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Twitterで推薦している人がいたので手に取った一冊。
著者は歴史や文学、美術などに造詣が深く、資料などの下調べも入念にされる作家と誰かの書評で読んだが、ナチス政権下のハンブルクが舞台で日本人は一人も出てこない、それなのにとてもリアリティが感じられた。本の末尾に書き連ねられている参考文献にとどまらず、論文などたくさんの資料にあたられたのだろう。
ハンブルクは商都で、自由都市として自治権が認められていたという背景があり、他のドイツ都市とはナチスへの忠誠心も異なっていたようで、そのあたりの事情にもまったく知識がなく、興味深く感じた。
一方で連合国は大戦末期に容赦なく空襲を行なっており、その記述がなまなましく、痛々しい。
ドイツで敵性音楽であるJAZZにのめり込む若者たちは、小説の始めでは僕には鼻持ちならない感じがしたのだが、ナチス体制への反抗の真摯さ、拷問を受けてもまったく怯まずしたたかに生きていく姿に打たれていくこととなった。
自分がこの時代に生まれていたらどの立場にたったのか?
ナチスに関する映画や小説に触れるといつもそのことを思う。
自分がアイヒマンの立場に立ったら、いや、今の自分の中にアイヒマンはいないのか?
そんなわけない、と断言はできないと今も思っている。
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イヤー,面白かったなあ.
第2次大戦中にハンブルグでジャズにハマり無軌道(というのは言いすぎか?)に暮らす少年達,,,,という前半を経て,後半は連合軍の反撃も始まって敗戦が迫り,だんだん悲惨な状況に.しかしその「悲惨」は,戦時下に生きる少年達(絶対に戦場には行きたくない!)の逞しさを描くことによって,逆に浮き彫りになるような感がある.
いや,本当に逞しくて痛快だった.
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『吸血鬼』の隣にあったので、いっしょに手に取った。しかも副題にIt Don't Mean A Thingちう私の好きなナンバーが書かれていて抗えなかった。副題全て超有名曲で(まぁ、私の好きな曲ばかりでもないが)、久しぶりにCD引っ張り出すきっかけになりました。ストーリーは1940年前後のドイツ、少しばっかし非行にはしっているというか、ちょっとワルの方向のええとこの少年たちのこと。ここらへんの事は奥が深いというか、根が深いので難しいですが、さもありなんな感じにまとまってます。スタンドバイミーとかランブルフィッシュ的な映画をジャズミュージカルにしたような感じの画像と音が脳内で自動再生されるので、少し煩いといえば煩いし、そこが良さといえば良さかもしれない。丁寧な作品ではある。
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佐藤亜紀ってやっぱりすごいな、としみじみ思わされる1冊。重さと軽妙さの加減が絶妙。エディが、高尚な思想信条なんか知るか、ただただ自分の美学に合わないから絶対に従わないって嘯いて圧倒的な暴力にボロボロにされても小馬鹿にしたような顔で笑って時代と国に対する強烈な抵抗を貫き通す感じがたまらなかった。ナチスなんか嫌いだ、奴らの野暮ったさに耐えられないって言っている本人がナチスの幹部だったりその息子だったり、なんかすごいリアルでね…。エディの両親の優雅なる最期のシーンが、自分の生きてきた理想と現実の乖離に耐えられなくなって逃避した感じ、妙に生々しくて、それでもエディが両親を葬って、工場の経営を引き継いでって言うところもバランスすごかった。この人ほんとにヨーロッパの悪ガキ書かせたら絶品。素晴らしい作品でした。ところで主人公がやたらボリボリとペルビチンというタブレットを噛んでるので、なんだろうこれはフリスク的なものなんだろうか、でも過剰摂取で調子悪いとか死ぬとか言うてるし、と思ってたら、これ覚せい剤なんだそうな。知らんかった。
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ドイツ人がジャズ好きなのはなんとなく知っていた。山下洋輔トリオがドイツや東欧でツアーを行ったりしているからだ。でも、なぜドイツで?ドイツといえばクラシックの本場。しかも、この本の舞台であるハンブルクはブラームスの生誕の地。ビートルズもまずここからスタートしたというから、新し物好きの気風も強いのかな?なにしろ、ドイツ第二の都市で、エルベ川から北海に繋がる港湾都市でもある。中世からハンザ同盟の中心地として栄華を極めてきたドイツ最大の商都。そんな豊かな街で暮らす、セレブのお坊ちゃんたち。第二次世界大戦のさなか、ギムナジウムに通う少年たちは〈頽廃音楽〉ジャズにドはまり。夜な夜なクラブに通っては、スウィングに酔い痴れ、タバコをふかし、酒を飲み女の子といちゃつく。
ナチの制服を「糞ダサい」と心底バカにして、ユーゲントを仲間に引き入れゲシュタポを出し抜く。やがてジャズは〈敵性音楽〉と呼ばれ、レコードは入手不可能になる。それでも少年たちはとんでもないビジネスを思いつき、それを実行する。
なんと享楽的で頽廃的な青春。しかし、戦争は容赦なく彼らの日常をぶち壊していく。ハンブルクがドイツで最大の空襲を受けた都市、というのは恥ずかしながらこの本で知った次第。戦争、ダメ、絶対。
各章は古き良きジャズのヒットナンバーに由来する。今ならもれなくYouTubeで聴けるものばかり。いやあ、いい時代になりましたね。音楽好き、ジャズ好きには掛け値なしでお勧めしたい。佐藤亜紀の文章が読みやすいのにもびっくり。
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ナチス全盛、まだホロコーストも本格化される前のドイツ ハンブルク。民主主義を象徴する頽廃音楽であるスウィングジャズを愛する少年エディと仲間たち。彼らはヒトラーユーゲントなどのナチのシンパを巧くかわしながら、音楽に合わせてステップを踏む暮らしをしてきた。
しかし、ナチスが勢力を伸ばし、ユダヤ人への圧政が増し、更には英米の抵抗にあって形勢が逆転するにつれて、強い締め付けを受けることになる。
あるものはユダヤ人というレッテルを貼られ、地下に潜る。あるものは家を追われ、家族と離れ離れに。そして、愛する人の消息も見失う。
それでも、圧迫に抗いながら、スウィングし、ステップを踏み続けようとするが、やがてその圧力はエディにも伸びてくる…
前半はエディがのしかかるナチスの圧力をすり抜けて、クレバーに生き抜く姿を応援し、中盤からはすり抜けきれず、仲間がナチスの圧力の犠牲になっていく姿に焦燥を覚える。
しかし、これを日本人の作家が独力で書いたということに驚嘆する。まるで、ドイツの作家が書いた小説の翻訳と聞いても疑わないほど、街の様子や登場人物が活き活きとリアルだ。
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佐藤亜紀さんらしからぬタイトルだなぁと思いはしたものの、やっぱりタイトルからは想像もしなかったお話だった。
大戦下のドイツ、ハンブルク。ブルジョワな若者たちの放蕩な行動とその行く末を、敵性音楽であるジャズに託して、また冠して、物語は進んでいく。序盤はまるでアメリカングラフィティのような世界観なのに、その背景には常に戦争とナチが横たわり、とうとうやってくる中盤のハンブルク爆撃以降は目を覆わんばかりの凄惨な描写が続く。時代に翻弄される若者を、佐藤さんは描き続ける。いや、たまたま読んだものがそうだっただけかもしれないけれど。
それにしても著者の膨大な知識と主人公への憑依力はとにかく凄まじい。物事のディテールは微に入り細に渡り、登場人物は誰からも創作されておらず、各々が各々で各々の人生を生きている。小説のタイプはいろいろあるけれど、その中のひとつの頂点にいるのは間違いないと思わずにいられない稀有な作家であると思う。
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とにかくカッコいい!
ナチスドイツ下でのブルジョワの若者。自由を死守するために最大限に頭を回転させる。自分の心情(自由)に合わないモノに対しては絶対に従わず、圧倒的な暴力でボロボロにされても小馬鹿にしたような顔で笑って時代と国に対する強烈な抵抗を貫き通す。
佐藤亜紀氏は、悪ガキの生き生きした自由奔放さを書かせたら天下一品だ。
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戦時下ドイツの不条理、残酷、冷徹な日常を生きる若者たちのようすが、当時若者たちに浸透しつつあったジャズとともに描かれている。
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最高にイカれた状況下、最高にイカした道をいくスウィングボーイズ。
毎度のことながら日本人が日本語で書いてるのが信じられない、ストーリーも文章もさすがの佐藤亜紀。凄い。
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ナチス政権下のドイツ・ハンブルクで暗躍するスウィング青少年たちを描いた青春譚。
まるでジャズの即興のように、1940年前後の街を駆け抜ける鮮やかな筆力に度肝を抜かれた。面白い!
そしてこれを日本人が書いたの?翻訳じゃなくて?と戸惑った。
この取材力と知識量は何…と呆然。
物語に物理的な力があるとしたら、たぶん読了後に昏倒して三日は寝込んでいると思う。