投稿元:
レビューを見る
人間の愚かさを感じた。しっかりと確認することなく獣に恐れ、ラルフとジャックという2人の仲間割れから悪の連鎖が続いていく。ラルフは救助されるための希望として行動していたが、一方のジャックは狩人として肉を食らう目の前の欲求のために行動した。人間は目の前に自分が欲しいものがあれば目がくらみ、どうなるかわからない未来への希望を閉ざしてしまうのか。そして、大勢が仲間であり力を持っていると感じることで、自分の権力を使い残虐なことを簡単に行う。人は生まれながらにして残虐性を兼ね備えているのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
読むきっかけは十五少年漂流記の再読だったのであらすじは理解していたが、思っていた以上に混沌とした内容であった。
島には愉しみが少ない。狩をして成功すれば食糧が得られるが、それ以上に達成感や充実感も得られる。それらが人間に秘められた欲望を呼び覚ましてしまったのではないか。そして欲望は止まらず崩壊してしまう。人一人を追い詰めるために放った火がきっかけで救助されるのは、なんとも皮肉な結末だった。
一度読んだだけでは人物が示唆している事などもいまいちわからなかったので、他の方の感想や解説を読んだ上で再読したい。
投稿元:
レビューを見る
疎開する少年たちを乗せた飛行機が、南太平洋の無人島に不時着した。(新訳版裏表紙冒頭)
イギリス人らしく規律ある島暮らしをしようとするラルフ派と、豚の狩猟に熱をあげる部族(狩猟隊)の隊長になるジャック派に分かれてしまう。
元々ジャックは聖歌隊の首席隊員で首席監督生であり、下の子を纏める立場にいたため当然無人島生活でも自分が隊長になるべきだと言う。だが選挙という文明的な遊びでラルフが隊長に選ばれた。はっきりした理由は無いのに!
ラルフのそばにはピギーがいた。知性や科学の象徴である眼鏡(役者後書参照)、後々火を起こすのに無くてはならない眼鏡の唯一の持ち主がピギーなのだ。容姿と文明人ぽいという曖昧な理由でラルフがボスに選ばれ、狩猟隊の隊長にはジャックが任命される。(ジャックしかいないとはいえ)選んだのはもちろんラルフだ。最初はこれでうまくいってた。イギリス人らしくね。
それがどんどん狩猟に魅せられて、狩猟隊は顔に迷彩を施し手には槍を持ち豚を殺す。豚の頭は〈獣〉に捧げる。彼らは野蛮人になり、一緒に不時着した仲間を殺していく。
桑の実のような痣を持つ子はまだ事故であるにせよ、サイモンは暗闇から宴会の輪に躍り出たためにせよ、ピギーに岩をぶつけるのは完全に故意だ。
眼鏡を返せと言う(交渉)をかなぐり捨てて岩を落とし槍を投げ火を着けてラルフと争ったジャック派は、救助後文化的なイギリス人に戻れるのか。
……ああ、そういえばこの少年達は戦争中でしたね。
投稿元:
レビューを見る
孤島に取り残された少年たちの物語。いわゆる「漂流モノ」だが、ジュブナイル向けの作品とは全く違う。はじめは社会から法から解放され、興奮さえ覚えていた主人公たちだが、しだいに対立が生じ、果ては殺人までも。隔離された空間でイノセンス性が次第に失われていく少年たちの有様をリアルに描く良作。
投稿元:
レビューを見る
序盤は面白くなくて惰性で読んでいたけど、後半に面白くなってきた。人間の本来持っているのかもしれない凶暴性が描かれている。本来持っている、って感覚はあまり意識していないけど、もともとそういう所を持っているんだ、っていうのは改めてちょっと新しい感覚だ。聖書とリンクしている所があるらしい。
投稿元:
レビューを見る
戦時疎開する児童が乗る飛行機が南太平洋の無人島に不時着し、生き残りのその後を生々しく描いた小説です。
煩わしい大人がいない世界に嬉しさを感じつつも、救助されることを前提とした生活を考える少年ラルフ。
少年達は彼を隊長に選出し、物語においても中心人物となります。
大自然の中でも民主的であろうとする彼らですが、徐々に崩壊が進んでいきます。
人間の野蛮性が表現されているのですが、それを宿しているのが子供であることが特徴的です。
純真無垢な子供には、純真無垢な善と悪が共存しています。
だからこそ、大人には子供をしっかりと導く責任があるのです。
大人の考えが及ばない世界で物語はどんどん進み、醜い暴走がいつ止まるのかハラハラとさせられました。
後半は時間を忘れて読み耽り、まるで自分がこの島にいたかのような疲労感が残りました。
素晴らしい一冊です。
投稿元:
レビューを見る
勝手にバッタバッタと殺し合う思い込みがあったため、中盤までヤキモキしたが、その分人物に入り込めたし、リアリティがあって良かった。ラストシーンはどこに感情を持っていっていいかわからなくなった。
投稿元:
レビューを見る
十五少年漂流記と併せて読むと、また一味違う作品になると思います。これは大人にも当てはまる、派閥争いの結果の一つなのでしょうか。
住所を思い出せない子が、悲哀を感じさせます。
投稿元:
レビューを見る
少年漂流記。幼く、無垢で純粋なゆえに邪悪。そんな混沌の中で彼らはどのように生きるのか
子供たちだけで漂流したという極限状態で、子供を通して人間の本質、内に秘める邪悪を知る。
リーダーになった責任感からかまっとうしたい。助かりたい。
なまじ成功して力をもってしまったがために勘違いする。
幼いから今自分が置かれている状況を理解できない。
正論を言われても理解できない。なぜなら正してくれるはずの大人がいないから。
帰る、助かるということに力を注げばいいものを、一方目の前の欲にばかり目を向けてしまう。
自制心が未熟な子供だからこそ後者は多い。
今でもいじめとして続く子供の無垢という邪悪。自分の欲が満たされるならば、他人を傷つくことは構わない。漂流という極限状態、そんな状態ではなくても相手を思いやる気持ちを持って、そして実行しさえすれば、欲には負けはしないだろうに。
投稿元:
レビューを見る
おれは物語の中でいい奴に出会えると嬉しい。
だから、無人島で少年達が殺し合う、登場人物の誰も好きになれないこの本はあまり楽しめなかった。
なぜ世の中で評価されているのか考えながら、自分とは違う視点で読んだ。
投稿元:
レビューを見る
極限状態になると人間は理性を失い言動や行動を抑える事が出来ない生き物なんだと考えさせられて…
正直嫌な気持ちになつた。
投稿元:
レビューを見る
サイモンと蠅の王との会話から、最後までずっと引き込まれた。
もう理性とか、そんなものでは分かり合えない、まったくどうしようもない残酷な状況をありありと感じた。
投稿元:
レビューを見る
冷戦構造を下地にした、民主主義と全体主義のカリカチュア、かな。ラルフが西側、ジャックが東側。ピギーは科学者を表しているように見える。ほら貝は国際ルールの象徴。「大人」が象徴する「文明」に見放された時、人間は本能的にどう生きようとするのかを子どもで実験した小説、と読み取れる。
面白いのは、のろしの扱い。地味だけど大事な仕事は誰もやりたがらないし、最初は頑張って維持しようとするけどすぐ適当になって、みんな人任せにしたくなっちゃうっていう描写。これ、現代のお任せ体質をうまく言い当ててると思った。のろしもまた民主主義の象徴なのかな。みんなでやらないと上手くいかないのに、面倒だから誰かに押し付けたくなって、結果、消えてしまうという。日本型デモクラシーって、正にそう。火種をキープし続ける労を惜しんで、誰かにやってもらうのを待ってる。だから、この作品中では「おちびたち」に当たるのが日本なのかな。お兄さんたちがギリギリで回してる後ろから、よちよちついてくだけで事態の進展には参与できない、おまけ的存在。守ってやらないと道義的にマズイから守ってもらえてる国。
タイトルからするに悪魔的な展開が待っていて、そのバックボーンとしてキリスト教があるんだろうな、というのは予想はついた。なるほど、ベルゼブブだから「食」が暴力のトリガーになるということか。
山極寿一先生の『暴力の起源』によれば、人間が振るう暴力は「性」と「食」に端があるのだそう。本作品は第二次性徴期前の少年たちが登場人物となっているから、この二つのうち「食」だけがクローズアップされる形になる。でも、何で豚なのかが最後まで分からなかった。そもそも豚は家畜なので、人間が持ち込まないと存在しない。だから、今は無人島だとしてもどこかにかつて人間が住んでいた痕跡なり人工物なりがあるはずなのに、その描写がないのが不自然。解説を読んでようやく理解した。
インディアンとか野蛮人とかいう呼称に往時まだ根深かった偏見や差別意識を感じるけど、彼らに特徴的とかつて考えていた獣性を白人の子どもの本性として描いたのが、やっぱり世界大戦後の作品だな、と感じた。『すばらしき新世界』から見ると、だいぶ進歩してる。
ディストピア文学という観点から言えば、ジャックとその一味の設定がミッションスクールの聖歌隊ってとこが、その後に書かれる『侍女の物語』の到来を物語っているようにも見えた。キリスト教の思想を最も体現するはずのものが最も残忍かつ不道徳っていう裏返し構造。でも、「全体主義=非人道的」っていう図式に落とし込んじゃってて、まだまだイギリスそのものを相対化できてない点で甘いな、と思った。
投稿元:
レビューを見る
最近ディストピアものを読み過ぎて、流石に参ってきた。ヴェルヌの十五少年漂流記大好きということもあるし。
本書で一番ゾッとしたのはロジャーの変貌。ある意味功利に走るジャックというのは論理的な存在とも言えるし、集団心理の恐ろしさも既に私たちは知るところだ。ところが、突如として悪意を剥き出しにして、一線を踏み越えたロジャー。大人が踏み入ってきた時に、果たして彼らはどういう振る舞いをするのか気になったなー
投稿元:
レビューを見る
気分の良い小説ではないが、人間の本質を描いた名作。
それを年端も行かない子供で表したことで、より生まれ持った悪の存在を際立たせてる。
ストーリーは無人島でのサバイバルなのだが、多くの作品の元ネタになっていることが想像できる。
訳者あとがきは絶対読むべきで、より理解度が増す興味あるものだった。