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教科書でも有名な「山月記」を筆頭に、天涯孤独な子供を見守る母の亡霊の哀切と不気味さが際だつ小川未明「牛女」、生き返った男が馬の脚を移植されてしまった「馬の脚」(芥川龍之介)、可愛らしい「お化けうさぎ」(与謝野晶子)、大爆発の「閑山」(坂口安吾)、夢とうつつの間をさまよう「尼」(坂口安吾)、人間に置き換えれば嫌らしいだけの光景を動物に置き換えることで別の世界を描き出した「交尾」(梶井基次郎)、いわずもがなの「注文の多い料理店」(宮沢賢治)、奇っ怪な集団の所行を描いた「蛇くひ」(泉鏡花)の9編を収録。ルビ・注釈で子供からよめる上に、粒ぞろいで艶のある作品も含み大人まで十分に読める。
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第二集は「獣」がテーマ。ということでさまざまな動物がモチーフになった怪談集なのですが。怪談、であることは間違いないにしろ。あまり怖くありません。むしろシュールでユーモラス。知らない作品も多いので、こんなとんでもない作品をあの文豪が描いていたんだなあ、ってな発見もありました。
やはり好きなのは、宮沢賢治「注文の多い料理店」。子供の頃にも読んだけれど。今になってまたじっくり読むと、じわじわとした恐怖を感じます。こんなに怖い話だったんだなあ。
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前巻「夢」の山科理絵先生の表紙の美しさにも目を奪われましたが、今回の中川学先生の表紙も凄い、思わず二度見してしまう…。
このテーマといえば、やっぱり中島敦の「山月記」は外せませんね。編者解説での『人虎伝』との比較でまた唸らされる。
小川未明の「牛女」は小川未明らしいハラハラする童話語り口…そしてどこか切なくなる…。
芥川龍之介の「馬の脚」はすごい…凄い怖いしずっと怪訝な表情して読んでしまった…。世にも奇妙な的な単純な展開がこんなにも怖い…。「点鬼簿」もそのうち読みたい。
与謝野晶子の「お化うさぎ」はなんかかわいい…。かわいいじゃないですか…??狸も太郎さんたちも・・・・。
坂口安吾の「閑山」は…安吾こんなんも書いてたんか…。これもなんていうかある意味やはり切ない話よな、と…。やるせない気持ちにさせられる…。
太宰治の「尼」は、う~ん幻想文学…。幻想文学しておきながらも自分の自意識の高さが滲み出ちゃってるのがやはり太宰…、なのかな。
梶井基次郎の「交尾」は、なんか独特だったな…上手く言えないけど…。
宮沢賢治の「注文の多い料理店」は教科書以来読んだ!けどやっぱり何度読んでも怖いな…童話っぽいのが逆に怖い…。
泉鏡花の「蛇くひ」は現代語訳めっちゃ助かりました…泉鏡花とかほんと不勉強なもので原文だと全然読めない…。これも面白かったな…。
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【中島敦「山月記」】
虚栄心を捨てきれず、ついに人の姿からトラの姿に変わった男の、人としての最後の対話。
中島敦はやはり文体がかっこいいなあ。
【小川未明「牛女」】
牛のような女がありました。ひとりで息子を育てておりました。
牛のような女が死んだあと、息子は村人たちに育てられました。
死んだのちも息子を心配する牛女は、村から遠くに見える山に牛の姿を現して息子を見守り、
そして息子が村からいなくなった後は、心配して道に佇むその姿を村人たちは見るのでした。
【芥川龍之介「馬の脚」】
あなたは間違えて死んだようですね。死後の役所だって間違いは犯します。
では現世に戻しましょう。
しかし死後3日間も経っているので、体の腐敗が始まっています。
ちょうど馬が死んだので、その脚で我慢してください…。
【与謝野晶子「お化けうさぎ」】
おや、へんなうさぎがいるよ。きっとタヌキが化けているのでしょう。
-うさぎさん、あなたの目はどうしてタヌキのぐるぐる目なのですか?
-変ですか?では赤い目に直します。
-うさぎさん、あなたのしっぽは黒くて長すぎませんか?
-変ですか?それでは白くて短いしっぽにします?
-うさぎさん、あなたの後ろ脚は短すぎませんか?
-変ですか?これならどうでしょう?
-うさぎさん、あなたは本当はたぬきさんでしょう?どうしてうさぎに化けているのですか?
-だって「かちかち山」のお話で、狸は悪い、兎は良いって言われるから、だから兎になりたくなったんです。
-そんなことはありませんよ。善い行いをすればきっと神様は見てくださるし、私たちも狸であるあなたを可愛がりますよ。
-本当ですか?それなら狸に戻ります。
【坂口安吾「関山」】
いたずら狸は徳の高い老僧の元で修行をした。
老僧の死後、狸に戻らず僧としての修業を続ける…。
【太宰治「尼」】
寝ている僕のところへ小柄な尼が訪ねてきた。
妹だね、お入りなさい。
尼はお伽噺を語り始める。
そして僕は気が付く。
僕に妹などないではないか。
そしてひどく生臭い阿弥陀如来さんが僕の部屋の前に…
【梶井基次郎「交尾」】
「その一」
夜のベランダから見た二匹の猫の抱き合い。抱き合ったまま動かない猫は、男女の痴態を思わせた。
「その二」
私は一度河鹿を見てやろうと思った。
自分は石だと念じながら河で大人しく見ている。
雄の熱情的な鳴き声。そして雌の元に辿り着く。
世にも美しいものを見た気持ちでしばらく私は瀬を揺るがす河鹿の声の中に没していた。
【宮沢賢治「注文の多い料理店」】
子供の頃さら~っと読んだだけで久しぶりの再読。
子供のころは怖さも感じていたけれど、今は面白い~なんか怖いところが可愛い~などと思ってしまった。
【泉鏡花「蛇くひ」】
原語と現代語訳両方載っています。
施しをしないと蛇をけしかける乞食の一団”応”(「おう!」と呼びかけあうことから)
応にとっての御馳走は爬虫類たちだ。捕まえたばかりの蛇を窯に投げ入れ、茹であがった肉をムシャムシャ喰うさまは身の毛もよだつばかりだ。
彼らは親分の掛け声一つで痕跡も残さず去る。彼らがいた名残は子供たちの歌う童謡に残っている。
都会の皆さん、疑うなら田舎へ行ってみなさい。そしてその童謡を歌い、市民に「応はどうしました?」と聞いてごらんなさい…
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解説で『文豪ストレイドックス』について触れてあります通り、関連している文豪の作品が多し。小川未明以外?かな。
<収録作品>
山月記/中島敦
牛女/小川未明
馬の脚/芥川龍之介
お化うさぎ/与謝野晶子
閑山/坂口安吾
尼/太宰治
交尾/梶井基次郎
注文の多い料理店/宮沢賢治
【幻妖チャレンジ!】
蛇くび/泉鏡花
編者解説
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古今の文豪が手掛けた怪談を、「獣」をテーマにまとめたアンソロジー。
中島敦『山月記』、小川未明『牛女』、芥川龍之介『馬の脚』、与謝野晶子『お化うさぎ』、坂口安吾『閑山』、太宰治『尼』、梶井基次郎『交尾』、宮沢賢治『注文の多い料金』、泉鏡花『蛇くひ』の9作品。
『怪談えほんシリーズ』の編者でもある東雅夫さんの編であり、表紙も気に入ったのでこの本を手に取った。
編者解説に『われわれ人間の内なる獣性』とあるように、かつて獣であった人間が、如何にして再び獣性を呼び起こしてしまうのか、ということを考えてしまう。
特に『山月記』は自分の内側にある欲望や自尊心の恐ろしさを説いていて、高校生のときに教科書で読んだような記憶は朧気にあるけれども、今こんなに沁み入るとは。
開いたときに、ルビと注釈の多さに「うお……」となるけど、徐々に慣れる。
編者解説では収録作家と登場人物の共通性から『文豪ストレイドッグス』にも触れていて、今どきだなぁ、とも感じる(2016年初版)。
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「『文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション』第二巻のテーマは「獣」! 虎に始まり、牛、馬、兎、狸、象、猫、蝙蝠、山猫......身近な小動物や家畜から、日本には棲息していない大型の野生動物まで、さまざまなケモノとわれわれヒトにまつわる妖しくも不思議な物語を蒐めました。中川学の妖しくもユーモアあふれる絵にも注目です!」
(汐文社HP)
【収録作品】
中島敦「山月記」
小川未明「牛女」
芥川龍之介「馬の脚」
与謝野晶子「お化うさぎ」
坂口安吾「閑山」
太宰治「尼」
梶井基次郎「交尾」
宮沢賢治「注文の多い料理店」
【幻妖チャレンジ!】
泉鏡花「蛇くひ」