って有名だけど内容がさっぱりわかっていなかったのでなかなか興味深かった。
やっぱり後の戦国時代に比べるとまだまだ貴族や寺社という権威が残っていたんだなぁと。主人公?もお坊さんだしね。
時代時代でたくましく生きる人々はやはり魅力。
人名の記載が名字を省かれるので、これ誰だっけか?と系統図とにらめっこしながら読まなきゃいけないので少々敷居が高かったかな?
機会があれば残りも読んでみたいと思いました。
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歴史書としては異例のヒット!とテレビで紹介されていた事と再放送を含め毎週観ている「英雄たちの選択」でも取り上げられていたので読んでみました。
学生時代、「応仁の乱」という名前だけは教科書に載っていたことは覚えていますが内容までは覚えていませんでした。
読み進めても登場人物が多く、原因や期間が長すぎるし複雑すぎるしでよくわからなくなりました(笑)
私は歴史好きの域を出ないからわからなかったのかもしれないけれどこれではテレビ番組の題材として弱いし、教科書でも載せづらいだろうな、と思いました。
全体的な流れをぼんやりとしか理解できませんでしたが皆、勝敗ではなく「後に引けない」というところが無駄に戦死者を出し出口戦略を誤ってしまったんですね。
理由や大義名分が弱い戦いは破滅しか起きない。
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鎌倉時代もそうだろうが、この時代も戦乱が絶えなかったにも関わらず、教科書にはあっさりとしか述べられておらず、素人の私も当然ほとんど知らない内容でした。
ただ淡々と事実を述べるに留まらず、2人の僧の視点から描かれていた点が良かったです。
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名前を知らない人はいないくらい有名ながら、かなりの歴史好きの人以外「どんな内容(発端・経緯・結果)?」と聞かれて明瞭に答えられる人も少ないのが「応仁の乱」ではないだろうか。
(室町幕府の弱体化を招き、その後の「戦国時代」招来のきっかけとなった、くらいは言えるにしても、その中味は?と問われると)
かくいう私もご多聞に漏れずその一人。
こちらを読んで改めて「なるほど、こういう経緯だったか…」と思うと同時に、ややこしくて読み終わった今でも自分で説明は難しいことには変わりないという…(苦笑)
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はじめに
第一章 畿内の火薬庫、大和
1 興福寺と大和 / 2 動乱の大和 / 3 経覚の栄光と没落
第二章 応仁の乱への道
1 戦う経覚 / 2 畠山氏の分裂 / 3 諸大名の合従連衡
第三章 大乱勃発
1 クーデターの応酬 / 2 短期決戦戦略の破綻 / 3 戦法の変化
第四章 応仁の乱と興福寺
1 寺務経覚の献身 / 2 越前の状況 / 3 経覚と尋尊 / 4 乱中の遊芸
第五章 衆徒・国民の苦闘
1 中世都市奈良 / 2 大乱の転換点 / 3 古市胤栄の悲劇
第六章 大乱終結
1 厭戦気分の蔓延 / 2 うやむやの終戦 / 3 それからの大和
第七章 乱後の室町幕府
1 幕府政治の再建 / 2 細川政元と山城国一揆 / 3 孤立する将軍 / 4 室町幕府の落日
終章 応仁の乱が残したもの
主要参考文献
あとがき
関係略年表
人名索引
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何だか売れているらしい。やたら登場人物が多く、その経緯を追うだけでも大変な「応仁の乱」。それをわかりやすく叙述しているのかと思いきや、前半から中盤にかけてはやはり難しかった。
しかし、乱終息後の叙述、つまり時代が「戦国時代」に入っていくあたりからすっきりと見通しがよくなってくる。途中で挫折し掛かっている方はむしろ最後をまず読んでから最初に戻ったほうが読みやすいかも。
結局、応仁の乱とは何だったのか。それを著者は守護在京制の解体と位置付ける。つまり、京都中心主義の時代が終わり、「地方の時代」(戦国大名の領国経営)の始まりである。
と、書いてしまうと身も蓋もないが、結局はそういうこと。しかし、原史料を駆使して同時代を生きた人々の生の声をできるだけ叙述に反映させようとしている。その意味で大変面白く読んだ。
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日本史の特異なトピックであり、舞台は京都を中心とした応仁の乱をテーマにしたこの本がたいへん売れているということで手にしてみた。視点としては奈良の興福寺の僧侶の日記を中心に史実を組み上げた様だ。文化都市京都の建築物が殆どが応仁の乱以後なのは特に西軍による放火戦法に寄った様だ。その戦乱は京都ばかりでなく滋賀、大阪、奈良、和歌山、岐阜、兵庫など、読む前に思ったより広がりがあった。戦国時代の方が群雄割拠のイメージがあったが、応仁の乱の頃にはもうバラバラ感が同じかそれ以上にあって、幕府も管領もお家分裂闘争してる。幕府も有名無実とまでは行かないまでもここぞで取り巻きの文人官僚すら離反する始末。足利幕府の系譜も戦による敗死や分立等こんなにややこしいとは知らなかった。
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最近よく売れているのか、どこの本屋でも
ベストに入っているので手に取って読んでみました。
確かに、今まで応仁の乱自体をここまで詳細に追った
内容の書物はなかった気がします。
戦国時代前夜の室町時代の空気感というか時代背景が
ある程度わかるような気がします。
戦国時代の前であるこの時代は、日本全体がもっとドラスティックに大きく動いているという感覚を持ちました。
また、応仁の乱の描写の視点として奈良の興福寺が採用
されていますが、のちの時代においてはどちらかというと
悪者にされている興福寺の影響を色濃く受ける大和の国
というところもここまで詳細に語られることもなかった
ので新鮮でした。
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あの応仁の乱を知らないはずはないのですが、実はよく知っていなかった、日本史の中でも最もよく分かっていなかった戦争という認識でした。教科書的なものを読んでもよく分からなかった。その原因が、本書を読むことで理解できたように思います。とりあえずあの応仁の乱というものは、とても複雑だし、難解なものなのだと。そのあたりを、まず感覚として持つことができたことは大きなことだったと思います。京都で発生したこの戦争を、その影響を受けながら、奈良から見ていた2人の興福寺別当の記録から紐解くことで、乱の周囲への影響も知ることができ、この戦争が大きなものだったことが実感できます。またそれにより、戦後の大名がどのように変わっていったのか、それが戦国時代にどのようにつながっていったのか、日本史の中世を知るためには、この応仁の乱を正確に知っているかどうかが重要だと思いました。
しかしながら、いつの時代も人間は芯のところは変わらず、現代人としても妙なデジャブを感じながら読ませていただきました。
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近所にお墓がある人がこんなにがっつり応仁の乱に噛んでるとは知らなかった。勉強になった。またお墓参り行こう。
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面白かった。高校日本史でも何となく年号覚えた程度で、知名度の割には詳細を知らなかった応仁の乱。
実態は畿内の有力な守護大名たちの家督相続や領地争いでの小競り合いがクラスター式に拡大し、それが一つの大乱に集約されたものだった。
そんな形だから、誰が主役で誰がキーパーソンかもいまいち明確でなく、リーダーシップを発揮する人がいなかったことが長期化の原因。
これは社会人になって世の中がわかったからこそ、理解ができたのではないかと思う。
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2017/11/02:読了
内容が濃かったが、なんとか読み終えた。
あとがき:286ページより
応仁の乱は、新時代の革命の側面がある。
ただし、それは支配階級の自滅による。
将軍や大名たちも、それなりに出口戦略は考えて、終戦に向けて様々な努力や工夫をしていたが、コミュニケーション不足やタイミングのずれで、終戦工作は失敗を重ね、戦争が無意味に続いた。
試行錯誤を重ねながら懸命に生きた人々の姿をありのままに描き、同時代人の視点で応仁の乱を読み解くという本書の試み。
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新書としては異例の売り上げを記録しているらしいが、応仁の乱の経緯をわかりやすく説明したものではない。
興福寺の高僧の記録に多くを拠っているのが特徴で、京都よりも大和・奈良の記述が多い。また、かなり細かな事情や推移も詳細に語られるので、かえって全体像が見えにくい。だから、応仁の乱について手っ取り早く知りたいという需要ではなく、既に一定の知識があって更に詳細に理解したい読者に応えたもの。
その意味では、ここまでがっつりベストセラーになるべきべき本ではなくて、もっとニッチにだらだら売れるべき本だったんじゃないか。とはいえ、、それはそれでその硬派な感じはさすが中公新書だと思う。