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「土の中の子供」が衝撃的だった・・中身は忘れたけど(えへへ)~一部:民主国家R帝国はB国と交戦状態に至った。R帝国の最北の島コーマ市はY宗国の6本足の無人AI兵器が上陸し、地上兵も投入され侵略を受けている。生き延びた矢崎トウアは逃げ遅れた女を救おうと地下から出て行き、Y宗国の女兵アルファと一緒に逃げることに、R帝国の反撃が始まったのだ。野党党首・片岡の秘書である栗原は、コーマ市に新型ウィルスのキャリアである羽蟻が入り込んでいる情報を地下抵抗組織Lから入手し、与党国民党の大物から石油獲得のための今回の仕組みを聞かされ、与党議員になるために記憶の一部を消す薬を飲むように求められる。アルファはかつてこのR帝国に難民認定されたが、ヨマ教の信者の証である顔の入れ墨をからかわれ、栗原に救われた思い出を持っているのだった。アルファは自分が狙われていることを覚悟し矢崎に軽い毒を盛って眠らせ、ウィルスに汚染された自分の髪を置いて地上に出て行った。(栗原の腹違いの弟が矢崎)二部:栗原に情報を渡す際にLと名乗ったサキは組織の第三世代でハッキングで情報を手に入れている。たまたま見た生中継のテレビでXY人の髪を掲げる男の姿から、ウィルスが病原を顕すのがXY人だけであることを知った。栗原は党の幹部・加賀の別荘に入れるLのメンバー・藤岡の協力を得て、記憶を消す薬を飲まずに出てきた。サキは証拠を手に入れ、情報を拡散させるために無線を使って矢崎に接触し、栗原も使って信用を得た。しかし、栗原のHP(HumanPhone)は加賀の別荘にいる際にプログラムを入れられ、すべての情報を党に流していたのだった。野党のトップ片岡はR教の信者で,孫もいて癌を患い未承認新薬が欲しくてLを党に売っていたのだ。党に捕らえられた矢崎は絶望の中で薬三錠を飲まされ、栗原は片岡に別れを告げサキと人混みに紛れて逃げている最中に射殺され、HPがR帝国全土に流した情報の反響をID提示の要らないラブホテルで見ていたサキは加賀の逆にハッキングされた。不都合な真実を誰も信じないのだった。加賀は世界大戦が始まり、R帝国を舞台に投資という名の博奕が始まるといい、R人だけにはワクチンを打たせて新型ウィルスを蚊を使って広めていると言い、退屈だからサキの行動を野放しにすると言い放つ。記憶をなくした矢崎は吉川として妻の美香と暮らし、ある朝、戦争が始まっていることを知る~近未来モノを書くのって怖いだろうなぁ。ちょっと前まで夢物語だったのが現実になっているから。中村さんは、イマの具象を色々取り入れている・・AVサイトと不能男性の関係、ガールズパンツァー、無人攻撃機、AI、ネット右翼の書き込み、たった一つの失言、フェイクニュース
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近未来の架空の世界を舞台に描いた、いわゆるディストピア小説。
とある島国のR帝国が開戦した朝から物語は始まり、情報統制や、AI、テロ、移民問題、ヘイトスピーチ等々、昨今日本、世界で問題となっている様々な要素を誇張して読者の危機感を煽ろうという内容だ。
ところどころ、そうした現実への問題提起など、面白いことも言ってはいる。
移民の子だった登場人物の一人に、こう語らせる。
「受け入れるというなら、なぜ迎えに来てくれないのだろう?私達に自力で、危険な海を越えさせようとするのだろう?」
なるほど、寛容な態度を見せる国家も、かなり建前なところもあるということだと気づかされる。
「わざわざ他人にアピールしなければ、自分を幸福と思えない人達。自分も含め、人の目ばかり気にしてしまう人達。」
SNSに幸せな自分の姿を投稿する「リア充」に対する皮肉だろう。
そんな多くの現実を織り込みながら、架空の世界で物語は進行していく。
架空の世界の架空の島国R帝国では、絶対権力を有する「党」が国民を支配し、国家に対する批判的な意見は監視カメラや集音装置で拾い上げられ、反逆者はマスコミや世論を通じて社会的に抹殺、あるいは本当に”消される”世界。情報統制はメディアを牛耳るほか、スマホの発展形であろう、高度な人工知能を搭載した「HP(エイチピー)」と呼ばれる端末を人々に持たせ、実はその管理も「党」が握っているという建付けだ。
その党も少数の人間が支配、人々の記憶を消す薬を開発した製薬会社の大ボスが黒幕だったり、世に起こる戦争、テロも実は諸外国の陰謀が張り巡らされて起きているという「陰謀説」に立脚した世界観の中で描かれている。
その中で、国家の嘘、欺瞞に疑問を抱いた一般人矢崎、R国に攻め込んだ側の女戦士アルファ、野党幹部秘書の栗原、地下組織のサキなどが、真実を求め『抵抗』を試みるお話。
マンガだな。マンガが悪いと言ってるわけではないが、世界の歴史は全て裏で操っている者がいるという陰謀史観や、現状の事象の極端なデフォルメに終始した世界観が、なんとも幼稚で目新しさがなかった。
今の世の中の事実を、物語として換骨奪胎を試みた作品としては『カエルの楽園』(百田尚樹著)などもあったが、あれほど稚拙な置き換えではなく、多少は練られてはいたが陳腐。国家の名称はアルファベットで表される。一番の同盟国はA国、C国は餃子が主食だそうだ。笑止。R帝国のRはなにを暗喩したものかとあれこれ想像力を駆使しながら読み進んだところ、
「左派は個々の幸福を、右派は全体の幸福を見る。その前提に立ち一般的に言えば、左派はその世界を拒否し、右派は肯定することになる」
という文章が出てくる。そして国家に反対する地下組織がL。なんのことはないRight(右翼)とLeft(左翼)か。ヒネリがないねぇ。
「ポケモンGO」を模した、「移民GO」(地域に住む移民を発見していくゲーム)が登場した場面など鼻白むというか、描くにしても悪趣味すぎるだろう。VRをちょっと発展させて実在の人物でポケモンGOをやったら、なんて宴席の話題でのバカ話。その延長程���の発想だ。
そんな陳腐な世界観の説明に大半を要した第1部。第2部で多少展開があるのかと期待するが、謎解き部分が、端末HPに入っていたデータのハッキングで容易に判明(栗原が仕える野党議員片岡の正体)、黒幕加賀の独白で語られるとか、やっつけ仕事もいいところ。陳腐だけどせっかく築きあげた世界なんだから、その中で予想もつかない展開で読者を魅了して欲しかった。ほぼほぼ出オチ的な作品。
世界の在り方、歴史の真実(とやら)を、若き反逆者たちに滔々と語って聞かせる大人たち。洗脳しようとするその口調は、読んでいるうちに、そのまま著者のもののように思えてきて薄ら寒い感じさえする。
著者は、単行本であっても「あとがき」を記すことを常としているそうだ。構想、筋立て、訴えたかったことを簡単に記すらしい。今回の作品にも、上記のような陳腐な表現になってしまった言い訳のような短文が付されてた。 不要。
そして近著の「あとがき」の最後の決め台詞らしい、「共に生きましょう」。
この物語の世界を牛耳る黒幕が囁いているようで、これまた非常に気持ちの悪さを覚えてしまった。
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分かり易すぎる登場人物たち。
この作品の特徴である不自然な分かり易さは、政治云々の長々とした語りよりも、不意に巻き起こる色恋シーンで如実に現れる。「……お前は私の、……彼氏だな」などという今時少女漫画にも登場しないようなセリフや「付き合ってください」「私も付き合いたい」といった中学生の告白シーンのような謎めいたやり取り。奇妙である。現実というのはもっと複雑だし、登場人物たちみたいにこんな単純じゃないと、私たちはそう思うだろう。
一方この本の中には、現実が「小説」という形で再現されている。小説として読むと、なんて馬鹿馬鹿しいストーリーなんだろうと思うことばかりだ。R帝国の人々がその小説に向ける視線も、不可解な異世界を覗き見るときのそれである。私たちは小説の中の人々を眺めて単純だなと思う。一方で、小説の中の人々も小説の中の私たちを見て単純だなと思っている。この構造が、仕掛けだ。
そういえば、加賀はこう言っていた。「文化全体のレベルを、一見わからないように少しずつ下げていくこと。くだらないものに人々が熱狂するくらい、文化的教養を下げていくこと。」
文化的教養の下がった世界での出来事は、単純だしどこか不自然に見える。でも私たちのこの現実を、私たちがこの小説に投げかけた視点と同じところから見てみたら。
現代への諦観を超えて、それでもこの小説が存在するということそのものが紛れもない希望なのかもしれない。
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この国への痛烈な批判。中村さん、テーマが大きくなるにつれ、小説としての面白さが薄くなっていく印象が・・・
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読みはじめ、気色悪い気持ち悪い
近い未来を強制的に見せられる感じ
不快感
私がTwitterやインスタやらない人間だからか?
私は自分の両腕で抱えきれる分しか
考えられないし、それを一番大事にしたいと思う
それじゃダメなのかなぁ
でも、おもしろかったよ
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Y国がR帝国に侵攻してきたと思われた戦争は、R帝国の中枢が仕組んだものであった。R国はY国にある資源を確保し、今後国を繁栄させて行くことを目的に、中枢に批判的であったコーマ市をY国に攻撃するよう手を回していたのである。すなわち、R国は、自国民に対して情報操作を行うことで、全体主義国家を作り上げ、自衛のための戦争として正当化することに成功したのであった。
野党党首秘書の栗原と民主主義や多様性の実現を目指す団体「L」のサキは上記の国家党(R国の与党)の策略を知り、R国の全国民に情報を流す。しかし、人々が欲しいのは真実ではなく、半径5メートルの幸福なのであった。自分たちの価値観・良心を崩したくないと思う人々は、国家党の理念に反するような信じたくない事実を排除するため、世論は動かなかったのであった。
政治や戦争、犯罪など社会的な問題に深く切り込んだ作品である。著者自身が、現在の日本は右傾化している、全体主義国家へ向かっていると危惧を持ち、本作を通じて警鐘を鳴らしていると思われる。
『教団X』もそうであったが、著者の作品は、人々が普段あまり考えない闇の部分、裏の部分と我々が暮らしている社会との繋がりを想起させる点において興味深い。特に、政治を司る者と様々な利害を有する者が我々の想像を超えるところで癒着・談合している可能性を示唆することで、我々国民にクリティカル・シンキング(情報を鵜呑みにせず、一度批判的に考えること)の必要性を説いているのではなかろうか。
これほどメッセージ性の強い本は稀有であり、表現の自由の媒体としての本の必要性を強く感じた書であった。
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架空の未来を描いた作品であるが、描かれている各国が現在の国々のまさに延長上にあるように思えて仕方なかった。人の欲求はきりがないというが、未来の世界において、現代以上のものになっているのだろうか。金と権力がすべてという時代がリアルに現実になってくるのかもしれない。
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R帝国という架空の国の架空の戦争のお話ですが、
HP(エイチピー)といわれる感情のある携帯端末や
2割の富裕層が8割の貧民層を支配するためにわざと世論を賞賛させたり炎上させたりするところは、思いっきり日本を風刺しています。
普通の物語を期待すると、なかなかツッコミどころ満載なのですが、これはそういうお話ではないのです。
強烈な風刺小説。
読んで笑ってる自分のこと、そのものも風刺されていることに気がつくと、背筋がぞーーっとしますよ。
党の幹部である加賀の独白を抜粋します。
「私はずっと思っていた。国を豊かなまま思い通り支配するために必要なのは、一部のエリートだけを残し、残りの国民をチンパンジーのように愚かにすることだ…
まず文化全体のレベルを、一見わからないように少しずつ下げていくこと。くだらないものに人々が熱狂するくらい、文化的教養を下げていくこと。ほんらい学歴と教養は関係ないが、たとえ高学歴な人間であったとしても、教養という言葉に虫酸が走るようにすること。馬鹿な者たちが上げるネット上の大声に社会が萎縮することで、馬鹿によって社会が変わる構図はもうすでにできている」
これはもう、「近未来」というより、「現在」ですよね(汗)
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AIの発達した近未来の世界で、国家の策略による戦争に翻弄される人々を描いた長編小説。
わかりやすくテンポの早いストーリー展開で読ませるが、この作品の本質は小説の名を借りて作者が訴えているメッセージにあるだろう。
登場する国々は、名称こそ架空ではあるものの、背景からは日本やアメリカをはじめ、現実の世界をなぞっていることは明白だ。
過去の戦争を「小説」という形で分析し、痛烈に批判する。さらには、情報操作を利用した政府の陰謀、政府の犬となったマスコミ、何より愚かなチンパンジーとして支配されていることに気づかずにネットで騒ぐ一般人など、現在の私たちの延長上にあるかもしれない未来に警鐘を鳴らす。
日本だけでなく、世界的な規模での異様な国粋主義、右傾化の加速する現代において、いったい私たちには何ができるのだろう。個々の無力さを痛感する。
同時に、皮肉、風刺を通り越して種々の愚かさを真っ向から見せつけられ、一人ひとりが未来のために危険に気づくことから始まる第一歩の重要性を考えさせられる、力作だった。
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いまだからこそ、色々考えさせられる風刺に満ちた小説。風刺という表現とはちょっと違うかもしれないが。文章は硬めで、小説としてはあまり読みどころを感じないが、最後の部分の独白は、力強く迫って来るものがある。
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近未来を描き、現代を斬る
読み方によっては現代社会小説だな。政治的な話が多くなるから、少し不得意。ダブル主人公がまだ残ってるから、続編出たらうれしいなぁ。つまり、長いけれどもスッキリとした終わり方とは思えないってことかな。
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民主国家とは名ばかりの一党独裁国家「R帝国」。隣国B国への宣戦布告も間も無く、突然Y宗国からの激しい空爆に襲われる。混乱の中、逃げ惑う市民。その中の一人である主人公矢崎は、危機的状況をY宗国の女兵士に救われるも、恐ろしい真実を知らされてしまうのだった。
大変な読書家でも知られるお笑い芸人の又吉直樹やカズレーサーが絶賛した事でも知られる、ディストピア要素の全部盛りィ!の様な作品。「抵抗」という単語が人々の記憶から消えてしまう程当たり前の様に成される情報統制や洗脳、行き届いた監視体制、市民の不満の捌け口として用意された移民、などなどなど…。
筆者はこのまま日本が右傾化していったらどうなるか…を想像しながら執筆されたそうですが、現在私が住んでいる半独裁国家で日々目の当たりにしている様な事が満載で、「あるある〜」と思いながら読んでしまいました…。「人々が欲しいのは、真実ではなく半径5メートルの幸福なのだ」という名フレーズを体現したかのようなエンディングも非常にリアルです。
著者の作品で初めて読んだ『土の中の子供』が好きではなく、他の作品を食わず嫌いしていたのですが、本作はテンポも良く、純粋に面白いです!日本の「今」と比較しながら読んでみてください。
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個人的には、合わなかった。
何かを風刺しているようで、現代社会の危険性を暗示しているようで、大衆の性向を示唆しているようで、もの凄いどんでん返しのストーリーを描いているようだが、全体的に支離滅裂に思える。ポジティブな共感も、ネガティブな反感も感じない。なぜだろう。
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面白かった。感慨深いものだと思った。
情報操作だとか、メディアだけを信じてはいけないと初めて感じたのは尖閣諸島問題があった時から。また何かしらのインタビューを政治家とかにしてもメディアは話のコアをカットして視聴者の気を引ける部分のみを放送していることがあったことを、この本を読んでて思い出した。(大学の講義)
世論が100%正しいわけではない。だってその世論は作られたもの、操作された結果かもしれないから。人と同じであるほうが楽/安心と考えるのは日本人の特徴でもあるからこそ、その情報は本当に正しいのか、(時事問題なら)他国はどう見ているのか等情報取集に興味を持つ必要がありそう。
『異文化』においても、全体だけを見るのではなく個々人を見る大切さ。環境が違えば考え方や行動は異なるけど、国全体だけをみてその人を判断してはいけないと思う。同じ人間であり、感情があり、性格があり、考えがある。未来における共存の重要性だとか、国際理解だなどをしみじみ思う時があった。
最初は「変な設定〜」と思いながら読んでたけど、最後はこの本を選んでよかったと素直に思えた。
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中村文則さんの本を読んで、ディストピア小説好きなのかもって気づいた。
極限の設定で描く人間の極限に興奮する