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米原万里と須賀敦子、翻訳通訳の仕事で一時代を築いたあと文筆家として彗星のようにデビューしてあっというまに去っていった二人について、没後も続々と新刊が出たり全集が編まれたり、こうしたムックや雑誌の特集で人について作品について語り続けられているのもよくわかるとあらためて実感する一冊。とくに米原万里のほうは、この十年、いま彼女が生きていたらこの世の中をどう批評したか、彼女の言葉を聞きたい、とことあるごとに思わずにはいられない。(もちろん、小説をもっと書き残してほしかったと惜しんでもいるが)
それにしても、読み始めると既読のものでも未読のものでもほんとに止まらなくなってしまう。いかん。福岡伸一☓河野通和の対談がおもしろい。沼野充義、斎藤美奈子もさすがである。韓国の翻訳家による、韓国での米原万里の受け入れられ方も興味深かった。国境を超えて共感を呼ぶ魅力ある書き手だと改めて確認できてうれしい。
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最近はそうでもないが、書店に「文藝別冊」が並んでいる中、米原さんのだけ2,3冊あったり、ショッピングセンター内の小規模書店に米原さんだけ置いてあったりした。老若男女に人気のある人だ。一国の長を任せられる国際感覚、胆力、実行力、しかも民衆目線で。凝り固まった頭をほぐす下ネタ含むユーモア感覚。旺盛な読書量と、自分の文章に対する誇りと責任感。一線をキチッと引きながら寂しがり屋。彼女の魅力は底知れない。残念な事はただ一点、56歳で亡くなった事だ。
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私が米原さんのエッセイに嵌ったのも、彼女が亡くなってからのこと。だから動いて話す米原さんの姿を思い浮かべることができないのが寂しいです。
凄く賢くて辛辣で面白くて、でもきっと寂しがりやで繊細な人。
もっと早く出会いたかった。
そしてもっと長く生きてほしかったです。
副題の「真夜中の~」の意味が、編集後記に書かれています。ホロっとします。
まだ半分ほど未読の著書があるので、今後楽しみに読ませて頂きます。
妹さんの姉論や、各著名人の米原論がとても面白かったです。近くで米原さんに困らされた人々が少し羨ましい。
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河出書房発行の米原万里特集ムック。子供時代からの写真、発掘された初公開の対談やエッセイ、妹の井上ユリさんの回想文、ゆかりの人たちのエッセイや対談、ブックガイド等、盛り沢山であり、米原万里ファンには、なかなか嬉しい内容。
本書の発行は、2017年8月。米原万里さんが亡くなられたのは、2006年の5月のことなので、死後10年以上が経過しての発行である。本ムック中で多くの方がおっしゃっているが、死後10年経過しても、新作は永遠に出なくても人気作家であり、それは、なかなかすごいことだ。
面白い記事が多かったが、通訳仲間の田丸公美子さんと横田佐知子さんの対談が、素顔の米原万里さんを紹介していて、とても面白かった。田丸さんの米原万里評を下記に引用しておきたい。米原さんが実際にどういう方だったのかは知らないが、イメージが湧いている紹介だ。
【引用】
文字通り「余人をもって代え難し」。今も万里に代わる人はいないよね。華のある美人で押し出しがいい。語学に長けた本物の国際人で独自のものの見方や考え方を持っている。それでいてバカげたドタバタ喜劇からエロス、洒落たユーモアにも大笑いできる人間的広さも備えている。今後とも彼女が忘れられることはないと思うわ。
【引用終わり】