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タイトルの示すとおり、ゴーストの登場する7編からなる短編集。
幽霊といっても怖がらせるオカルトではなく、背景にある戦争や昭和の設定がうまく生かされていて、現実の出来事とリアルに結びついている。
亡くなった人たちの切ない思いを、今を生きている私たちが受け継いでいくことの大切さを静かに教えてくれる一冊だった。
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これだけ科学も医療も発達しているのに、話からにことは数え切れないほどある。
見えるものだけが真実だとするのはあまりに乱暴で短絡的だ。
本書は「ゴースト」にまつわる七編の物語だ。
『ミシンの履歴』
祖母が使っていたミシンを思い出した。
祖母は工賃をもらって仕立物をしていたそうだ。
幼い頃は手作りの手提げや服や色々なものを作ってもらっていたけれど、既製品の方がカッコよく見えて、使うのが少し恥ずかしかった。
それでも、祖母のミシン部屋は好きで、いつもそこにいたものだ。
私の思い出はともかくとして、戦前から戦後にかけてミシンがたどった歴史は九十九神と化したミシンの思い出だ。
必死で生きてきたあの時代。
そこに想いを馳せる。
『きららの紙飛行機』
少年と少女の物語。
ケンタが話すことはもはや現代人は何を言っているかわからず、外国語のようだ。
「浮浪児」のケンタは、いつか成仏できるだろうか。
できてほしい、と切に願う。
ケンタからもらった紙飛行機を、きららは飛ばし続けられるだろうか。
願わくばそうあってほしい。
『キャンプ』
手塚治虫の『日本発狂』を思い出す話だ。
物語の展開は全く違うのに、キャンプがそれを思い起こさせるのだ。
彼女たちはどこへ行くのだろう。
惑うことなく、光さす方向へ歩いていけたら良いのに。
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幽霊をモチーフにした7編の連作集。
7編いずれも、先の戦争と戦後に何らかの関わりを持つ。
ただ、連作といっても、各作品の舞台や登場人物には何の繋がりもないし、作風も見事なくらいバラバラ。
ネット上の感想をいくつか眺めてみると、戦争孤児を題材にした『きららの紙飛行機』、SFっぽい作風の『キャンプ』あたりが好評価のようだが、反戦臭が直截的過ぎてやや鼻につく。
人を描いて教条的になるよりも、『原宿の家』『ミシンの履歴』『廃墟』など、建物やモノに化体して時の流れを感じさせる作品が好ましい。
そういえば、作者の直木賞受賞作は『小さいおうち』だったね。
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今もどこかにいるゴーストたち短編。
原宿のあった古い家で出会った女の正体、少女、若い女性、老婆。
古道具屋にあった今は動かないミシンが辿ってきた過去。
浮浪児だったケンタと、母に育児放棄されている現代の少女の交流。
認知症になったおじいちゃんが、しきりに言っていたリョウユーのこと。
どこに向かっているのかわからない死後のキャンプで、思いは残された息子たちのこと。
台湾の知り合いと見に行った日本の廃墟。
駆け出しのゴーストライターが飲み屋で出会った、ゴーストについて熱弁する彼ら。
かつて世界中であった、日本でもあった戦争の気配。
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*目をこらすと今も見える鬱蒼とした原宿の館に出没する女の子、二〇世紀を生き抜いたミシン、おじいちゃんの繰り返す謎の言葉、廃墟と化した台湾人留学生寮。温かいユーモアに包まれ、思わず涙があふれる7つの幽霊連作集*
幽霊のお話と言うよりも、目には見えない、あたたかくて柔らかくて大事な何か…のお話。特に「ミシンの履歴」と「きららの紙飛行機」が心に染入る。中島京子さんの、淋しくてやるせないのにほわりと温かな何かが残る読後感が好き。
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オムニバス短篇集で気に入った作者の本を読んでみた。
予想通り面白かったので他の作品も読んでみたい。
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7つの短編を収録。一編ずつ独立した話だけれど、タイトルの通り、どのお話にもゴーストというか幽霊というか、この世にはもう存在していないものが共通して出てきます。不思議で悲しいけれど、全然怖くはありません。祖父に会いに来ていた「リョウユー」のことを想う孫娘の話と、少女きららと少年の霊の話が好きでした。キャンプのお話も印象に残りました。
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ゴースト(幽霊)をテーマにした短編集。
実際に幽霊の登場するものもあり、昔のものの魂みたいなものだったり、様々。
「キャンプ」に出てくる逸話が、「おさるのジョージ」の作家夫妻の話とそっくり、と思ったら、それをモデルにしていた。なぁんだ(笑)
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うーん、普通。良くも悪くもない。
幽霊にまつわる話について短編が7話。
「きららの紙飛行機」と「亡霊たち」が好き。
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魂が過去から未来にわたって繋がってるような温かな話と、それをぶちっと引きちぎるような冷ややかな話が一緒の本に入ってるのが面白い。
わたしはベタと思うけど、きららの紙飛行機が好き。
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少し奇妙で、謎のまま終わってしまったお話もあり、個人的にはインパクトが弱く感じ、あまり話に入っていけなかった。
でも、第5話の「キャンプ」は、話が進むに連れて状況が分かってきて、最後の1行はぐっときて、涙がこぼれそうになりました。
そして、最終章以外のすべてのお話に戦争が絡んでいて、作者の社会や政治の動きに無関心な人が多い事に危惧されている気持ちがすごく伝わってきました。
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幽霊にまつわる7つの短編をおさめた1冊。どこかで紹介されていたので手に取ってみたのだが、思っていた以上に良い作品集だった。捨て作なし、どの掌編も味わい深くて余韻がよい!
中でも好きな作品は…となると、読者の好みによって分かれるんだろう。俺はしいて上げたら「きららの紙飛行機」「ゴーストライター」かな。
それにしても、中島京子という作家をマークしてなかった自分の不見識さがもう!こんだけエエ短編を書くのだから他の作品も期待大!過去作追いかけることにしよう。読みたい本がまた増えるぞ(笑
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幽霊の非現実的な話なのに、不思議と共感したり、なるほどと思ったり。
第6話の廃墟はもしかしてうちの近所のあそこがモデルかもというお話だった!
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題名からホラー系の小説かと思っていたら違った。
幽霊譚というよりも、不思議な雰囲気の短編集。
個人的には「ミシンの履歴」がとても良かった。