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紙の本

連作形式に再構成した短編集の第3弾

2017/04/09 15:42

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る

『特選小説』(綜合図書)に上梓した短編に書き下ろしを加えて構成された短編集だが、掲載時期もそれぞれ異なる独立した短編に登場する一部の人物を知人や縁戚などとして繋げることで同一の世界に再構成されている。これにより1つの連作短編形式に様変わりするのは興味深いところだが、本作はその第3弾にあたる。

第1弾 『七人のおいしい人妻』(2014年8月)
第2弾 『年の差のある七つの姦係』(2016年9月)

3度目ともなれば手慣れたところもあって面白味も増しているのだが、中にはこうした短編集の発売以降に執筆された短編があるため、もしかしたら当初からこの再構築を見越したのでは?といった確信犯的な部分も感じられたりする。また、第一話と最終話に描き下ろしを配することで次の世代を描く「その後」が垣間見られる良さがあったりする。それだけ緻密さが増しているとも言えよう。読み手としては歓迎したいところである。

第一話 家政婦と少年 ※書き下ろし
第二話 和服美女(少年の親戚)
第三話 マンションのOLと人妻(和服美女の親戚が管理人)
第四話 シェアハウスの美女2人(うち1人がOLの元後輩)
第五話 喪服未亡人姉妹(シェアハウスに関わる男の後輩が主人公)
第六話 家政婦と少年(姉妹の姉)※書き下ろし

何らかの形で各話が順繰りに繋がっていくのだが、第五話のヒロイン姉妹のさらに上の姉が第六話の舞台となる家の家政婦になっており、それは第一話と同じ家であり、「その後」であるという凝った絡繰りがある。書き下ろしだからこそ可能な構成とはいえ、第一話で結ばれた家政婦と少年の「その後」を忍ばせつつ次の世代でも連鎖が繰り返されるというのは秀逸なアイデアとして脱帽である。なお、タイトルでは「六人」とするヒロインだが話によっては複数人出てくることもあって実際に官能的な出番があるのは総勢9人である。

時に小悪魔、時にしっとり妖艶、時に勝気、といったヒロイン達が内心ではいっぱいいっぱいに切羽詰まっているというギャップが作者らしさであり、短編で得意とする手法なのであろう。続けざまに読むと似通ったパターンに見えてしまうのは致し方ないところだが、それぞれに異なる魅力を放つヒロインの幅広さがそれを補っている。また、それらを受け止める主人公の人格の良さも甘い物語には欠かせず、こそばゆい程の官能ラヴコメが堪能できる。

1人ヒロインの場合は複数回、2人ヒロインでもそれぞれにしっかり官能場面があり、短編につき纏う官能成分の物足りなさはさほど感じない。つまり、どの話も程良くしっかりいやらしい。

二匹目ならぬ三匹目の泥鰌を狙った作品かもしれないが、三匹目は確かにいたと申し上げたい。

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