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(まるで作中のイタチのように)学部・修士と自然言語処理分野にいたものとして,また今般の人工知能ブームに巻き込まれているものとして,個人的には「お話」にこそいろいろと思うところがある.
そんな個人的な体験は別にしても,「解説」部は想定読者の知りたいことが抜け漏れなく書かれていることや,わかりやすさなどをふまえると,広く読まれるべき良書だと思う.
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ここ40-50年の自然言語処理(あるいは単にAI研究)の歴史を、専門知識を持たない一般人としてのイタチが見ていく対話形式の物語。とても面白い。いわゆるAI研究は、今、一般人から見たとき、期待しすぎな部分と、なんでそんなことが出来ないの?な部分が同時に存在している。それらを皮肉してるようにも読めるし、著者は(当然)そちら側の人間であるので、こういう事情を分かってくださいよ、と大衆に訴える本である。
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予想外に面白かった。
自然言語処理の入門書として最適では。
言葉を理解することの難しさが分かる。
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知り合いの人工知能研究をやっている方が、「人工知能のできること・できないことが具体的にイメージできる、とても良い本」と言われていたので、早速読んでみた。「イタチ」に仮託した物語は面白く読めるし、言いたいことが事例とともに書かれているので説得力がある。確かにお奨め。
本の内容は、擬人化したイタチが、言葉がわかるロボットを作ろうと、他の動物たちが持つ技術を頼りにして機能強化していくというもの。その中で読者は、自然言語認識の課題と解決策について理解が深まっていくという形になっている。手に取る前は、擬人化しているので、自然言語研究のコアな部分をすっ飛ばして単純化した話になっているのかもしれないと思っていたが、そんな心配は無用であった。著者がしっかりとした技術知識と全体を把握する能力とそれを上手く表現にまとめる力があるので、この本が成り立っている。
著者はイタチの物語を通して、自然言語の理解には次の技術要素が必要だと説明する。「言葉が分かる」ということには少なくとも以下の要素が含まれており、少なくともそれらをうまくやり遂げられなくてはならない。
1. 言葉が聞き取れること
2. おしゃべりができること
3. 質問に正しく答えること
4. 言葉と外の世界を関係づけられること
5. 文と文との論理的な関係が分かること
6. 単語の意味についての知識をもつこと
7. 話し手の意図を理解すること
ディープラーニング技術が必要なもの、充分な質の高い学習データが必要なもの、豊富な知識ベースが必要なもの、いわゆる「常識」が必要なもの、レベルに応じて必要な要素は変わってくる。また、それぞれ要素は互いに独立ではなく、互いに複雑に影響し合っている。意味と意図の違い、多義語の曖昧性の解消という問題もある。
著者は、言葉がわかる機械を作るために全体に共通する課題を次の三点にまとめている。
A. 機械のための「例題」や「知識源」となる、大量の信頼できるデータをどう集めるか?
B. 機会にとっての「正解」が正しく、かつ網羅的であることをどう保証するのか?
C. 見える形で表しにくい情報をどうやって機械に与えるか?
その大変さは本書でイタチたちが苦労する様に象徴的に描かれている。一気に解決するようなものではなく、一歩一歩進めていくような課題である。
それでは、なぜ人間は「言葉がわかる」のか。それは現在の機械が言葉を理解する能力を持とうとして用いられるやり方とは明らかに異なるやり方で獲得された能力だからだ。著者は次のようにまとめる。
① 人間は言葉を習得するとき、生まれた後で接する言葉だけを手がかりにしているわけではない
② 言葉についてのメタな認識を持っている
③ 他人の知識や思考や感情の状態を推測する能力を持っている
これが人間の「言葉がわかる」ために必要であるとするならば、これらを機械に実装することは可能なのだろうか。進化の過程で言葉を獲得したことで人間は他の動物と異なる形で地球上で繁栄することとなったとされているが、一口に「言葉を獲得する」と言っても果たしてどのようにそれは成されていったのか、とても不思議で複雑な問題であるが、興味をそそるものでもある。
あとがきにおいて「言語能力の研究は、あまり報われない」と著者は嘆く。言葉の研究をしている、というと「何語の研究?」と聞かれる。日本語の研究と言うと、日本人なら誰でもできている日本語の何を研究しているの、と言われるらしい。機械による言語理解の研究と言うと、今は将棋や碁のプロに機械が勝つくらいなので、もうすぐできそうですよね、と言われるらしい。著者はロボットに東大の入学試験を解かせる「東ロボプロジェクト」に参加していたが、その中で言語理解について多くの課題が整理されて浮かびあがってきたことと、またそのことが適切に世の中に認知されてきたことが大きな成果だったと評価する。そして、この本もまた正しい理解に役立つことができればという気持ちで書かれたという。そうであれば、その意図はとても成功していると思う。誰もが思い付かず、やろうとしなかったフォーマットでそれを実現した。あとはより多くの人にこの本を手に取ってもらうこと、だろう。そして、著者が言語の研究も報われたと思うようになってほしい。ということで、ぜひぜひ手に取ってほしい。
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人工知能はどこまで人間に近づけるのか。
そもそも「言葉がわかる」とはどういうことなのかというのもストーリー仕立てで説明。
まるで寓話のようで面白かったです。
このシリーズでもっと出してほしいですね。
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かわいい版画の挿絵と童話みたいな筋運びで、機械に言葉をわからせるのに立ちはだかる壁の、途方もない高さを実感させてくれます。ご飯を炊くたび siri に気安く「タイマー6分」とか言ってるけど、これだけの事でも「よくわかるなお前…」という気持ち。
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「言葉を理解する」とはどういうことか、を童話風のストーリーで紹介。各章の前半がストーリー、後半が解説になっている。
一言で言うと、「巷に流布する(そして自分も抱いていた)、AIに対する夢とか希望とかを打ち砕く本」。
「え〜、AIって今のところそんなもんなの?!」と思う一方で、「AIが苦手なことを人間がやれるようにしなきゃ、すぐに食いっぱぐれるぞ」という危機感も煽ってくれる。
楽しようとして結局苦しむイタチが自分と重なって心が痛くなる。
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自然言語処理の難しさを段階を追って説明する。
面白かったのは最新のトレンドでは、文章を出現する単語を次元に見立てたベクトルで表現する方法が成果を上げているという点。でもそれだと単語の出現順序とか意味ないってことになっちゃうと思うんだけどどうなんだろうね。
わかりやすいしイタチがバカで面白いんだけど、前作、前々作があまりに面白すぎたので点数は辛めになってしまった。
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タイトルにひかれて読んだ。言葉がわかるロボットを作るために動物たちが知恵をしぼる。そもそも言葉がわかるってどういうことか?人間にとっては簡単なことをどうやって機械に判断させるのか?何が大変なのかを小説形式でわかりやすく読むことができた。他の著書も読んでみたくなった。
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人工知能の事前言語対応における思考過程がとても分かりやすかったです。どのように言語解析が発展していったのかがわかりやすく、何が問題点なのかもわかりやすいです。
最後まで読んだときに、主人公が「イタチ」なのもそれなりに意味があっんだなあ。と思いました。
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自然言語処理の研究者による著作。イタチ達が自然言語処理ができるロボットを作るという寓話と、解説によって構成。機械が言葉を理解できるようにすためにはどのようなプロセスを踏まなくてはいけないかがよくわかる。
面白い話だし、寓話部分の木版画イラストがいい味を出しているのだが、日本語横書きは読みにくい。
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「言葉が分かる」ってどいういうこと?をテーマに、AIのこと、人間のことを考える。
物語形式で読みやすく、言語について、コミュニケーションについて、人工知能についてなど、幅広い分野へ興味を広げることのできる一冊。
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人工知能について、まず最初に手に取るといい本だと思う。寓話と解説が交互に出てくる構成もわかりやすい。
主人公である”イタチ”の考えることは、人工知能に興味を持った人がごく普通に持つ考えで、会社で人工知能関連のビジネスの話が出てくる時に最初にぶつかる意見でもある。それがいかに間違っているか、的をはずしているか、をとてもよく理解できる。ホント、ビジネスでAIとか言ってる人、まずはこれを読んでほしい。
もうちょっと先のレベルまで知りたいひとは同じ著者の『自動人形の城』があり、同様のスタイルで書かれておりわかりやすくおすすめ。
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言葉の字面だけを捉えて、判断をすると色々と問題が出てくるのだと、言葉を分解されることで、改めて分かった。
周りの状況や、話し手と受け手の認識、文脈、句読点の位置等によって、随分と言葉の印象が変わることに気づかされる。
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パラ見の段階では長そうだし読みにくそうだと思っていたけれど、読み始めてみるとスルスル読める。物語に乗せると、書かれている内容が具体的により身近に感じられるので、手法として成功していると思う。版画イラストもとてもマッチしていていい感じ。逆説的に、抽象的な事柄について考えたり、言い表したりということを自然にできている「人間」が、すごいことをしている(できているのだ)ということに気付かされる。人間と同じように言葉を操る機械完成まで道のり(どの時点を完成というのかという問題もあるけれど)はまだまだ遠いなということを実感させられる。このシリーズ、他も読んでみたい。