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今日、短い午睡から目覚めたとき、〈顔のない男〉が私の前にいた。
…でもそのときは紙がどこにもなかったから、あなたを描くことはできませんでした」と私は言った。私の声も同じように抑揚と潤いを欠いていた。「そのかわり代価として、あなたにペンギンのお守りを渡しました」
私は戸惑った。「しかし、急にそう言われても、ぼくはまだ顔を持たない人の肖像というものを描いたことはありません」
「待ってください。あと少しすれば-」
男は帽子をかぶり直し、また顔を半分隠した。「いつか再び、おまえのもとを訪れよう。そのときにはおまえにも、わたしの姿を描けるようになっているかもしれない。そのときが来るまで、このペンギンのお守りは預かっておこう」
そして顔のない男は姿を消した。
いつかは無の肖像を描くことができるようになるかもしれない。ある一人の画家が「騎士団長殺し」という絵を描きあげることができたように。しかしそれまでに私は時間を必要としている。私は時間を見方につけなくてはならない。
その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの山の上に住んでいた。
その家に越して最初にやったのは、安価な中古車を手に入れることだった。それまで乗っていた車は、少し前に廃車処分にしていたので、新たに車を購入する必要があった。地方都市では、とりわけ山の上に一人で住んでいるような場合には、日々の買い物をするのに車は必需品となる。小田原市郊外のトヨタの中古車センターに行って、格安のカローラ・ワゴンを見つけた。セールスマンはパウダーブルーと言ったが、病気をしてやつれた人の顔のような色合いの車だった。
雨田政彦 美大でクラスが同じ
雨田具彦(ともひこ) 父親 高名な日本画家 認知症
妻と別れてその谷間に住んでいる八ヶ月ほどのあいだに、私は二人の女性と肉体の関係を持った。どちらも人妻だった。…彼女たちと肉体関係を持つことは、道路でたまたますれ違った人に時刻を尋ねるのと同じくらい普通のことのように思えた。
その次に関係を持ったもう一人の人妻は、幸福な家庭生活を送っていた。少なくてもどこといって不足のない家庭生活を送っているように見えた。そのとき四十一歳で(だったと記憶している)、私より五歳ほど年上だった。
肖像画家 結婚 独立
そんな自分自身に対して、どこかで私は見切りをつけるべきだったのだろう。何かしらの手を打つべきだったのだろう。しかし私はそれを先送りにし続けていた。そして私より先に見切りをつけたのは妻の方だった。私はそのとき三十六歳になっていた。
その夜の七時までに、私は身の回りのものをビニールの大きなジムバッグに詰め込み、赤いプジョー205ハッチバッグの荷台に積み込んだ。
「ねえ、私にもひとつだけお願いがあるんだけど」と彼女は言った。「もしこのまま別れても、友だちのままでいてくれる?」
「さあ、どうだろう」と私は言った。それ以上の言葉は見つからなかった。たぶんそこに立ったまま一週間考えても、言葉は見つけられなかったはずだ。だからそのままドアを開け、外に出た。
私が初めて妻に出会ったのは、三十歳になる少し前だった。…それなのに私は一目見ただけで唐突に、まるで雷に打たれたみたいに彼女に心を奪われてしまった。どうしてだろう?その原因に思い当たるまでに数週間がかかった。でもあるときはっと思い当たった。彼女は、死んだ妹のことを私に思い出させたのだ。とてもありありと。
私はそのままプジョーを運転して東北地方を縦断し、東京まで戻るつもりだったのだが、国道六号線のいわき市の手前でついに車の寿命が尽きた。
…車を処分してもらうお礼に、テントと寝袋とキャンプ用品はその修理工に進呈した。最後にプジョー205のスケッチをしてから、私はジムバッグひとつを肩に担ぎ、常磐線に乗って東京に戻った。
広尾のマンション
…そして窓際に立って、降り続く外の雨をしばらく眺めた。オレンジ色の東京タワーがその奥にほのかに浮き上がっていた。それから部屋の鍵を郵便受けに落とし、車を運転して小田原に戻った。おおよそ一時間半の道のりだ。でもまるで日帰りで異国に行って戻ってきたみたいに感じられた。
小田原駅前のカルチャー・スクール 絵画教室
「どうしてかな。こんなすてきな身体なのに」と私は言った。
彼女は小さく肩をすくめた。「結婚して十五年以上になるし、子供も二人いるし、もう新鮮じゃなくなってしまったのよ」
「ぼくにはとても新鮮に見えるけど」
「ありがとう。そう言われると、なんだかリサイクルでもされているような気がしてくるけど」
「資源の再生利用?」
「そういうこと」
「とても大切な資源だよ」と私は笑った。「社会の役にも立つ」
彼女はくすくす笑った。「正しく間違えずに仕分けさえすればね」
そして我々は少し時間を置いてから、もう一度資源の入り組んだ仕分けに意欲的に取りかかった。
私は天井を見上げ、ユズのことを考えた。彼女もどこかでほかの誰かと、これと同じことをしていたのだろうか?
…もしそんなところを写真に撮ったら、大半の女性は嫌がるだろうし、そういうことをする相手に嫌悪感や警戒心を抱いたりもするだろう。しかしそれが素描であれば、そしてうまく描けていれば、彼女たちはむしろ喜んでくれる。そこには生命の温かみがあるからだ。少なくても機械的な冷やかさはない。
私は三十六歳になっていた。そろそろ四十歳に手が届こうとしている。四十歳になるまでに、なんとか画家として自分固有の作品世界を確保しなくてはならない。私はずっとそう感じていた。四十歳という年齢は人にとってひとつの分水嶺なのだ。そこを越えたら、人はもう前と同じではいられない。それまでにまだあと四年ある。しかし四年なんてあっという間に過ぎてしまうだろう。
私がその「騎士団長殺し」という不思議な題をつけられた雨田具彦の絵を発見したのは、まったくの偶然の成り行きによるものだった。
幾重にも重ねられた茶色の包装紙の下には、さらしのような柔らかい白い布でくるまれた簡易額装の絵があった。私はその布をそっとはがしてみた。重い火傷を負った人の包帯をは���すときのように、静かに用心深く。
地面に開いた穴?四角いマンホール?
モーツアルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」
インターネットの株取り引きで儲けた人間や、IT関係のアントレプレナーたちが、いくら金が余っているにせよ、たとえ経費で落とせるにせよ、自分の肖像画を描かせて備品としてオフィスの壁に掛けたがるとは私には思えなかった。その多くは洗いざらしのジーンズとナイキのスニーカー、くたびれたTシャツにバナナ・リパブリックのジャケットという格好で仕事をし、スターバックスのコーヒーを紙コップで飲むことを誇りとするような若い連中だ。
銀色のジャガーのスポーツ・クーペ 免色渉
Blessing in disguise.
妹は中学校からの帰り道、西武新宿線の駅の階段を上っているときに意識を失って倒れ、救急車で近くの救急病院に運び込まれた。…そして次に顔を合わせたとき、彼女はもう呼吸することをやめていた。大きな目は永遠に閉じられ、口は何か言いたそうに小さく開かれていた。その膨らみ始めたばかりの乳房はもうそれ以上膨らむことをやめていた。
…私としては、そんな狭苦しい箱の中に妹の華奢な身体を詰め込んでほしくなかった。…でも実際には彼女は小さな、馬鹿げた棺の中に収められていた。まわりに飾られているのは、鋏で切られた花瓶にいけられた不吉な白い花ばかりだった。狭い部屋を照らしているのは色を抜かれたような蛍光灯の光だった。天井に埋め込められた小さなスピーカーからは、オルガン曲が人工的な音で流れていた。
私は彼女が焼かれるのを見ていることはできなかった。…
もうひとつ妹の死が私にもたらしたものがある。それは極度の閉所恐怖症だ。…
また私は人並み以上に大きな乳房を持つ女性に対して、怯えに似た感情を抱くようになった。それが十二歳で死んだ妹の、膨らみかけた乳房と関係しているのかどうか、正確なところはよくわからない。しかし私は昔からなぜか小振りな乳房を持った女性に心を惹かれたし、そのような乳房を目にするたびに、それに手を触れるたびに、妹の胸の小さな膨らみを思い起こすことになった。
祠
…それから彼女は急に立ち上がり、履いていた黒い上品なパンプスを放り出すように脱ぎ捨て、ワンピースの下に手を入れて手早くストッキングを下ろし、下着を下ろした。そしてもう一度彼の膝の上に乗って、片手を使って彼のペニスを自分の中に導き入れた。それは既に十分な湿り気を帯び、まるで生き物のように滑らかに自然に活動した。すべては驚くほど迅速におこなわれた(それもどちらかといえば彼女らしくないことだった。ゆっくりとした穏やかな動作が彼女の特徴だったから)。気がついたときには、彼はもう彼女の内側にいて、その柔らかい壁が彼のペニスをそっくり包み、静かに、しかし躊躇なく締め上げていた。
それは彼が彼女とのあいだでこれまで経験したどのようなセックスとも、まったく違っていた。
…彼女の動きは時間を追ってますます大胆にダイナミックになっていった。彼女の求めることを妨げないようにする以外に、彼にできることは何ひとつなかった。そしてやがて最終的な段階がやってきた。彼が耐えきれず��射精すると、それに合わせて彼女は異国の鳥のような声を短く上げ、彼女の子宮はそのときを待ち受けていたかのように、精液を奥に受けとめ、貪欲に吸い取った。暗闇の中で自分がわけのわからない動物に貪り食われているような、そんな混濁したイメージを彼は持った。
…それが彼女に会った最後だった。
結婚 出産 手紙
上田秋成 春雨物語 造園業者
私が家を出ていくとき、妻が最後に口にした言葉を忘れることができなかった。…「さあ、どうだろう」としか答えられなかった。そしてそれが私が彼女に面と向かって口にした最後の言葉になった。最後の言葉としてはずいぶん情けないひとことだ。
肖像画の完成
「早川漁港の近くに、昔から親しくしているフレンチ・レストランがあります。その店の定休日に、コックとバーテンダーをこちらに呼びましょう。腕の確かな料理人です。…」
でもその長い旅行のあいだ、ただ一度だけ生身の女性と性交したことがある。わけのわからない不思議な成り行きで、私はその見知らぬ若い女と一夜のベッドを共にすることになった。私の方から求めてそういうことになったわけではなかったのだが。
それは宮城県の海岸沿いの小さな町での出来事だった。
白いスバルフォレスターの男
「いらっしゃいよ」と彼女は私に言った。「せっかくこういうところに来たんだから、セックスをしよう」
…それが宮城県の海岸沿いの小さな町で私が経験したことの一部始終だ。
そのとき私は、居間のソファの上に何か見慣れないものがあることにふと気づいた。クッションか人形か、その程度の大きさのものだ。しかしそんなものをそこに置いた記憶はなかった。目をこらしてよく見ると、それはクッションでも人形でもなかった。生きている小さな人間だった。
「かまうもかまわないもあらないよな。雨田先生はもうおぼろで平和な世界に移行してしまっておられるし、騎士団長だって商標登録とかされているわけじゃあらない。ミッキーマウスやらポカホタスの格好をしたりしたら、ウォルト・ディズニー社からさぞかしねんごろに高額訴訟されそうだが、騎士団長ならそれもあるまい」
…午後六時ちょうどに、黒塗りの大型セダンがしずしずと坂道を上がってきた。それは私に霊柩車を思い出させたが、もちろん霊柩車なんかじゃなくて、免色がよこした送迎リムジンだった。車種は日産インフィニティだった。
「バラライカを」と私は数秒考えてから言った。とくにバラライカを飲みたかったわけではないが、本当になんでも作れるかどうか試してみたかったのだ。
…ウォッカとコアントローとレモン・ジュースを三分の一ずつ使って人はバラライカを作る。成り立ちはシンプルだが、極北のごとくきりっと冷えていないとうまくないカクテルだ。腕の良くない人が作ると、ゆるく水っぽくなる。しかしそのバラライカは驚くばかりに上手につくられていた。その鋭利さはほとんど完璧に近かった。
秋川まりえ 絵画教室の生徒
私はやってきたガール・フレンドに、免色の家での夕食会のことを話した。…彼女は熱心なスポーツ・ファンが、贔屓チームの昨日の試合の得点経過を事細かに知りたがるように、食卓に供された食事の詳細を知りたがった。
騎士団長殺し 1938年にウィーンで実際に起こった暗殺未遂事件をモチーフ
あくる日の午後、私は署名捺印した離婚届の書類を投函した。
…そして日曜日の朝、十時少し前に秋川まりえがうちにやってきた。明るいブルーのトヨタ・プリウスがほとんど音もなく坂を上ってきて、うちの玄関の前にそっと停まった。車体は日曜日の朝の太陽を受け、晴れがましく鮮やかに輝いていた。まるで包装紙を解かれたばかりの新品のように見える。…秋川まりえの叔母がどのようなわけでブルーのトヨタのプリウスを選択したのか、もちろん私には知りようもない。いずれにせよその車は、自動車というよりは巨大な真空掃除機のように見えた。
「ねえ、わたしの胸って小さいでしょう」とまりえは言った。
「そうかな」と私は言った。
「膨らみそこねたパンみたいに小さいの」
前妻からの手紙 白クマのカード
それから私は日曜日に自分が秋川まりえに、離婚後の生活について口にしたことを思いだした。
彼女と最初に性交したときのことをよく覚えている。我々は地方の小さな旅館に行って、そこで記念すべき最初の夜を迎えた。…この女を手放すようなことは絶対にするまいと、私はそのときに堅く心に誓った。それは私にとって、それまでの人生における最も輝かしい瞬間であったかもしれない。ユズをようやく自分のものにできたこと。
ぼくもぼくのことが理解できればと思う。でもそれは簡単なことじゃない。
それは私が秋川まりえに向かって口にした言葉だった。私はタオルで身体の汗を拭きながらそのことを思いだした。
「わたしはドイツ兵のために色彩画を描いている。…でもな、誰がなんと言おうと、わたしが描きたいのはドイツ人たちの家族なんかじゃない。わたしは〈隔離病棟〉に積み上げられた子供たちを、白黒の絵にしたいんだ。やつらが殺戮した人々の肖像画を描き、それを自宅に持って帰らせ、壁に飾らせたいんだよ。つくしょうどもめ!」
画家はこのときとりわけひどく神経を高ぶらせた。
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春樹作品の長編は目次の章タイトルを見ただけでゾクゾクする。今回は章タイトルを全て暗記しながら読もうと思い立ってしまったので、変に肩に力が入って読み終わるまでにすごく時間がかかってしまった。何も考えずにスルスル読むのが一番。
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村上春樹の最新作。
近年は作品の内容より前にお祭り要素だけが独り歩きしているような気がするが(この点に関しては若干引いているw)、読んでみるとやっぱり面白い。
第1部である本書は不気味なモチーフが頻出して、時折、ホラー映画のような印象も受ける。
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タイトルとは大違いな内容だった。
様々な肖像画を書いた主人公は騎士団長殺しという絵画に出会い、その絵に秘められた意味を探していく。
妻と別れ、免色と出会い、人生の転換期を迎える。
秋川まりえの肖像画制作途中で第一部が終了する。
絵ってこういう見方があるんだと教えてくれてる気がする。
比喩が要所要所入っており、センスの良さに脱帽。
第二部がどういう展開になるか楽しみだ。
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色々面白いけど、感想は下巻を読んでから。
いつもながら数々の比喩が出てくるけど、気に入ったのを一つ。
「…彼は穏やかな声で言った。まるで頭の良い大型犬に簡単な動詞の活用を教えるみたいに。」
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集中して読んでたらいきなりしおりの紐が目に入った。メンシキさんの肖像画に使われた雑木林の色なのかな?と思ったり。
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「読んだことが無い村上春樹の長編が読める」という幸せを十二分に噛みしめることが出来て、非常に満足でした。ただ、過去の作品の集大成いう感じも有り、物語の構造や登場人物のタイプについては、過去作品と重なる部分も多かったので、それをマンネリと感じる人もいるかな、と思ったりもした。(下巻の感想に続く)
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非現実?であるのに、読んで行くうちに本当に自分が体感しているような気持ちになれるし、この頭の中で想像している世界は、自分だけのもなんだろうなと思う。例えば、その想像した世界、人物の顏は、あるといえばあるし、ないといえばない。なんだってありえる。しかしそこに確かに存在しているし的な?いや存在してないのか?。
村上さんの小説はいつも人生で一度経験できるかできないかなの経験を、1日で(想像の中で)経験できる。今回もできた。そう言う意味では、これと比べて他の作品の方がおもしろいとかんじるけど、買って損は絶対ないし、満足。完成度も高いのか?その辺はわからん。まぁ疲れるよね。でも賢くなった気分
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17/02/24。
3/14読了。
柚。
免色の双眼鏡→日本画→美術鑑賞用双眼鏡。
上田秋声→春雨物語
免色→『田崎つくる』
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500ページも読んだのに、まだまだ先が読みたいと思える!
発散しすぎず、適度に謎を残したまま、後半に続く!
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2010年の『1Q84』以来約7年ぶりの長編。今回はパラレルではなく、一つの物語が進んでいく。非常にゆっくり、なかなかの牛歩戦術です。
春樹ワールドは変わってませんね、ファンとしては嬉しい限り。パラレルじゃないから続きが気になってもお預け状態にはなりません。
物語としては、静かに、穏やかに暮らす絵描きの主人公を取り巻く環境が変わっていくという話で、第一部ではまだまだこの先が見えてきません。第二部に、期待。
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4章あたりからページを繰る手が止まらなくなった。
雨田具彦が隠していた『騎士団長殺し』という絵、免色という謎の隣人、鈴の音、そしてイデア。
謎めいたものがたくさん出て来てワクワクする。
感想記事
http://utsuyama27.com/killing-commendatore1/
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ここ最近の作品には、何となく外国語訳された姿が透けて見えていましたが、今回は趣が違います
淡々とたくさんの情報が詰まった文章が続きますが、目は滑りません
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『1Q84』以来の村上春樹。正直『1Q84』の内容もほぼ覚えていないし、興味が沸いたかも微妙…でもミーハーな気持ちで買って読み始めてみる。これは癖がなくて読みやすい。途中で騎士団長がイデアとして出てきてからは、あっここからやばい感じかと思ったけどそんなことはない。失われたものによって導かれるストーリーはどこに行き着くのか分からない。だからこそどんどん先に進める。でも進むほどに霧がかかっていく。この霧は取れるのだろうか。それともその霧の中に、失ったものを抱えたままに飲み込まれてしまうのだろうか…
ナチスの話が出てきて少しワクワク感も出てきたし。下巻にも期待。
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時間の洗礼を受けた本を読むのも贅沢なことだけれど、現在の作家の、それも波に乗った渾身の本を、‘今’読めるのも幸せなことだと思うんですよね。
レビューじゃあらないですが。