紙の本
救われぬ思いを抱いて。
2018/01/23 10:54
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投稿者:kaoriction - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終えてすぐに最初のページに戻った。
途中まで冒頭の「結婚相手」は小野君なのだと思って読んでいたからだ。それが小野君ではないとわかった上で読むプロローグ… なんとも言えない鬱積した感情が身体の奥の方で浮遊している。
終始、重くぼんやりした空気感。浮遊感みたいな。水の底で、川の底で、潜って膝を抱えているような。閉塞感みたいな、そんな感覚だった。
最後まで、決して楽しい読書ではなかった。イライラも募るだけ募って、個人的には不完全燃焼のままに読み終えた。
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泉は、自分で思っている以上にしたたかで、狡くて、本当は弱くなんかなくて 誰よりも強くて、男を惑わす女だと思う。正直、全く感情移入もできず、私のキライなタイプだった。
葉山先生は…狡い という言葉では言い尽くせないほどのダメな男だと思う。
お互いがお互いを必要としていた…?
果たして、本当に必要としていたのだろうか。
美化していただけのようにも思えるし、愛だと気づかぬうちに愛していた、というよりも、恋に恋してしまった自分たちを「愛」という尊い物語に仕立てあげちゃったのかな、という印象。
そんな中で、志緒と黒川 はこの作品の唯一の良心であり、真っ当な二人、だった。真っ当な感覚のこの二人がいたからこそ他者が浮き立ったように思う。軽くしか描かれていないが、志緒だって、黒川だって、せつなく 苦しい思いをしていたのだ。それなりの思いで愛を。。。
そして小野君。あまり肯定的な意見を聞かないし目にもしないけれど、私は 小野君には頷ける。葉山先生や泉に比べたら、自分の気持ちに素直だし、何より他人を傷つけてはいないんじゃない? 泉は彼の言動によって自分の気持ちに気づいただけだ。傷つけられたわけではない。むしろ傷つけたのは泉の方。
そんな風に私は感じてしまった。
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決して楽しい読書ではない。
人間の狡さ、非情さ、身勝手さを じわじわと刷り込まれるというか。
葉山先生の良さもわからないし、泉の、とにかく個人的には 泉の態度が腑に落ちなかったし。
それなのに読んでしまう、気になる のは、どこかで何か「救われる思い」を期待していたからかもしれない。どこかで誰かが救われることを。
けれど、結局、誰も救われなかった。
柚子も然り、新藤君も然り。
葉山先生も泉も、小野君も。
結局、「あの頃」の思いから逃れられることなくみんな生きてゆくのだろうな。もう過去になった、と思ってもそれは薄まってしまっただけで消えることはない。
ずっと、ぼんやりと薄くなりながらも「あの頃」が完全に消えることなどない。
そんな、せつなくも苦しい人生たち。
「きっと君は、この先、誰と一緒にいてもその人のことを思い出すだろう。」
一緒にいる相手を遠い存在に思わせて。
せつなくて苦しくて。
*
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しかし、何が凄いって、この作品を若干22歳で書いた島本理生だ。
「早熟の天才少女小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。」
と言われているが、確かに、これを22歳で書いた彼女の 10年後、20年後、30代、40代の作品は一体どんな風になっているのか…読んでみたいと思った。
紙の本
重く苦しい
2017/11/05 02:57
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投稿者:ルナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画化で話題の本です。すごくじっとりした感じで、重く苦しい。恋することで傷ついて、でも好きな気持ちを止められなくて、そんなどうしようもない感情が描かれています。
映画とは異なるラストが、どうしようもなく辛いです。
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私的に恋愛もので最高傑作。単行本持ってるのに文庫まで買ってしまった。
いつ読んでも泣けてしまう。電車で読める文庫本はちとやばい。
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3/7 いままでの島本理生のものにくらべて若干物足りない感じは否めない。初の長編だから?最初と最後らへんのテンションの高さとか、逼迫したような世界観が希薄で突然盛り上がる感じとかが苦手だった。ラストはよかったけど。なんか。むーん。
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《読んだ時期:2008年3月》
最近はノンフィクションが続いた中、久しぶりの小説。しかも恋愛小説なのだが、誰もが持つピュアな思いが描かれてあり、ただそこには様々な葛藤もあり、小説であまり身近では起こらないであろうことにも関わらず、何となくリアルであった。
ペースがのんびりしているように感じ、もう少しコンパクトな方が良いなと思ったが、この丁寧なひとつひとつの心の描写が、このピュアさを生んでいると思うと、物語のテンポはこれで良いのかもしれない。
ただ、私は中だるみしてしまった。。。
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ずっと気になっていたのだけど、文庫になるのを待ってました(笑)
主人公のキャラのせいなのかこの作家さんの持ち味なのかわからないけど小説全体のゆったりとしたテンポが結構好きです。
印象的なセリフや描写も多かった。
ただ、どうしても葉山先生の魅力が理解できませんでした。残念。
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目新しいわけではないけれど私は好きだ。息の詰まるような静かな密度の濃い空気が上手いこと自分の中に入ってきたから。エピソード的にはひっかかるものも正直あるのだけれど、なんとなく、空気感が好きで読んでる間はすごく集中して話に沈めた。
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「怖いのはすぐそばにいなくなったことじゃなくて、これをきっかけに、お互いのいない生活に慣れていくこと」
うわー。確かに。泉と葉山先生の会話の端々に見られる、どっか深いとこで繋がっててお互いを理解しているような感じがいい。
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祝★文庫化
\^○^/待ちわびました!
発売後、慌てて買いました(笑)。
読後、文庫落ちなど待つのではなかった、と深く後悔。
素晴らしかった。
島本女史、初読作品でもあるが、ついていきます!
一作目から、ついていく宣言は、時期尚早かな?
まぁ、今後のことは、追々ね。
恋愛小説を好むタイプではないが
決して嫌いではない。 薦められればガンガン読むし
評判を目にすると、自分も評価したくなる。
この作品も、普通の恋愛モノだろうと、高を括っていた。
それなのに・・・
プロローグのセリフから一気にやられました。
もうこれ以上の作品はない!って言えるほどの
正統派恋愛小説だった。
設定から人物像、主人公を取り巻く環境に
登場人物たち全て、が何一つの違和感なく、綴られてる。
とても細かく、くどいほどに緻密な描写なのに
サラッとしていて、不思議。 リアルすぎるんだ。
過去(学生時代など)、一人暮らしの経験のある人も、
今現在、一人暮らしをしながら学んでいる人も、
主人公達の生活には、共感三昧ではないだろうか。
私自身、懐かしさと、本書との邂逅が相まって、
物語の世界にどっぷり、はまり込んでしまった。
人を愛するとは、どういうことなのか。
少なからず答えの一部は、本書にあります。
言葉がなくても、真意を感じることが出来る相手って、
人生の中で、そう何人もめぐり合えるものでは、ないですよね。
ラストの泉の涙に、最近感じたことの無い
苦しい情が溢れました。
あまりに綺麗な恋愛関係(純愛というい意味ではありません)の所為なのか
読後の爽快さが、また不思議な作品です。
これは、ちょっと忘れられない作品になりました。
しかし、平成12年に刊行された単行本を、
平成20年に文庫化って、随分な時間を要したのね。うむ、何故?
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片思いをしているときに読んだので、一文一文が胸に浸みて入ってくるようで、読むのに時間がかかりました。
ぬるい水を咽喉に流し込むように、という感じです。のどは渇いていて、欲しているのに、どこか読みたくないような。
恋愛のどうしようもなさ、とか、狂おしさ、そういったものが丁寧に描かれていて
他のいつでもない、今読むべき質量のある小説でした。
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恋愛って大変だなー。と想う反面素敵だともおもいました。
愛って人それぞれの表現の仕方があるんです。
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今まで読んだ恋愛物の中ではダントツ一位ですね。
すごく激しい感情なのに文章はむしろ冷たさがにじみ出でいるような綺麗な言葉が印象的でした。
だいぶ前に呼んだのですが最近やっと文庫化されたので速攻で入手しました。
これからなんども読み返してまた書きます。
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切ないけどとても素敵な恋のお話
ただ単純なだけじゃない
いろんな人の思いの交差。
とても大好きです。
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恋愛小説はすきじゃないけど
これはおすすめ。
死んでしまうくらい嫌なことなんて簡単にほうり出してしまってかまわないんだ。
君よりも苦労してがんばっている人がいるんだから君もがんばれ、なんて言葉は無意味で、
個人の状況を踏まえずに相対化した幸福にはなんの意味もない。
(中略)
君が本当に今の場所から離れたいと思ったとき
僕はそれを逃げているとは思わないよ
辛いときにこんなこと言ってくれる人ほしい
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リアルすぎて泣けませんでした。
文章がすごくナチュラルに綺麗。飾りの言葉がない。のに、綺麗。
ストーリーはよくある話。なのにどうしてこんなに名作なのか。
高校時代に好きだった先生と20歳でまた再会しちゃってまた好きだーってなるってただそれだけ。
叶わないものは叶わないって、ただそれだけ。
それだけなんだけど。
何かを思い出すかんじ。
ナラタージュって、「映画で回想シーンで過去を再現する」って意味です。ふむ。
泉(主人公)が結構優柔不断の脱力系で、脱力系のひとは感情移入できると思います。
若い小野くんとつきあってみるけどやっぱり忘れられません。だから先生の元に戻りますとか、実際やったら悪口言われそうだけど。笑
先生がリアルにダメで正直私はダメ具合に色気を感じられなかった。。