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「乙女の港」が1937年連載開始(中里恒子との共作?代作?)。
対して「親友」は1954年連載開始。
少女小説を長く書いていなかったが希望されて、とのこと。
チラッと検索しただけでは、絶対代筆! と断罪する記事は見当たらなかったが、たぶん何かしらあるんだろう。
というのも本作、連載終了後にいったん単行本化されたが文庫化されず。
この本は2015年に単行本化されたものの文庫版なのだ。
なんかあるだろう。
また対にして考えるなら「乙女の港」は戦前、「親友」は戦後。
主役の少女たちはいい家の子だが、周りに不良少年がいたり、戦争の傷跡が結構ある。
育夫少年に関しては、野坂昭如原作、高畑勲監督「火垂るの墓」の清太とか、香具師と旅生活を送るくだりは、松本清張原作、野村芳太郎監督「砂の器」とかを思い出したりした。
と、やや脱線気味になった。本筋に戻さねば……しかしどうしても私には、「女学生の友」の読者たる健やかな少女のような読み方が、できなかった。
一言でいえばかすみのおじさまの存在が、怖いのだ。
地の文では隠蔽されている何かしらがこのおじさまにありそうで。
大人には大人の生活があるという隠匿を、ぷんぷん嗅ぎつけてしまった。
青い車が不吉の象徴に思えるくらいに。
アニメ版の「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」で、なずなの母親の再婚相手が、なずなに性的暴行を働いているのではないかという深読みレビューを読んだことがあるが、本作でもそんな事情を(勝手に)想像してしまった。
1954年といったら川端、例の「みづうみ」の時期なのだ。
うーん……。
という無駄な深読みをしなければ、そっくりなために(おみきどっくりのように!)間違えられるくだりとか、お姉さま的存在が絡んで波乱とか、よくある少女漫画っぽい。
前半の衣服盗難事件が伏線になって、後半の少年が登場するという伏線の張り方とか、実に川端らしくない。
というか川端には書けなかった構成なんではないか、とやはり思う。
挿絵は玉井徳太郎。日本画の大家らしい。
眼がキリっとした、キツそうな少女。
「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リーとか、楳図かずおとか、タレントの千秋とかに似ている。
ただし、wikipediaの単行本情報には、
>『親友』(偕成社、1955年3月) - 親友、かげろうの丘、を収録。装幀:山中冬児。カバー絵・挿画:江川みさお
とある。
確かに検索してみると最初の単行本では違う絵なのだ。
……謎。なんで。
・特別付録「栃ノ木ノ話」
・解説 川端香男里
・文庫解説 瀬戸内寂聴
ちなみにこの文庫解説、あらすじを100%書き尽くしているので、便利といえば便利だが、初読の際は注意必要。