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[江東区図書館]
ふと図書館の新刊コーナーで目にして手に取った本。ちょうどその数日前に違う図書館で「ヨネス・ヨナソン」という作家を知り、その著者の本を一冊読みあげたタイミングだったので、その手の本、、、分厚くて一見とっつきにくそうに見えるけれど、大人向けのライトノベルのように一旦読みだすと物語の中に引き込まれて行くような本、、、に久しぶりになじんでもっと欲していたところだった。でもできれば読んでいて楽しいだけでなく、その中から「何か」を得られるような。
ヨネスの本は今借りている二冊目で現在の全著書であることを既に知っていたこともあって、惹かれたのが表紙絵だけでないことを少し中を読んで確認すると、借りてきた。そしてその日のうちに読み終わってしまった。
美術に疎い私には、読み終わった後に説明された「モンゴリアン」についても知らなかったし、この画家の感覚についても共感など同一視するまでには至らず、それよりも戦争批判というか、戦いや征伐といった勝つことに関しての"憧れ"を抱く少年に対して、戦争という現実と身近な恐れを喚起させる存在として捉えられた。そして、この本自体は、モンゴリアンそのものを紹介&内包する話ではなく、"戦争"時の人々に関する冷静な描写本として読めた。
きっとこれが日本での話であれば、モンゴリアンは「非国民」の1ケースとして出てくる存在なんだと思う。でもこの作者の筆運び以上に、海外を題材とすると、現実的にも違いがあってこうなるんじゃないかな。太平洋戦争当時の狂った日本の国内事情と日本人という国民性との差からもそうなる気がする。
モンゴリアン展のためにモンゴリアンを題材に書かれた本と聞いたが、私のように無知な人からすれば戦争時代の描写とも取れる本。それでも表題と表紙絵、そして中身からは、瑞々しい"オレンジ"の印象は湧いていた。モンゴリアン=オレンジで覚えたかな。
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ニューヨーク
1943年から1945年
遠い戦争を身近に感じるようになるライナス
モンドリアンを検索して絵をみてみた
なるほど「ミスターオレンジ」
ちょっと焦点が合わせないくかったかな
≪ 原色は 未来の色だ においまで ≫
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第二次大戦中のニューヨーク、八百屋を営む両親のもと、ライナスは兄や妹たちと暮らしているが、兄のシモンが軍隊に入ることになり、ライナスが店の配達を手伝うことになる。
そこでヨーロッパから避難してきた画家と出会う。
兄の出征と画家のミスターオレンジの言葉に、少しずつ自分と回りの社会を考えるようになっていく。
なかなか地味なテーマ。
画家はピエト・モンドリアンがモデル。
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ナチスやユダヤ人の悲劇が語られるかと思ったが、少年の成長物語だった。実在した画家の展示会に合わせて作られた架空の物語とのこと。
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抽象画家モンドリアンをモデルに、彼のところへ毎週オレンジを配達する八百屋の少年を主人公にした作品。舞台は第二次大戦中のNYで、主人公ライナスの兄もみずから志願してヨーロッパ戦線に出征したばかり。そんな兄を誇りに思い、はじめはただ勇ましい兵士の姿を思い描くばかりだったライナスは、戦火を逃れてアメリカに亡命してきた「ミスター・オレンジ」との交流を通じて、勇壮なばかりではない戦争の実態を知り、戦火のなかに身を置く兄のことが心配でたまらなくなる。
しかし同時に「ミスター・オレンジ」は、そんななかでも想像力を持ち続けることが自由を勝ち取るために大切なのだと説き、ライナスに真の楽観主義を教えてくれる。
巻末の解説によれば、この作品はそもそも作者が、モンドリアン展のために物語を書いてほしいと依頼されて書きはじめたものだったとのこと。でもとってつけたようなものではなく、「ミスター・オレンジ」もライナスも、出征した息子のことを心配する両親も、この時代のなかで生き生きと呼吸している。暗い時代と、そんななかでも明日を思う気持ちとが自然に伝わってくる佳作。モンドリアンの作品をあらためてよく見たくなる。
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1943年ニューヨーク。八百屋を営む両親と兄二人弟二人妹一人の8人で暮らす少年ライナスは、長兄のアプケが志願して戦争に参加したため、配達の仕事を手伝うことになった。週に1回ある画家にオレンジを届けるうち、彼のアトリエの真っ白な壁とそこに貼られた原色の四角に魅了される。ライナスは彼を「ミスターオレンジ」と呼び、親しくなっていくが、その頃、アプケの友人が戦死し、アプケも塹壕足で戦線を離れた。戦争の現実を知って打ちひしがれるライナスに、ミスターオレンジは想像力は強力な武器で、絵を描くことは未来の追求だと語るのだった。
戦争の不安に翻弄されながらも、画家と出会によって自分自身の考えを持ち成長する少年を描く。
実在の画家ピート・モンドリアンと架空の少年との出会いを描くフィクション。
バーグ市立美術館のモンドリアン展のために創作された。
ライナスが戦争の現実に触れてショックを受け、失った希望を取り戻す過程には共感できる。
また、想像力の象徴として描かれるミスタースーパーとのやり取りにもほのぼのとさせられる。また、このスーパーが、パトリック・ネスの「怪物はささやく」のように、現実世界に影響を与えないところにも安心感を持つ。
ただ、後半に行くにつれ物語の主役がライナスからミスターオレンジに移ってきているようで、その点が少しこの物語を弱くしているように感じる。
(モンドリアンのために書かれたお話なので当然ですが)。
ライナスの年齢はわかりませんでした(書いてあったのかも知れませんが、私には見つけられませんでした)が、長兄が17歳、その3歳下の次兄は14歳。ということは、彼は12歳くらいでしょうか。
戦争を扱ってはいますが、難易度は高学年で十分です。
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主人公ライナスは6人兄弟。兄2人弟2人、そして妹が1人。
一番上の兄アプケが、志願兵としてヨーロッパへ出征したので、兄弟のお手伝い順位が上がり、野菜や果物の配達がライナスの仕事となる。
そこで知り合ったのがミスターオレンジ。
本当はちゃんと別の名前があるのだが、難しい名前で読めない。読んでもらっても聞き取れない。
2週間に一度オレンジを木箱に1箱配達するので「ミスターオレンジ」とライナスは呼ぶことにする。
敵をやっつけ、早く戦争を終わらせるために兵隊になった兄は、ライナスの誇り。
なのに両親は悲しそうな顔をする。
ライナスは、兄がノートに書き残したミスタースーパーに、兄を手伝って格好良く戦争に勝ってほしいと願う。
けれども徐々に、戦場で人は死んでいくこと、想像上のヒーローでは現実は変えられないことにライナスは気づき、苦しい思いを抱え込むことになる。
そんな時、ミスターオレンジは言う。
「戦争に勝つためには、想像力が必要だ。敵の言いなりになる未来ではなく、自由が尊重される未来。そんな未来が戦争の後に必ず訪れるとライナスの兄さんは想像したから、志願兵になったのだ」
そしてミスターオレンジも闘っていた。
自由で明るい未来を想像して、それを絵の中に表現すること。
赤、青、黄色の三原色だけを使って描かれるミスターオレンジの絵は、音楽をはらんでいて、明るい未来を十分に想像させるものだった。
なんと良質な児童文学。
戦争についてだけではなく、兄弟の関係、親子関係、友達との関係と、ライナスが悩むいろいろな人間関係は、この本を読んだ子どもたちにもきっと心当たりのあることと思う。
そんな時、ミスターオレンジの話は、力強く前へ進むきっかけになると思う。
ミスターオレンジは、実在のオランダの画家がモデルになっているという。
声高に反戦を謳っているわけではないけれど、じわじわと戦争が侵食していくさまなどが非常にリアルで、ライナスを通していろいろと考えさせられた。
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第二次世界大戦中のニューヨーク、ライナスは6人兄弟の3番目。長兄のアプケが兵隊として出征したことで、家業の八百屋の配達を任されることになる。そこで出会ったのはオレンジをたくさん注文するヨーロッパから渡って来た画家。ライナスは彼のことをミスターオレンジと呼ぶ。
戦争に行く兄のことを誇りに思い、兄が作った架空のスーパーヒーローと会話するライナス。彼にとって兄の出征とスーパーヒーローは同等のものだった。
しかし戦争というものの現実的な恐ろしさを知ることで、ライナスは空想のヒーローの無力さを痛感する。
しかしミスターオレンジは、そんなライナスに想像力の素晴らしさを伝えるのだった。
実在の画家ピート・モンドリアンをモデルに書かれた物語。
ライナスにとってミスターオレンジは憧れや尊敬とはまた別の存在なのでしょう。自分の知らない価値観を教えてくれる人。それによって未来を拓けてくれる人。だからこそ現実に押しつぶされそうになった時に救ってくれる人となったのでしょう。
これもまた「老人と少年」の物語のひとつでしょう。師弟関係でも友人関係でもない奇妙な関係。でもライナスにとって掛け替えない関係。少年が成長する時に支えてくれる、そんな素敵な関係がありました。
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戦争の話だけど、今まで読んだことのある戦争の話とはちょっとちがうかな。出征する兄、ヨーロッパから逃げてきたミスターオレンジ。ライナスの日常は毎日続いていて、その生活の中に戦争がチラチラと垣間見える。
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平澤さんの挿絵が素敵で手に取った。
映画ジョジョラビットを彷彿とさせる内容。
主人公と画家、戦争に行った兄、残された大家族と、友人。
子供の世界を描くのがうまくて、書き手を信頼して心地よく読んだ。
モンドリアンの名前は知らなかったが、見たことはあった。
作中の画家の家の様子は、言われてみれば確かにこの絵なんだけど、文字だけの表現ではあの世界を伝えるのは難しい。
表紙以外にも、あの絵をカラーで最初に載せてほしかったな。
閉ざされた戦争時代にあの色がどれだけ明るく突き抜けたものだったか、もっと感覚的にわかったはず。
ところで、読み飛ばしただけかもしれないけど、
お得意さんの一人だった、おしゃべり好きの面倒な老婦人はどうなったのか、気になる。
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「ニューヨーク、1943年。八百屋の三男ライナスは、配達の仕事をまかされ、ヨーロッパから逃れてきた家族と知り合う。いつも注文はオレンジなので、名付けてミスターオレンジ。彼はライナスに何を語ってくれるのか?」
志願兵としてヨーロッパにへ向かう長兄を誇りに思う三男のライナス。母は「戦争は誇りに思うことではない」と言っているが、ライナスにとって戦争とは兄が描いてくれたヒーローコミックの主人公のように、ヒーローが活躍すれば片付く問題なのである。
一方、ライナスはミスターオレンジに出会う。ミスターオレンジは彼にとって新しい世界の窓となり、ライナスはミスターオレンジに会うのを楽しみにする。しかし、ヨーロッパから逃げ出してニューヨークで絵を描いているミスターオレンジにライナスは疑問を抱き始める。
「だれもが、自分のやり方で戦うんだ。年老いたわたしは、想像力でやっていくほかないんだ。」と、ミスターオレンジ。想像力は、戦う力になるのだろうか。戦争において、意味のあるものなのだろうか。