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元刑事裁判官による、裁判官人生記。
刑事裁判の妙味と難しさ、裁判員裁判への思い、裁判所等での執務風景などが、著者自身の具体的経験を基に語られており、法曹関係者や法学部生のみならず、一般国民にとっても興味深い内容ばかりである。
裁判官に対して抱かれがちな「堅苦しい」イメージとは裏腹に、とても軽妙な語り口で、すいすい読めてしまう。
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裁かれるのも「人」なら、裁くのも「人」のはず。しかし、私たちにとって裁判と裁判官は、いまだ遠い存在だ。有罪率99%といわれる日本の刑事裁判で、20件以上の無罪判決を言い渡した元東京高裁判事が、思わず笑いを誘う法廷での一コマから、裁判員制度、冤罪、死刑にいたるまで、その知られざる仕事と胸のうちを綴る。(2016年刊)
・第一章 裁判は小説よりも奇なりー忘れがたい法廷での出会い
・第二章 判事の仕事ーその常識、非常識
・第三章 無罪判決雑感
・第四章 法廷から離れてー裁判所の舞台裏
・第五章 裁判員と裁判官ー公平な判断のために求められるもの
・おわりに
本書は、岩波書店の「世界」に連載したコラム「裁判官の余白録」をまとめたものであるという。
読み始めて、文章の平易さ、内容の面白さ、著者の率直な心情の吐露など、魅力が満載で、一気に読みあげた。交流のある裁判官とのエピソードもあり、興味深いものとなっている。本書は、お勧めの1冊である。
以下、備忘録として、
p3判決書の起案の話では、内容を、まったく直さない裁判長の話が出てくる。この裁判長は、合議でも自分の意見は、最後まで言わないのだという。自分の意見は殺して、合議体として最高の合議結果と判決を練り上げようとしたということであるが、なかなか出来ることで無い。
p8では、偽証の問題を取り上げている。日本では、検察がよっぽどの事が無い限り起訴しないという。p10「それに、検察は、警察官の偽証をまず起訴しない」のだという。「警察官の偽証は闇から闇へ葬られる」とは恐ろしい話であるが、日本の風土の問題かも知れない。
p46では「法服の王国」(岩波現代文庫 黒木亮著)が取り上げられている。「かなりのフィクションも含まれているが、最高裁判所を中心とした戦後の司法の大きな流れ(それも暗部)はほぼ正確に摑んでいると思う」という感想は貴重である。著者が直接聞いたという、矢口浩一の言葉のことばなど、本書には、貴重な証言がちりばめられている。
p58高度に専門的な問題をどの様に判断するのかということも面白い。法律判断と技術理解は別ということに納得する。
p81無罪判決に勇気はいるのかという議論を取り上げている。著者は、この議論を「ためにするものである」としているが、そうであって欲しいものである。
p108では、最高裁判所調査官について語られている。著者の「内示を受けたときは、本当に、かけねなしに、嬉しかった」、「裁判官であれば、正直、一度はあこがれるポストなのである。」という言葉は、ほほえましい。職業人として、己の能力を買われ、力を振るうことが出来るのは、身の出世とは別に、幸せなことであろう。著者は、東京地裁の部総括判事についても、裁判官の檜舞台としているが、どんな仕事であっても、「気力、体力、実力、能力が一番充実した時期」に打ち込むことが出来れば、「その期間が人生で最も充実した時間なのである」という言葉には含蓄がある。
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軽い語り口で、一人の刑事裁判官としての物の考え方を示しておられる。
弁護士としては、一般の方々には無論、若い刑事裁判官に読んで欲しい。先生の授業そのまま、人柄のよくわかる本である。
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山田洋二監督の帯文「こんな裁判官がいる限りこの国の法曹界を信じたい」に惹かれ、手に取った。
元高裁判事の、雑誌連載をまとめたエッセイ。
法廷内での出来事とか、法曹界の課題問題を軽妙に綴っている。
その中で著者は、誤審判決に絡み、人を裁くことの意味を問い、人を裁くということは、人に許された仕事なのか、本質的に許されない業なのではないか、と逡巡する。
再審無罪までの時間の長さにも、裁判所の責任は、と問う。
監督の推薦文にも納得。
裁判官の判決文にふれ、「名文とは、文章の形ではなく、その中身であり、その訴えかける力の強さだと知る。そういう意味での名文を裁判官は目指すべきである。」と、述べている。裁判官ばかりでなく、一般の人が文章を書く時にも参考になる心構えだと思う。
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よく知らない裁判官の世界。裁判官が書いたものを読むのは初めてかも?
堅苦しい話はほとんどなくて、裁判官が世間からどうみられているか、それなりによく認識されていることに多少の驚きあり。。。彼らは、どのようにその世間の見方を知るのだろうかとか。
紹介されてた本が軒並み面白そう。
『法服の王国』『汽車ポッポ判事の鉄道と戦争 』『青春の柩―生と死の航跡』『裁判官の書架』『落日の宴』
法服の王国だけ、意外にも黒木亮さん作だったので、買ってみた。
厳密さは違うけど、内部監査の独立性や「保証」の難しさが、裁判所、裁判での事実認定と重なってみえて、妙な親近感がわいてきました。
・訓戒は無意味なのか
→仕事での注意も無意味だろうか。信念に近い行動か。
・自由な議論とは、何を言っても、人事上の不利益を加えないということである。
・正解を得られない問題を考え抜くことは大切。これにより一種の謙虚さが生まれる。
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身の処し方について考えさられた。理想と現実。人生の静寂。私は浅田次郎「壬生義士伝」の吉村の純粋さに共感を覚えたことを思い出した。
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藤沢周平「海鳴り」「玄鳥」「蝉しぐれ」
学者は締め切りになってから書き始める
人間は他人の良いところを学べず、悪いところばかり真似をすることになる。
司法権の独立は自浄作用を前提とする
まず余暇を入れてその残りで仕事をする。そうでないと仕事に追いまくられる。
無期懲役では自由に手紙を出せない、死刑なら出せる。
「若き志願囚」「偽囚記」
国民は少年であることを刑を重くする要素と考えている。
少年の大半は更生している。少年法の理念。
被告人から距離があるほど嘘を言っていると思いやすい。世間は罪人と判定しやすい。弁護人は無罪を信じやすい。
人質司法。
無実と身柄についての感覚がない。
裁判員裁判事件と検察独自事件だけが可視化の対象。
録・録=録音録画
人着=人相着衣
見せしめへの過度な期待は常に重罰を招く。しかし目的を達せられない。刑事裁判の限界。
冤罪
無罪となったのだから冤罪はない、という冤罪不存在論。
制度リスク論=不可避の現象である=冤罪不可避論。
刑事学者はこの2つが主流。
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広報誌「図書」に約3年間連載されていたエッセイをまとめたもの。有罪率99%と言われる刑事裁判で20件以上の無罪判決を言い渡した元東京高裁判事の、一般には知られていない裁判官の仕事、生活、信条を述べる。
久しぶりに「参考になった」線をたくさん引いた。裁判官が関わらない人生の三大運動は、労働運動と学生運動と選挙運動らしい(私は全て関わった)。その他、裁判官の不足している部分を、原田氏は非情に鋭く意識している。それは、短期間だけど米国留学、新聞記者研修、弁護士経験などを経験し、きちんと自分の血と肉として咀嚼している著者だから出来る事なのだろう。だから、法ではなく人情を重視する藤沢周平や鬼平などを愛読書であると公言し、重要判決の前日には藤沢周平を再読すると、告白したり出来るのである。
エッセイということもあって、裁判制度の批判はかなり緩やかになっている。多くは(悪い部分はあってもそうではないことを)「信じたい」という風に結ばれている。法律家だから、そういう表現になるのだ。正面から批判しようとすれば、延々と長い「論文」にならざるを得ない、と自らを律しているからだろう。だからこそ、ソフトな言い方で述べられている裁判制度の負の部分は説得力があると、私は思う。
曰く、
「刑事裁判官は、微妙であると何かと悩んで検察寄りの判断にコミットする傾向がある」(48p)
「裁判官に合理的疑いを超えるとの心証を得させなければ、検察官は立証を尽くしたとは言えないから、無罪にすればよいのである。最近、原子力発電所の運転差止めの仮処分をめぐって、裁判官は原子力のことはわからないのだから、専門家の意見に従うべきだという論調もみられるが、前記の観点からすれば、この見解には疑問がある」(60p)
「勇気がいるというのは、無罪判決を続出すると、出世に影響して、場合によれば、転勤させられたり、刑事事件から外されたりするのではないかということであろう。これも、残念ながら事実である」(82p)
「刑事裁判における上記の不正議(冤罪事件のこと)について、法務検察と裁判所において、再発防止策を具体的に検討したふしはない。それどころか、そのような検討すら、司法権の独立に反するといわんばかりである。しかし、司法権の独立は、当然ながら、自浄作用を前提とする。司法権の内部で、自らの判断で問題点を解決するから、他の二権(国会、内閣)による介入を拒否することができるのである。それをしないでおいて、裁判干渉のみを批判する資格はないように思われる」(95p)
「(2016年刑事訴訟法改正は)可視化をある程度認める代わりに、捜査権の強化を図ることが真の狙いであったのだろう。どだい、冤罪防止という観点は最初からなかったとすらいえる」(168p)
まだだくさんの論点を示していたが、長くなるのでここまでとする。
2017年5月19日読了
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功成り名を遂げた一丁あがりの元裁判官のジイさんが、自分の人情深さを自慢した本としか思えないのだが、なにか憎めないのは著者のキャラクターによるものかも知れない。
まあ一応知らない世界の一面を世に知らしめる意味はあるし、もう少し厳しい意見も開陳できれば新書としての価値もあるのにと思えた。
しかし本書は簡単に読めるので頭休めに!と言っては失礼か。
2017年6月読了。
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どうせ裁かれるなら、こういう裁判官に裁かれたい。そんな気持ちにさせてくれるエッセイです。
裁判官は世間知らずというけれど、逆に人間味があり過ぎるような気もします。裁判官の懊悩も垣間見れて、裁判官の魅力が分かる一冊です。
#読書 #読書記録 #読書倶楽部
#裁判の非情と人情
#原田國男
#2017年28冊目
#裁判官 #弁護士
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裁判官を退官された著者がその仕事人生をエッセイで振り返られています。裁判官としての自分はこんな人なんですよということが紹介されていて面白く読ませていただきました。また他の裁判官のことについても少し話されていて、この仕事に就く人の日常といったものを知ることができます。仕事とプライベート、新人時代のことなど、今まで特殊な世界だと思っていたところが色々と分かって「へえー」と気楽に楽しめる内容になっています。
裁判官の主とした仕事である判決を出すということについては、現状の問題点含めて考えさせられます。こんなこと考えながら苦労されていたのだなということが分かって、裁判に対する気持ち的な理解を持つことができたとも思います。
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元東京高裁判事が雑誌に連載した法廷エッセーを集めたもの。裁判官や検事は普通、一般人との交流も制限されているのでなかなかナマの声を聞く機会もないが、裁判官にも迷いや悩みがあることがよく分かる。
・裁判の事実認定が難しいのは、真実は神のみぞではなく、目の前の被告人が一番よく知っているというところにある
・人を裁くというのはどういうことなのか、間違った判断を下したらどうすべきなのか。こういった難問をいくら考えても正解は得られないが、正解を得られない問題を考え抜くこと自体が重要である。一種の謙虚さが生まれるからだ。自分は人を裁く資格などないのかもしれないと自覚することで自分の判断が専横になることを防ぐことができる
・死刑の場合は主文を最後に読む。最初に読んで被告人が失神でもしてしまうと言い渡し手続きが未完になってしまうからだ。他にも判決文は「被告人を」で始まると有罪だが、「被告人は無罪。」というように「は」になると無罪。判決文では「被告人を無罪にする」という言い方はしない
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岩波とはいえ語り口も内容もエッセイと言えるもので、さらさらと読める。○○さんはすごい人である、いろいろ教わった大先輩である、などと特定の個人をほめるのが頻繁に出てくるのがちょっと引っかかるが、まぁ、エッセイならやむなしという感じ。
著者は「裁判官は世間に誤解されている」と思っているようだけど、今のところ縁のない私からすればほぼ何のイメージも持っていないので誤解のしようもない。そういう点では、(当然だけど)裁判官にもいろんな人がいるんだなと分かったし、書類読みなどものすごく地味で単調な作業の上に裁判は成り立っているんだなと分かって興味深かった。
無罪判決や死刑に対する思いを述べたところはいろいろ考えさせられる。事実を本当に知っているのは被告人だけなのに、それを裁く第三者が存在することの重さというか意味というか・・・正解はないけれど考え抜くことで「一種の謙虚さが生まれる」というのは肝に銘じておきたい。
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元・判事、現在、客員教授の方の雑誌定期掲載記事のまとめ本。執筆時点で72歳(2017年明け前後)なので、戦中生まれだが戦中派ではない、という世代。
中身は、"堅苦しい"ものではないが、"砕けたもの"でもなく。裁判傍聴記の類の書籍とは、筆者の立場も責任も違うので比較するまでも無く、その点では全般に"堅い"。
筆者自身も"ガチガチの堅物"ではなさそうだが、はやり堅実なお人柄が全体に色濃く出ている。
筆者的には"柔らかく"を意識されているようだが。
さすがに旧仮名遣いなどは無いが、やはり年齢層等の文章で、良く言えば落ち着いている。悪く言えば、まあ当たり前なのだけれど堅くて眠くなる面も少なくない。
"判事"と言われて、その人物像のステレオイメージが沸くか?、と聞かれれば"さあ??"というのが本音だった(正直、余り関心が無かった)ので、筆者を含めてその知人・関係者達の記載には面白い部分もあったか。
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テレビや新聞のニュースでしか知り得ない事件の
裁判をする人たちのことは、そうなのかと知らないことばかり
未知の世界と言っていいのか
ちょっとドラマで見た感じともリンクしているのか
とにかく、興味深く、驚いたり安心したり
読んで楽しかった?というか良かったなと思った