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紙の本
刑事モノのツボを押さえつつ闇社会を暴く物語性が際立つデビュー作
2017/09/20 18:30
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投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
官能ジャンルのレビュアーとしてはタイトルに興味を抱くところだが、官能がメインの作品ではなく、あくまでも闇社会を暴こうとする闇刑事の物語である。普段はうだつの上がらない内勤の刑事が実は筋骨隆々でオンナ泣かせのテクも併せ持つ凄腕に変貌するのは『特命係長只野仁』を想起させる設定と言える。冒頭に眉目秀麗な女優が出てきたかと思えば暴力団とクスリに焦点が移り、その背後に新興宗教が見えてきてどんでん返しもあるというストーリーは読み手を飽きさせずに展開されている。
ただ、終盤ではピンチが訪れるものの、全体的には主人公のスキルの高さが災いしてか、割と容易く夜這いに及んでいる印象となる。主人公らしさという安心感はありながら、ドキドキするような場面が連続する流れではない。そもそも夜這いというにはあまりに堂々とコトに及ぶ振る舞いもまた高いスキルだからこそなのだろうか。
その夜這いだが、捜査対象が移っていく中でそれぞれの情報源となるターゲットの女性もまた変わっていく。その綱渡りならぬ女渡りを経て事件の核心へと迫っていくストーリーなのだがら女性達が多岐に渡るのも当然なのだが、官能がメインではないことから描写は至って淡泊と言わねばならない。それは男女が抱き合った途端に場面が変わるような、かつての2時間ドラマのような、それで終わりかいっ!と叫びたくなるような演出である。ただし、事件の元凶たる2人の男に狙われるメイン格のヒロインはいて、その場面に限っては官能描写もしっかり用意されている。実はこのヒロインの方が主人公よりもピンチの場面が多かったりする。
個人的には序盤から登場する美貌の女上司との行方が気になるところだが、それは互いの過去から主人公の矜持が許さない設定になっているために致し方なし……とは言え官能面では残念な気がする。主人公の凄腕からすれば篭絡も容易いと考えてしまうのだが、それは下衆というものであろう。主人公にとっての女上司はある意味で神々しい存在なのである。
しかし、一寸の官能虫に五分の下衆が宿るならば、もしも続編が出るのならば、あるいは、もしや、といった期待も抱きたいところである。
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