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紙の本
大胆な展開と現実的な結末
2017/07/07 22:18
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投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
今でこそ様々なテーマで作品を量産する作者だが、名を上げたのが回春路線だっただけに今でも時折上梓される。本作もその一環で60歳の義父が主人公だが、今回は息子の嫁【慶子】29歳の過去に秘密を設け、それに気づく人物が現れるストーリーにしたことで大胆な展開が生まれている。官能面においてもそれは寄与しているようで、恥じらいつつも火が灯れば艶っぽく乱れる嫁が描かれている。
AVを鑑賞するくらいの下心はあるものの基本的には実直な義父だけに嫁との交合には躊躇しがち。しかし、ひた隠しにしていた慶子の秘密が遂に判明し、息子(夫)に愛人の影がちらつくこともあって2人は結ばれてしまう。1度きりとしながらも夫が出張に愛人を同伴させているらしいことから慶子に生じた対抗心によって関係はむしろエスカレートする。これによって思いのほか情交場面の多い印象となっている。
秘密を共有したことで共犯めいた連帯感が生まれたことや、その秘密より生じる夫への遠慮からの反動もあって義父の前では積極的かつ淫らに振る舞う慶子。夫への愛情は失っていないため、その刹那だけでも全てを忘れたいのか、はたまた床上手ではない夫よりも義父との相性が良いのか、その真意は定かならずも夫不在時の義父と嫁との昼下がりの情交が淫靡に続いていく。そして、秘密の延長線上から義父は嫁に秘められた性癖を見抜いていおり、それもまた淫猥度の底上げに繋がっている。個人的には慶子が時折発する「いいの。お義父様、慶子、いいのよぉ……」がツボだった。
夫と嫁の夜の営みを覗き見る義父……主人公に同調した読み手も寝取られ感を覚える場面として作者が得意とし、ほとんど作品に出てくるシチュエーションだが、本作では序盤と終盤に出てくる。2度描かれるのは珍しいものの、それぞれに正反対の意味を持たせているのはさすがの演出と言える。物語の発端と結末を象徴する場面になっていて、つまり、義父と嫁との関係はエスカレートを極めつつも最後は現実的に落ち着くのである。一件落着としながら未練を残す義父の心情が余韻を残している。
なお、そんな義父を慰める役割もあって中盤から出てくる慶子の友人女性は、官能的にはオマケ程度に過ぎない。慶子のほぼ1人ヒロインだからこそじっくり描かれた官能が冴えた作品だったと言える。
ついでながら慶子の秘密に気づいた人物から非現実的な申し出があり、それを承諾する流れには「まさか」の意外性こそあったものの、そして慎重な配慮を感じさせる描写だったものの、それでもちょっとばかし余計だったような感慨を覚えなくもない。もっとも、慣れると言うか再び読むと淫猥度が増す場面ではあるのだが。
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