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教科書で読む名作 山月記・名人伝ほか
著:中島 敦
著者は、東京四谷の漢学者の家系に生まれる。横浜高女の教師となり、誠実な教師生活のかたわら創作につとめ、「かめれおん日記」などを発表。しかし、ほとんど無名のうちに死去。死後、再評価された。
本書は、著者の代表作である以下の8作が収められている。
①山月記
②名人伝
③狐憑
④幸福
⑤牛人
⑥悟浄歎異
⑦弟子
⑧李陵
教科書等で目にすることがあった著者の作品。しかし、しっかりと向き合ったのは本書が初めて。上記の中でも印象に残ったのは3作品。①名人伝②牛人③山月記。
難しいと放り出すような作品ではなく、わかりやすさとユーモアが織り交ぜられている。起こりえないようなことが淡々とリズムよく表現されており、疑問を邪魔することなく、興味をそそられながら展開されている。
教えを押し付けるわけでもなく、事実や感情についても読み手にある程度委ねられるような奥深さを感じる。それだけに何度読んでも違った解釈を得ることができる。
文学の楽しさを気づかせてくれるような作品が多く収録されている。