紙の本
舞台描写の勝利
2017/03/11 15:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nawade - この投稿者のレビュー一覧を見る
第23回電撃小説大賞金賞受賞作品。
まず、18世紀のロンドンという舞台設定とそれが背景としてきっちり描かれているところが効いている。
そして、それが喉を焼かれ声を失い主人のどんな欲求にも応えられるよう調教された少女というヒロイン像にも明確な輪郭を与えている。
義父の教えに従い勝たない賭博師として生きてきた主人公がそんな少女と出会い、不器用ながら交流を深め、彼女のために信条を歪めて無謀とも思える大勝負に挑むところまでが綺麗に繋がり、心情的にも勝負の展開的にも昇華された最後の大勝負には圧巻された。
ただ、主人公の葛藤を含む心理描写はきっちり描けていて、その姿は格好良かったけど、ヒロインとの交流のシーンはもう少し欲しかった。
ラノベなんだから、もっとこうヒロインに萌えさせてほしいのよね。
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アマゾンのレビューで非常に評判の良かった
ライトノベル。
ラノベとコミックスだけは、作者さんが若い方が
面白いのではないか。そんな思いがあって
自分の読んでいないシリーズを探して読んだ。
で、結論からすると、大人の小説である。
ラザルスという賭博師と、ゆくりなく彼の所に
やってきた奴隷娘、リーラの物語。
展開は王道で、ここに細かい彼らの心情を
ネタバレする気にはならない。
両者が心を通わせた矢先、トラブルに巻き込まれて
ラザルスのもとから奪われたリーラ。
一世一代の大勝負に打って出て
彼女を助けんとするラザルス。
その、大一番の行方は…。
近頃のラノベにしては、ラザルスの肝が据わっている。
ちゃちな苦労人ではない、この男の優しさ。
そして、同量に持ち合わせる冷酷さ。
優しさは他者へ向けられ、冷酷な視線は自らに
向かう。そこがこの小説の良さではないか。
リーラと彼の間には、身体での繋がりや
くちづけすらもない。
むしろクライマックスでの賭けの場面。
もと恋人、フランセスとのやり取りのほうが
よほどかつての関係を想像させて、色っぽい。
でも、それだけに。
「惚れた女を取り戻しに来たんだ。」
と彼女に告げる場面は、凄みがある。
ラザルスもまた、カタギではない。
フランセスの引き際も、また見事。
ラザルスに、リーラ奪還を決めさせる場面と
勝負の行方が決するまで、がこの小説の白眉。
そこまでは淡々と、丁寧に描かれた都市や
主人公たちの様子が堅牢で
「ちょっとくらい何か起きればいいのに」
なんて不謹慎なことを考えたけれど。
どうか最後まで読んで欲しい。
最高に格好いい。
雪崩をうって静かな緊迫感と
品の良い恋の萌芽がやってくるから。
男も、女も…。なんて最高で、なんてばかで。
なんて人間って必死なのだろう。
恋人の腕に帰り着きたくなる、そんな衝動を
起こさせた。二作目を読むのが楽しみだ。
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賭博を中心にした作品。賭博師であることをポリシーにし、それ以外を”どうでもいい”と切り捨てていく主人公。そして喉を焼かれ声と感情を失った奴隷の物語。
成り行きで生まれた関係ですが、ストーリーが進んでいく中で、二人の関係がたまりません。
”どうでもいい”と切り捨てられなくなる主人公、物理的にも自らも押さえつけていた感情がこぼれてしまうヒロイン。
そんな変化に戸惑いながらも、歩み寄っていく心情が丁寧に描かれていました。
そして熱い賭博シーン、とても良い作品です。
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面白かった……
「どうでもいい」が口癖の賭博師が、奴隷の少女と出会ったことから「どうでもよくなくなっていく」。
キャラクターが魅力的で、ジョンが好き。
決着のつけ方は賭博師らしく賭け事で行われたけど、ちょっと盛り上がりにかけた気もする。
世界観好みです。
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奴隷の少女と孤独な賭博師。
不器用な二人の痛ましく、愛おしい生活。
という本の帯にふと目が落ちてたまたま購入。
読了して個人的に100点をつけざるを得なかったです。
この本は全5巻で完結するのでそれ程重くはなかったです。自分で課した枷や理屈なのを自ら投げ捨てる様な印象を持ちました。今でもたまに読み返したりする作品です。
賭博師は祈らない。良いタイトルだと思いました。
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かなり好きな本だ。近世ロンドンの賭博師の話。キャラクターも魅力的だし、ストーリーも凝っている。(ジョンが名脇役すぎる!)
強いて批判するなら、主人公の元カノは前半に登場シーンがあっても良かった気がする。あと前半の内容は世界観を描くといった要素が強く、後半の展開にあまり活かせてない気も。
しかしその上でも、非常にハイレベルで、わくわくしながら読むことができた。しっかりエンタメしながら、テンプレに頼らない。この本と、この作者と出会うことができて良かった。続きもじっくりと読んでいきたい。