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邦訳あるのが未読と既読半々かちょっと既読が多いかな、くらい。で、未読もだいたいは名前は知ってて改めて読もうってのはあまりないけどそれはそれで。未訳よね、気になるのは。「紙葉の家」のダニエレブスキーとか他に書いてたのかよ、読みてーよ!とかそんなんがチラホラ。木原さんでも増田さんでも藤井さんでも鴻巣さんでも岸本さんでも、何なら柴田先生でも、とりあえず訳して。いや、ホンマお願いします。日本の作家はついつい文庫待ちするけど、ガイブンはうっかり文庫待ちのつもりが絶版になったりするので、ちゃんとハードカバーで買いますから翻訳出してください(心の叫び
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『ユリシーズ』から『これはペンです』まで──『実験する小説たち: 物語るとは別の仕方で』 - 基本読書: http://huyukiitoichi.hatenadiary.jp/entry/2017/01/21/193622
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本でしかできないという内容に拘った良書を集めている。ブックガイドとしては最高級の本になるだろう。ただ、全文暗号で書かれた奇書『秘文字』に触れられていなかったり、ルビや具体詩的要素を駆使した円城塔の傑作『文字渦』や、新国誠一や北園克衛といった具体詩、萩原恭次郎『死刑宣告』についてもっと紙面を割いて欲しかった(具体詩については紙面ですでに触れられており、おそらく筆者は割こうとは思っていただろうが、文字数の関係などもあり限界があったのだろう)。あと、ベケットの小説にもできたら触れて欲しかったかも。本当なら、『現代小説、ここまでできる!』ぐらいの煽りがあってもいいぐらいの良書なのだが。
例えば紹介されているデニス・ホイートリーの『マイアミ沖殺人事件』は、ある事件の証拠品が本に添付されていて、自分で推理して小説の謎を解くという前衛的なもので、しかもこれが1936年に刊行されているという驚くべき書物となっている。架空の民族の音楽カセットが付属したアーシュラ・K・ル=グィンの『オルウェイズ・カミングホーム』にしても、「そんなの小説じゃねーじゃんか!!!」というところまで現代小説が突き詰めたんですよ、という成果が非常によくわかる。恐らく、木原さんが本気を出して翻訳されていない書物にまで言及したら、もう物凄い量の本の情報が出てくるだろう。かなり限定された量に言及した結果、この内容になったと考えるのが妥当かもしれない。
ただ、ブックガイドとしては良質なのだが、私は出てくるほとんどの本を読んだことがあり、率直に言ってあまり参考にならなかった。ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』にしても、マヌエル・プイグの『蜘蛛女のキス』にしても、ブルドンの『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』にしても、ロレンス・スターンの『トリストラム・シャンディ』にしても、ゼーバルトの『アウステルリッツ』にしても、レイモン・クノーの『文体練習』にしても、フリオ・コルタサル『石蹴り遊び』にしても、円城塔『これはペンです』も、ミロラド・パヴィチの『ハザール辞典』も、ナボコフの『青白い炎』も、みんな読了済みなので、読んでいない本が増えていくというよりは、すでにある書物の知識を再確認するような感じで読んでいた。そもそもジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』『フィネガンズ・ウェイク』を原書で読んでいる時点で私は多分この本が想定する一般的な読者とは異なっているかもしれない。私には物足りないが、普通の読者は、現代の小説はここまでできる、というかやっているという「小説の進歩」の確認、という観点から読むと良いのではと思う。
作家を志すものにとっては、現代の小説はここまでやっているという事実を踏まえた上で、今後の作品で同じ轍を踏まないで、どういう未来を切り拓くか、どうエンタメするか、という観点で読むと良い気がする。
私がこの本を読んで読みたいと思ったものは、ジェイン・オースティンとセス・グレアム=スミス『高慢と偏見とゾンビ』(とオースティンの『高慢と偏見』)、サルバドール・プラセンシア『紙の民』、マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家』、レイモンド・フェダマン『嫌ならやめとけ――立つか坐るかして声を出して読まれるべき誇張されたまた聞きの物語』、イタロ・カルヴィーノの『冬の夜ひとりの旅人が』、『実験小説 ぬ』。
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どれもこれも面白そうなのだけれど、反面、かなりしんどそう。
比較的読みやすそうな日本人のをちらほら試してみよう。
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筒井康隆『残像に口紅を』・円城搭『これはペンです』・道尾秀介『N』なんかで感じる前衛的で、奇抜で、特異な小説。そんな「実験的」作品群(主に外国作品)を広く浅く紹介してくれて、それらを読むとっかかりを与えてくれる基礎的な一冊。正解のない文学作品の読み方を教えてくれる。
「あとがき」だけでも読んでほしい。