投稿元:
レビューを見る
どんな気持ちで辻さんはこの作品を書き上げたのかな、と、ハラハラしながら読んだ。実際の息子さんジュートくんと、この作品の息子ジュールくんがどうしても重なってしまうから。私たち読者の中では辻さんも辻さんの息子さんジュートくんも、そしてこの作品も物語の一つだから。
投稿元:
レビューを見る
彼自身の体験や心情が赤裸々に綴られているような、現実と重なるリアルさにドキドキする。友人に、普段恋人と何を話していたのかと聞かれ、答えられなかったばかり。勢いでここまできたのかと考え込んでしまったが、ラストの展開に救われた。美しいお話。そのとおりでありますように。
投稿元:
レビューを見る
昔から、辻仁成の小説が大好きだ。
確かに洒落てはいるし、気障な所もあるけれど、決して斜に構えて書いていないと言う事が分かるからかも知れない。
それはそれは真正面からお洒落に、小説を書いている。
彼の作品は間違い無くどれもこれもが、天然由来成分で生成されているのだ。
そして本作は、自身の親子関係をモデルに据えた創作である。
舞台はパリ。
著者自身も、実際に息子と二人、パリで暮らしている。
彼の息子は充路(ジュール)と言う名の青年となり、健忘症を患う父の介護、そして教職に就き結婚を前提とした恋人と自身の生活を運んでいく中で、葛藤を続ける。
とても清潔感のある小説だった。
物語はパリに相応しい結末で幕を引き、私は嘆息と共に本を閉じた。
<Impressive Sentences>
愛という言葉をぼくは一度も口にしたことがない。そのことをリリーに指摘されたことがあったけれど、言葉で説明しないとならないのは本当の思いじゃない、とぼくは伝えた。彼女は軽く肩を竦めてみせ、
「でも、言葉にされないと何も届かないよ」
と言った。
投稿元:
レビューを見る
辻仁成が70歳になった時の話?そんな小説。失敗を重ねてきた人だから書ける文章。フランスかぶれ、ギップルかもん!
フランス旅行のために読んだけれど、予習にはならない。でも人生の予習にはなった。
美しく老いたい。そういう日本人にナウい物語だなぁ。健忘症で周りの人間に迷惑をかける物語。でもその健忘症は、心の問題だろうと…。
人は心の問題で、容易に壊れるんだなぁ。それが小さくいろんな人生を壊していく。
でも人生が壊れるっていうのは、人生に変化をきたすっていうことだから、それが人生の壁を壊すっていうことにつながる可能性も…。
気になったページ
p188 愛は更新し続けるもの
よく言うよね。変化に寛容であれってこと。これをカップルの片方だけが分かってて、片方が分かっていないと歪みが生じるよね。こんなん若者というより、老夫婦だから言えること。そういう辻仁成の格言が見え隠れするww
だからこそ若い人が読むべきなんだよなぁ。
「きっと君のパパは愛を受け入れるものだと思いすぎたのよ。愛されたいと願いすぎたんじゃないの?君のパパはとってもチャーミングな人だけど、きっと愛し方を忘れちゃったのよ。」
愛を更新するって何だろう。だから辻仁成は…。
湘南乃風の「純恋歌」で”馴れ合いを求める俺 新鮮さを求めるお前”っていう歌詞があって、ちょっと違和感を感じていた。女のほうが安定を求めて、男が変化を求めるもんじゃないの?って。でも、愛についてはそうでもないんだな。
男は面倒くさがって、愛することにパターンを求める。
女は愛し愛されることに貪欲で、いろんな形の愛を求める。
だから関係にひずみが生じるのか…。超難しいな。こんなん鈍感なやつらしか幸せになれないぜ。
でも敏感な人たち、アーティスティックな人たちは、苦悩して、愛を追求して生きていくのかな。だからドラマが生まれるんだね。そういう感情の嵐が、フランスにはあるのかな。
事なかれ主義の日本ではあまりないドラマ。というのも、こういう考え方の違いかな。
p194 言葉少な
パパ(タイジ サワナギ)と勉江(リリーのママ)が仲良くなった。日本人と中国人の二人が心を通わせたのは「書道」がきっかけだった。
漢字という共通言語で、なんとなく通じ合う。それが会話で通じ合うより、もっと共感しあえるのだったという。姿勢の問題かなぁ。わからないと、わかろうとする。だから心が傾いて、共感しやすくなる。
そういうのなぁ。言葉ってすごく便利だけれど、すごく不便で、こういうことなんだよなぁ。わかりすぎるとぶつかってしまう。少しわからないと、共感できる。
人間ってそういう矛盾しているところがある。
だから、言葉少ななほうが、人は分かり合えるんだ。
示唆的だったなぁ。おっさんから若者に伝えたいことがあるって感じの物語だった。
愛は言葉じゃあ伝わらないよ。愛をパターンですましちゃあダメだよ。気持ちは、相手が理解しようとしてくれないと伝わらないよ。だから関係をよくしていないと
ダメよ。って。
日本人って自立してないんだよね。支え合うってことが大事と思っているんだろうけれど、、、
支え合う時に、他人に体重をかけないで背筋を伸ばして寄り添い合う、そういう自立した支え合いをできるようにならないとなって考えた。
投稿元:
レビューを見る
やっぱり辻さんの小説は好きだな~
繊細で美しい。毎日雑に生きてる自分が恥ずかしくなる。
いろんな事を考え、たくさんの言葉が溢れている。
私は何も考えないで生きてるなって思わされる。
父と子の話なので、最初は辻さん自身の事と重ねてしまうけど、
これはやっぱり小説。
フランスという場所で、もがき苦しみながら異邦人は生きていかないといけないんだな。
投稿元:
レビューを見る
久々の辻仁成
異国に暮らす日本人って、珍しい視点からのお話だった。
軽度認知症?のパパとの、温度感がやさしい本だった。
投稿元:
レビューを見る
クライマックスはとても考えさせられた。
ページ数は少ないほうだと思うが、内容が濃くて何回か読み返してしまった。時間をかけて読んだ。
投稿元:
レビューを見る
セーヌは流れを止めたことがない。いつだって、この川は上流から下流へとゆっくり、人間が老いるようにひたひたと流れていく。この川の流れと同じくらい時も長い年月をかけて蛇行しながらも緩やかに止まることなく流れ続ける。そういう人生を生きてきた。
投稿元:
レビューを見る
以前、同作者の別小説を見ていたため読んでみた。父と子の日常生活のお話かと思っていたが、過去と人間関係が強いお話だった。予想とは違ったが人間関係について考えながら読むことができ面白かった。ミステリーようそもあったため、読み返したい!
投稿元:
レビューを見る
人間臭い内容なのに
多国籍文化の中で描かれているからか
ストレートな泥臭さを感じない
私小説である物語の主人公を
自分自身ではなく息子にしたのは
実際の息子へのエールなのだろう
だからこの小説には
愛が溢れているのだと思う
とても美しい純文学でした