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「香りとともに、甘やかに立ち上がるあの人との時間と記憶。実在の香水から喚起された36の情景を描く」
・マイペースで浮世離れした香り、バーバリー。
”東京の月は”の印象深いストーリー。ほかもそうだが、これは特にぷっつり切れているというか、ストーリーというよりある女の一日の片鱗を垣間見たような話。
・幸せと不幸せをゆらゆら漂うクラゲ。その間を得意げに飛び回っていた、小さなコウモリになったつもりで。
2つの恋と愛を行き来する甘美さと、不幸せにも取れる戸惑いの中で今日も女は他の男性とタクシーに乗っている。いけないことなのに、なぜか正しく清々しい。
この本に詰まった数々の物語の主人公は、ちょっと身勝手で、香水と男を同等に扱って次々と変え、新たな環境に染まっていく。それは異なるとちや、新しい相手や、未来。
優美で優雅で上品で、華やかだったり爽やかだったり甘いものから愛らしいものも。
私の受ける印象と違うものもあるけれど、一つ一つにひもづくストーリーが、彩を加えてくれる。
仕事をしているのかしていないのか不明だが、この中の多くの女性は自由で、男に困らない、羨ましいくらいの人たちばかり。人を奔放に翻弄していく彼女たちの持つ魅力を一筋でももらいたくて私も香水を探そうと思った。
・イヴ・サンローラン”パリ”小粋で機知溢れる気品のパリに行く約束の恋人たちが喧嘩
・ゲラン”アンソレンス・パルファン”自由で大胆、夫がいても自由に遊ぶ余裕な女の話
・ニナリッチ”ニナ・オードトワレ”ロマンチックな魔法。アメリカに行く恋人のカバンに密かに忍ばせたフェルトでできたヤギの人形につけた香り
・アスプレイ”パープルウォーターオーデコロン”ひんやりと透き通った香りをつける彼と眠い私
・ゲラン”アクアアレゴリア・リモン”退屈した女性が見つけようとした爽やかな香り
・シャネル”ブルードゥシャネルトワレ”
私にはどうしても彼の心が私の側にあると思えない。私は、いつも月を眺めるように彼の顔を眺めている。