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主人公の千夏は、民俗学の「口頭伝承」を研究する大学院生。その研究の一環で、認知症グループホーム「風の里」を訪れ、ひと癖ふた癖もある老人たちと出会う。
ミステリと銘打ってはいるが、中盤までは認知症介護の描写がほとんどで、社会派小説なのかと。千夏が明るくて、老人たちも意外と生き生きと描かれているので、あまり重苦しく感じずに読めるが、展開はちょっとモタつき気味。しかしながら、高校生の大地が加わるところから一気に民俗学ミステリに切り替わる。そして、終盤。まさか、そこに行き着くとは予想外。とっくに記憶のかなたに忘れ去っていた伏線がここで回収。改めて読み直せば、かなりファンタジーな繋げ方であるけれども、驚愕度の方が勝ったのでこれはこれでよろし。ホラーばりのえげつない描写はさすがです。
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高齢者問題と家族問題に誘拐・監禁事件を絡めたミステリ。かなりな力業で、エンタメとして読ませる。ただ、グループホームでの専門家については一面的ともいえ、真摯にやっている方たちには申し訳ないので、読者は鵜呑みにしないで欲しい。(エンタメなので言わずもがなですが。)
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大学院生の千夏は民俗学の口頭伝承を研究するために認知症グループホームで取材をする事に。
宝石ジャラジャラの意識高い系に色武者、電波攻撃妄想者にマナーの鬼の郵便屋。そしてくノ一。
個性豊かな認知症患者達の記憶の奥底に眠るむかしむかしのはなしを探るなか、不登校男子高校生 大地がからんでからの展開にはもう痺れた。予想だにしない結末に驚かされ感心させられスカッとさせてくれた。
面白かった。
成長した大地の話も読んで見たい。
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読み始めから中盤までは、なかなか世界に入っていくことが辛い。しかし、中盤以降は冒険とミステリー。最期は「え、そういう結末なの」という驚きがやってくる。
民族学研究員で口頭伝承を専攻する千夏は、とあるきっかけから痴呆症の高齢者が集まるグループホームへ出向する。そこで入居者の一人が口にした「おろんくち」の謎を追う。やがて訳ありの高校生・大地の協力を得ながら、その謎に迫っていくのだが…。
いつしかグループホームの入居者たちも痴呆でありながら自分たちの意思で千夏の謎解きに手を貸し始め、同時にグループホームでの押しつけがましいルールにすら団結して意義を唱えだす。
中盤までを我慢すれば、後半は怒涛の流れ。「おろんくち」は意外な事実を暴きだす。そして、グループホームの入居者vsカウンセラーのバトルは痛快。そういった施設に入居している人、それを介助する人、高齢者福祉に対する問題提起も含んで描かれている。
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評価は5.
内容(BOOKデーターベース)
千夏は民俗学の「口頭伝承」を研究する大学院生。老人の“消えない記憶”に興味を持ち、認知症グループホーム「風の里」を訪れた。入所者の一人・ルリ子は、夕方になるとホームからの脱走を図る老女。会話が成り立たない彼女の口から発せらせた「おろんくち」という言葉に千夏は引っ掛かりを覚え…。乱歩賞作家の傑作長編・深層心理ミステリー
徐々に人に心を開くことで、まともな時間が増える認知症の老人達の会話に感心と笑いが。一方大地の母上の毒親ぶりといい、嫌な人の描写が徹底して上手くこれも読み応え有り。
何よりおろんくちで見つけた物!鳥肌が立った。ミステリーってよりホラーだよ。
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むちゃくちゃ面白い/ 前半の介護の絶望感、後半のおぞましい昔話、最後の最後で繋がる現在進行形の陰惨な事件/ まともに会話も出来ない老婆の、人を助けようとする行動/ 罵り合っていた老人たちがひとつにまとまっていく過程/ すべてコントロールされていて、とても面白い/ この作者はどの作品も最後の最後に切れ味鋭いピンチを差し込んでくるんだな/
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かなり最後のほうになるまで、
「おろんくち」の謎がどう着地するのか
見えてこないままなので、残ページを心配しながら
「謎が解けるのかしら」とはらはら読み進められます
最後はあっと驚く事件が解決され
老人と若者が協力して事件を解決するストーリーが爽快でした
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民俗学の「口頭伝承」を研究する大学院生・千夏が、”消えない記憶”を研究するために認知症グループホームを訪れた。入所者は他の施設を追い出された曲者ぞろいだが、ほとんど会話の成り立たない老女が発した「おろんくち」という言葉にひっかかりを覚えて調べてみると…
謎の解明も面白かったが、認知症の老人たちの活躍が爽快。介護の現場の問題点や、認知症とどう向き合うかということも考えさせられた。
千夏の特技”三時のキャッツ”は羨ましい。
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デビュー作以来でしょうか、民俗学と伝承をテーマに謎に迫っていくミステリ。意気込みとガッツはある女学生を主人公に、認知症を抱えた老人たちと家庭に問題を抱える男子高校生というクセの(かなり)あるキャラクタたちが「おろんくち」という謎めいたキーワードの真実に迫っていく物語です。
登場人物たちのユニークな会話や、ちりばめられている謎めいた単語に引っ張られるように軽やかに読めます。
介護問題にもさらりと、けれど浅くなく切込みつつも、老人たちの「陽」の面をあえて強く出すことで、読み心地を必要以上に重くさせてはいません。
また、彼ら老人たちが急速にものを忘れていきつつも、長い人生経験を積んだ人間であることそのものは変わらない、という温かな目線が常にあるように思いました。
物語は終盤に急速にホラー味とサスペンス味を加えて収束していくので、なるほど、と思いつつもいきなりという感じはちょっと否めないかもしれません。
それでもきちっとまとめて、また暗い要素をいくつも抱えつつも明るさをたたえた終わり方にしてあったのは、こういったテーマを用いたお話では珍しく、そして良い形だなあと思えたのでした。
現実はもちろんこれほど甘くはないのでしょう、けれどフィクションだからこそ希望を強く持たせてくれてもいいのでは、と思うのです。
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口頭伝承民俗学専攻の大学院生が主人公。
認知症の老人の記憶のなかにある最後まで消えない記憶をたどり、なそを解くことを研究するためにグループホームで、聞き取りをはじめる。
個性豊かな老人達の話しから、母親、家族との関係に悩んでいる高校生と共に謎を解いていく。
民俗学、フィールドワーク、ミステリーなどかなり好きな分野。
川瀬七緒さんの昆虫学者の小説も好き。
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前半のグループホームや大地の家庭の描写は読んでいて辛かったのですが、後半は一気読みでした。千夏が認知症の方の語りから民俗学に迫り、彼女によりホームのみんなが変わっていく経緯も、千夏との出会いが高校をドロップアウトしてしまった大地自身を変えていく経緯もとても良かったです。正直「おろんくち」を追いかけて山村に出向く部分、そして行きついた結果は私にはほとんどホラーで、すっごく怖かった。ミステリらしいラストの展開も満足です。ホームのみんなと大地のその後が気になるので是非続編を書いていただきたいです。→
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2019.7 キャラは朝倉先生とほぼ一緒だけれど、好きなキャラだから良しとします。ただ、ちょっとご都合主義過ぎるかな。
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口頭伝承を研究している千夏と、高校生大地の「おろんくち」を探るミステリ。どちらかというとおろんくちの謎よりも、老人ホームや認知症患者の抱える問題が印象的だった。全てマニュアルに沿った対処もどうかと思うし、介護士の苦労も実際は本当に大変なのだろうと思う。
大地が大学生になってからとかの2人の活躍の続編を希望!
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最初は取っつきにくくて、老人たちの行為に胸が締め付けられるようで最後まで気持ちがもつのか不安だったけれど、あれよあれよという間に謎解き仕立ての世界に。母と葛藤する少年の奮闘ぶりも素敵なスパイスとなって主人公が霞んでくるほどにくってくるさまがよかったように思う。頭でっかちの人をギャフンといわせることがこんなにも爽快だったとは。読後感は極めてよかったー。
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2020/8/6
やっぱ好きやなぁ。川瀬七緒さん。
止まらなかったわ。腰痛いのに。
内藤さんもやけど、登場人物の会話がごく自然ですんなり入ってくるのよ。
間違っても「絶対にNOよ!」とか言わない。
ネタとしては面白いけどさ。「絶対にNOよ!」って使いたいけどさ。
物語に入り込むには邪魔なそういうのがない。
あっという間に入っちゃう。
流行りのいい人ばっかり~とかじゃなく嫌な人もいるし、犯人はたいてい鬼畜みたいな奴。
なぜ鬼畜みたいなのかみたいな理由付けもなし。潔い。
素直なぽっちゃり千夏や立ち上がった大地、愛すべき風の里のじいちゃんばあちゃんたちにまた会いたいのだけど。
続編ぜひお願いしたい。