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UAEに嫁がれた日本人女性の視点で見た、アラブ人社会の生活に関するエッセイ。
アラブ社会のルールを日本人的な感覚/常識と対比させながら冷静に分析していく視点が非常に面白い。
また、日本/アラブを平等に扱ったうえで、その視点から生まれる日本へのアラブ社会の批判には日本人として学び・考えされられる点が多い。
著者の文章も簡潔でありスピード感をもってぐいぐい読める良書であった。
以下、備忘メモ
・UAEは人間的な繋がりを基盤とした社会であり、ビジネス・日常生活をするうえでもその点を重視する必要がある事。そしてそれは日本人が軽視しがちな点である事。
・"インシャラー"は決して無責任な放棄を意味しない事。人間的な誠実さを前提にした、神の思し召しを意図している事。そしてその帰結として、性急な問題解決を求めないゆっくりとした時間軸でもの事を考える事。
・儀典においてはクルアーンの朗誦の良しあしが重要視さえる事。そのため、学校等では朗誦が上手い生徒が学校の隠し玉的な存在になる事。
・UAEでの名誉(=エレガンス)とは、自分の名誉を守り、他人の名誉を汚さず、他人との距離を縮めずに、貸し借りをつくらずに振る舞う事。そして、エレガンスは国によって違う事。
追記:
エレガンスの章のP.59-60にある子育てに奔走する著者自身の描写する記述は本書の笑いの白眉と思う。