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紙の本
独り善がりが目立ってばかりの主人公に共感できない
2016/12/07 19:34
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒロインの1人【麗子】が主人公に話を持ち掛ける点ではタイトルにある『てほどき』かもしれないが、全編を通じて熟女からの「性のてほどき」はなく、血気に逸った、むしろ血迷ったとさえ言えそうな20歳の青年が相手のことなど顧みず、己の欲望をぶちまける官能に終始した作品との印象である。麗子の思惑もあって半ばけしかけられている形の主人公には同情の余地も残るが、それにしても我を忘れて挑みかかり、侮蔑にも取れる羞恥の言葉責めを執拗に繰り返しては嫌がる熟女を組み伏せていく姿に全く共感できなかった。本作に登場する3人のヒロインは初期設定で主人公に愛情的な好意を抱いていないのである。
家庭教師の主人公に我が子を預ける麗子を含む母達【沙耶子・優菜】は真面目で実直な先生として慕っているが異性とは見ておらず、これに対して主人公は沙耶子に猛烈な愛情を抱いている。このズレを官能面でもそのまま引きずっているようで、本来なら情交に及ぶ前にあって然るべき手順を飛び越えた、唐突かつ有無を言わせぬ手篭めのような迫り方と責め方が大半。そんな主人公は痛々しくもある。凌辱作品のごとき官能描写でありながら、冷静さを取り戻すと大いに後悔して落ち込む普段の主人公にはそれらしさがないため、テイストとしてどっちつかずの中途半端さを感じる。
初期の段階で僅かばかりでも沙耶子から好意を抱かせるか、あるいは振り向かせるアプローチを盛り込む必要があったのではなかろうか。ほぼ序盤の情交要員でしかなかった優菜はいなくても成立するストーリーなので2人ヒロインで良かったのかもしれない。
また、一度は袖にされた主人公が沙耶子の秘密を知ってまたもや住居不法侵入的に押しかける中盤を経てから訪れるクライマックスは沙耶子への愛情をこれでもかと見せつける場面ではあるのだが、その心意気や良しとしても他に方法はなかったのかとツッコミたくなる変態チックなもの。フツーならドン引きではないかと思うところで沙耶子が急にショタコン的愛情スイッチを全開にするのも首を傾げる。ここはちょっと無理のある展開だったと感じざるを得なかった。
感情の推移があまりスムーズでないところへ麗子に忍ばされた属性が回り道をしているようでもあり、何ともスマートな纏まりに欠ける作品に写ったと言わねばならない。あるいは諸々の要素をそれぞれ少しずつ盛り過ぎたのであろうか。砂糖の入れ過ぎたコーヒーを飲んだけど甘くないばかりかまだほろ苦いみたいな印象である。
デカ乳輪・剛毛・ガニ股といった作者の最近の趣向に今回は新たな要素が加わった官能描写もまた個人的にはちょっとやり過ぎに思えてくる。清楚で慎ましやかな普段とのギャップを描くものだったハズだが、ここまでくるとギャップを越えて本分を喰ってしまっているようにも写る。3人とも似通った官能描写だったことも一考の余地を残すが、何より淫らに乱れてもヒロインの品格や美しさは相応に残しておいていただきたいものである。
誰よりも作者のファンとの自負はあるが、だからこそ是非ははっきり示したいとの思いから今回は辛口になったことをお許しいただきたい。
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