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紙の本
窓際へ追いやられた人妻たち
2017/06/12 22:24
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投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
人事部ではなく人妻部。入社したての若き主人公が間違えて書類を提出してしまう部署だが、自分も当初は読み間違えており、二見文庫の前作『人事部-夜の悩み相談室』のがっつりな続編かと思ったくらいである。もっとも、同じ会社を舞台にした後日談的な物語にはなっていて、本作のヒロイン達のセリフによって前作のヒロイン達の「その後」がチラッと示されたりはしている。ただ、それ以上でもないために舞台を同じくした意図はちょっと読めない。どうせなら前作のヒロインがもっと介入してきた方がファンとしては楽しさが増したであろうにと感じた部分はある。
女性の社会参画を促進するという目的は名ばかりで、実態は体のいい飼い殺しのお払い箱な部署となっている「人妻部」ではろくに仕事もない人妻社員3人が燻っている。元の部署から追い出されて左遷扱い(表向きは昇格)な部長の【紗和子】(38歳)を筆頭に妊娠中の主任【菜穂美】(33歳)と子持ちOLの【佳江】(29歳)が送るのは怠惰な日々。女だてらにと妊娠と子持ちという女性が社会から疎外されやすい状況下の3人とも言える。そんなところへ『飛んで火に入る夏の虫』とばかりに出くわしたのが主人公(22歳)という構図である。
サブタイトルには「夜の社員研修」とあるが、どちらかと言えば昼下がりの社内情事が多く、時には元秘書の佳江が重役室の合鍵を使って忍び込んだりしている。そして何より「研修」されているのは主人公1人だけであり、新米の気苦労を癒してもらうために自ら赴くことがほとんど。そんな中で妊娠中ながら安定期だからと菜穂美から求められたり、佳江からは母乳の処理を依頼されたりと、意外にもマニアックな場面が優しい描写ながらも飛び出している。また、結末では紗和子にも妊娠願望があることが判明し、夫が消極的だから色気を増すために主人公へ協力を申し出たりしている。
作中で見る限り、紗和子の色気は相当なものと感じてならないのだが、夫にはそう写らないというのは何も官能小説の常道だけに留まらず、現実にあり得ないことでもないとちょっと考えてしまう。菜穂美も妊娠中だから、佳江も育児中だから夫が構ってくれないと吐露している。だがしかし、巷では妻が母にジョブチェンジしたことで構ってもらえなくなった夫も少なくないことを同時に考えてしまった。
さて、紗和子から女のイロハを教えてもらい、菜穂子によって男にしてもらい、佳江で経験を積んだ主人公には同期入社ながら短大卒の【瑠奈】(20歳)との接点ができる。そして、彼女の悩みを解決するために人妻部は助け舟を出し、主人公も巻き込まれるように協力することとなる。これによって社内での人妻部の地位は向上し、人妻部の3人によって鍛えられた(?)主人公は瑠奈との関係を進展させて締め括られるのは出来過ぎと言いたくなる程に心地の良い読後感である。欲を言えば紗和子との交合場面をしっかり読みたかったことか。
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