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久々の書評ですが、今回は「ブラック・フラッグス 「イスラム国」台頭の軌跡」ジョビーン・ウォリック著です。
本書はイスラム国の台頭前後の中東情勢、主にイラク・シリア・ヨルダン・アメリカの国家情勢について、米国が起こした「イラク戦争」や「イスラム国」との関連につき、当時のキーパーソン、アブー・ムサブ・アッ=ザルカウィやアブー・オマル・アル=バクダディ、多くのアメリカ人軍民などの足跡を辿った書籍である。
なかなか、興味深い内容であるが、なにせ長尺で若干冗長。中東やイスラム国に興味がある方や、アラブ世界に関心が薄い方にはかなり読破するには骨が折れるのではないか?と思う。
まず本著は、ザルカウィがブッシュ大統領が起こしたイラク戦争で、イスラム教スンニ派(サダム・フセイン大統領の支持母体)やアメリカ軍に対抗するため、彼が組織化したいわゆるゲリラ組織がどのように、彼の地で存在意義を示したかを著述している。
もともとザルカウィはヨルダン人であり、隣国イラクの将来について悲観するところがあった。そのため、イラクに入国して、ビンラディンを師と仰ぎ「イラクのアルカイダ」を創設する。
その後、イラクで反米軍・反イラク軍の内戦を仕掛ける。その描写を中心として本書はまず、展開される。
その過程で、様々な興味深い事実が著者により明らかになる。
彼は上記のように、ヨルダン人ではあるが彼の行為は母国では「急進的過ぎ」と言って受け入れられない。たとえば、彼がイラクで行った、自動車爆弾攻撃や処刑の映像等にである。
その文脈の中で、彼は「イラクのアルカイダ」を名乗りたがる。そしてアルカイダの創始者であるビンラディンからも「彼の戦争に参加せよ」というメッセージを受ける。その頃、ビンラディンは自らが招いた災難により、アフガニスタンとパキスタンの山中で逃亡生活を送るしかなった。
そのような、ビンラディンはザルカウィに「イスラムの勝利」という彼には迂遠なものを達成してくれるのではないか?という期待があったのだ。
しかし、イラク戦争はアメリカが仕掛けたもの。徐々にザルカウィの置かれている状況も不利になってくる。
増派・増派のアメリカ軍。若いアメリカ軍兵士は経験を積み、イラクでどのような軍事行動をとればいいのか自ずと分かってくるのである。
すなわち、夜陰にまぎれた襲撃。情報機関との連携によるいち早い空爆。
その結果、ザルカウィは居場所を突き止められ、米軍に空爆され命を落とすのだ。
その後本書はイスラム国の創設の描写につながっていくのだが、これ以上興味のある方はぜひ本書を手に取って欲しい。
ピュリッツァー賞受賞の本書は前記のような、中東好きで、イスラム国とかに興味のある方の知的好奇心を存分に満足させる内容となっている。著者渾身の力作であることは保証する。面白かったです!
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ブラック・フラッグス、BLACK FLAGS The Rise of ISIS、ピューリッツァー賞受賞作。タイトルの通り、イスラム国、Islamic Stateが台頭してきた歴史や背景を丁寧にまとめた良書。イスラム国、Islamic Stateを報道で聞く機会はあっても、詳しくは知らない人が多いと思う。このブラック・フラッグス、BLACK FLAGS The Rise of ISISを読めば、基本的な理解が得られると思う。
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ヨルダン,イラクを経て,いかにしてザルカウィが力をつけジハーディストのスターにのし上がっていったかを丁寧に記述している.特にヨルダンの事情については知らなかったことが多く,負の連鎖が綿々と続く悲劇にやりきれなさを感じた.
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イスラム国のできるまでを緻密な取材に基づいて検証している.ピューリッツァー賞受賞.上巻では主に「イラクのアルカイーダ」を創立したザルカウィの生い立ちも含めた動向を中心に描いている.
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本書を読めば、イスラム国(ISIS)がどのような経緯で出来たのかが良くわかる。
ザルカウィと彼の死後のバグダディの活動が、膨大と思われる取材から非常に丁寧に記載されている。
アルカイーダとの微妙な関係や、イラクやシリアの情勢不安をうまく利用したり、周辺国の思惑の裏をかいたりと、テレビ報道からでは決して見ることのできない真の世界がここには記載されている。
断片的なテレビ報道だけで判断するのではなく、本書のような真実をいかにして世の中に広めていくかが重要だと思われる。
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イスラム国がどのようにして生まれ、どんな経緯で広がっていったのか。上巻では、ザルカウィというヨルダン生まれの指導者の生い立ちと、彼がイラクで徐々に勢力を拡大していく様が描かれています。
この分野、個人的には全く詳しくなかったので本著は良い機会になりました。アメリカのイラク占領前に、ザルカウィはビン・ラディンから資金援助を受けていたんですね。
テロを起こす側、守る側双方の目線で描かれるため、登場人物は非常に多いのですが、綿密な取材に基づいた記述は臨場感があって、一人ひとりのキャラ立ち(と言っていいのやら…)がハッキリしていて読み物として面白く読み進められます。さすがピュリッツァー賞受賞作品。
読んでいて苦々しく感じたのは、アメリカがイラクで実施した政策のまずさ。(後からなら何とでも言えるのですが…)「衝撃と畏怖」作戦と称して戦術的には勝利したものの、現地の統治機構を破壊してしまって行政が成り立たなくなり、そこをザルカウィにつけ込まれてシーア派とスンニ派の対立構造、加えて米軍も含む三つ巴の争い状態が生まれてしまう。
上巻で面白かったのはヨルダンの情報機関GIDの活躍。「赤い悪魔」なんて二つ名がついている人物もいて、テロ計画への対処なんかのエピソードも面白かったです。
しかし本著、校閲不足の感が否めない。目を挙げると…ってどうやって挙げるんだ!似たような誤字脱字が5箇所以上あり、見つけるたびに集中力が削がれてしまったのが残念。
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ピュリッツアー賞受賞作。ザルカウィというジハーディストを中心にイスラム国の興亡を描いている。下手なスパイ小説より面白い。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou25601.html
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ニュースでは知れない、テロという一言では理解できない、人々の生い立ち、経験、それが積み重なってある現状。
フィクション以上にことの運びがうつくしく、想像以上におそろしい現実。
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2017年ごろにビル・ゲイツが、「この夏読むのにおすすめの本」としてあげていた本で、ピュリッツァー賞も受賞している一冊。その頃から読みたいと思っていたが、やっと読むことができた。イスラム過激派がなぜ生まれたのか、アメリカはイラクで何をしたのかがわかり、当時テロリストとして有名だったザルカヴィの姿もこの本を通じて色々なことがわかる。
まず、ザルカヴィをテロリストの中で英雄として有名にしてしまったのはアメリカが原因なのだ。当時のブッシュ政権は、9.11の後、イラク政権ととイスラム教過激派とのつながりを疑っており、実際には全く繋がりが無かったのにも関わらず、当時のフセイン政権が危険とみて戦争を仕掛けてしまった。
その時に、過激派の中のリーダーとして、脅威でも無かったザルカヴィを、国務長官自らが真偽が曖昧な状態に関わらず名指しで危険人物として世界に向けて発言をしてしまったのだ。
結果として世界的に有名となった彼は、アメリカに戦争を仕掛けられ、実権を奪われたスンニ派の権力者たちとのコネを獲得し、逆にイラク情勢を不安定化させるテロを次々に仕掛けていく。
彼が狙ったのは、アメリカを孤立させ、スンニ派とシーア派を対立させて、真のイスラム国家にするために内乱の聖戦を起こさせることだった。これは、実に見事に実現していく。
逆に当時のブッシュ政権が、いかに都合の良い情報だけを取捨選択して戦争を起こし、現地に混乱を招いたか。他国に口出しをするにも関わらず、イラクをどうしたいかのビジョンはなく、権力者から力を奪った結果、秩序を保つための組織を壊滅させ、国を不安定にしてしまっただけなのである。
何のための戦争だったのか?まさに、アメリカの失態が非常によくわかる内容だった。
また、一方でザルカヴィの人間性も非常によくわかる内容でもある。彼は自分が英雄であるという大きな自尊心と、イスラムの教えに対して背いてきた過去に対する激しい罪悪感の二つを持っており、結果的にまさに「命をかける」ことを恐れない、徹底したイスラム原理主義者として周囲に一目を置かれる存在になっていった。
元々はザルカの街でゴロツキであり、頭も良くなかった彼が、世界的にネットワークを作り、数々のテロを仕掛け、様々な国を巻き込んだ宗教戦争を起こしていったのだが、どうしてそこまで適切な戦略が書けるようになったのか?そこだけは解せないが、取材をベースにした事実の物語であり、まさに手に汗を握りながら読める一冊。
戦争は、本当に誰が悪いとは言えないものだと感じる。
とはいえまだ上巻、下巻も楽しみ。
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トランプが来日したね。
ってな事で、ジョビー・ウォリックの『ブラック・フラッグス 「イスラム国」台頭の軌跡 上巻』
ヨルダンのチンピラから世界を震撼させるテロリストになったザルカウィの話。
宗教、信仰、侵略、報復、時代、カルト、色んな要素が絡み合って誕生したテロリストのザルカウィ。
時代背景がズレてたらザルカウィはこんなに成らなかったんじゃないかと思う反面、他の首謀者が現れてたのかと……。
永遠に終わりのないジハードに洗脳させるカルトが出来るなら、平和に共存出来る洗脳をしてもらいたい。
東京オリンピックでテロが起こりません様に
2017年46冊目