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『黄砂の籠城』に続く2冊目を読破。前著に続き、冒頭に「この小説は史実に基づく」との記載があり、従来の固定観念にとらわれた戦前の日本の姿とは違う一面を描こうという著者の姿勢が表れている。
とにかく、日本の近代史を冷静に見つめることは非常に難しい。これに対して真剣に挑戦している著者の姿勢は大いに応援したい。
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1943年8月15日、終戦の2年前のアリューシャン列島のキスカ島からの5200人の救出作戦の前後談。このような事件があったとは知らなかったが、アッツ島の玉砕の直後で米国が日本の死に急ぎ、不可解な民族との恐怖を抱かせた直後に陸軍の樋口季一郎中将、海軍の木村昌福少将らの連合作戦の見事な成功。そしてそれに振り回された米軍。1945年の8月15日以降もソ連との攻防戦で奮闘する樋口中将。そして1948年8月15日には地元で家族と共に製塩に従事する木村昌福氏が登場する。爽やかなこの2人と、それを尊敬する従軍記者菊池など、爽やかな人物たちだ。米国側の描写においても源氏物語に親しむ知日参謀としてロナルド・リーンなる人物が出てくるが、明らかにキーン氏!
そもそも8月15日という日付は終戦記念日ではない。戦争が始まる前から英霊を祀る日だったらしい。
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松岡圭祐さんの本、新刊が出るたびに買っているのだけれど
急に近代史モノになって、歴史が苦手で、『黄砂の籠城』も読み終えていないのに
これも買ってしまいました。
せっかくなら8月15日に読もう、と思ったりしたけれど
保留、再開してなんとか読み進めていた『黄砂の籠城』を優先しようと思い
こちらは少し遅れての読了(^-^;
戦史に残る大規模撤退作戦。
それを様々な視点、さらにアメリカ海軍通訳官からの視点でも描かれています。
全然知らなかったし、玉砕とは逆のこういう一面があったのだと知りました。
松岡圭祐さんでなかったら、手にとらなかったと思うので、
苦手ながら頑張って読んでみてよかったです。
アメリカ海軍通訳官のロナウド・リーンは仮名で
ドナルド・キーンさん、だとのこと。
お名前や著書はよく見ますが、今の日本があるのは、この方の進言のおかげなのでしょうか。
解説の最後の方は、この小説の解説の範囲を超えているんではないかと思いました。
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感動と興奮の脱出劇。全く知らない話で衝撃的ですらあった。松岡圭祐は突然近現代史に目覚めたのか、実に公平な視点での力作を連発している。次回作にも期待したい。
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この作家の歴史小説が意外だったので、思わず手にとった。語られることの少ない、太平洋戦争北方戦線での史実を非常に分かり易く、かつ劇的に伝えている。戦争ものが苦手の人でも抵抗なく読めそうな敷居の低さが良い。占守島の悲劇を描いた浅田次郎の「終わりなき夏」の哀しさとは対照的に爽やかな余韻。「黄砂の籠城」も読みたくなった。
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一気読み。戦争に関する小説で、感情に訴えるようなものも多い中(それが悪いわけではないんだけど)、日本人万歳的なことも、死を美化みたいなこともなく、冷静に、戦争って愚かだ、ということを訴えかけられたように感じました。
「軍人である前に人である」という言葉が印象的でした。
是非たくさんの人に読んでもらいたい作品です。
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歴史は詳しくなく、読みきれなかったらどうしようと思っていましたが、杞憂でした。
それぞれの人物像が鮮やかに浮かび、見間違えることもなく、最後まで読みきりました。
ラストがさらりとしていた感想。
もう少し序盤(=現代)にも繋げて欲しがったです。
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奇跡は待っても起きない。
願うだけではかなわない。
言い訳しないで生きる。
それが本当の強さ。
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アリューシャン列島での撤退、人名救助の話を初めて知りました。
いままでにはない視点での戦争の話でとてもよかったです。
登場する方、全員の八月十五日に吹く風、終戦の日が、どうだったのかが知りたくなくなりました。
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終戦から2年前の1943年。北太平洋にあるキスカ島からの救出劇を描いた作品。
すでに敗戦色が濃厚になりつつあり、特攻精神などが崇められていた時代にこのような史実があったとは…
太平洋戦争については、南方での戦いが描かれる作品が多い中で、この北の大地の戦いは全く知らなかった。
冒頭のアッツ島の全滅は悲しい限りだが、その犠牲を無駄にすることなく、指揮をとった樋口、最後まで一人の犠牲者を出すこともなく5,200人の命を救った木村。戦時中にも命を大事にする軍司令部がいたことに、私は心が救われた。
そして、この人道を貫いた行動が戦後の日本に影響を与えたこと。こういう話こそ、もっと現代の人たちに知ってもらいたい。
「千里眼」シリーズ以降、作者の作品はライトノベル感覚で読んできたが、この作品で作者に対する印象もかなり変わった。読んで良かった。
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アメリカによる戦後統治は戦時中の残虐さを考えると、同一国とは思えないほど人道的であった。
そのようにアメリカの日本民族観を変化させる何があったのか?
そこにはあるアメリカ人学者による報告書が登場する。その報告書に描かれてる日本民族観、それの根拠になるのは彼がかつて従軍した北の戦争。
キスカ島からの撤退作戦に準じる。
というところからキスカ島からの5000人におよぶ撤退作戦が描かれていく。これは、実話の話。
内容は非常に面白いです。
破滅的な作戦が目立つ旧日本軍にあって、仲間を救うため実行不可能と言われた作戦を実行し、しかもその作戦を後押ししたのは人道的であろうともがく将校達で、かれらがとてもかっこいい。
こうありたいなと思いました。
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毎年8月には戦争関連の本を読んで想いを馳せようと思っている。
購入してからだいぶ寝かせてしまったし、時期も少しずれたけれど、読んでよかった。
千里眼シリーズから松岡さんの作品を読み続けていて、ここ数年は史実に基づいたフィクションを書かれているのだけど、好きな作家を通して歴史に触れるって大事。
切腹や自決の美徳が好きではなく、悲しく切なく命を失う戦争小説より、いかに生き抜いていくかに焦点を当てたものをよく読んでいるけれど、この作品はよかった。
キスカ島を地図で捜したけれど、北極も近そうな小さな島で。。。
平和なのに命が奪われる昨今、こういった作品を読んで感じてほしい。
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第二次世界大戦下のキスカ島の奇跡とも呼ばれている
当時のアメリカ軍に囲まれた日本軍約5000人ちょいを保護するため
気象を予知し(当時最先端&自己流)見事に成功したあれです。
「キスカ島撤退作戦」です。
知らなかったけど三船敏郎が主役の映画もあったのね~
しかしながら痛快というか最後まで爽やか…
爽やかすぎではなかろうか?くらいに。
樋口司令官は当時ユダヤ人を過去助けたことで終戦後、最終的に助けられたり。
あと日本軍医のいたずらのペストてひたすら書いたこととか。
そんなことより大村少将。一番最高。
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日本側の視点では太平洋戦争は話としては何処を切り取っても悲劇であり、ハッピーエンドは期待できないはずである。
しかしこの小説だけは違った・・・
奇跡とは常人には理解できないことが起きた時に使われる言葉である。
しかし状態だけを見れば理解できなくとも、事細かに状況の説明を受ければ奇跡を必然として受け入れる事は可能である。
本書はアラスカ近郊のキスカ島に駐留する日本軍5,200名の撤退作戦である。
条件としてはキスカ島の周囲は米国艦隊に包囲されており内部の兵力は武器弾薬、食糧等は尽きかけている。外部の救援部隊も駆逐艦が主流で空母や航空兵力、潜水艦はほぼ無しと言う状況!!
100回やって1回成功できるかの試練となる!?
因みにテーマは日本人の戦時中の命の価値について改めて考えてみると言ったところ。
松岡圭祐さんのシリーズ物以外の作品も面白い事に気がつけた!
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キスカ島無血撤退。確かに奇跡だ。だけど奇跡の一言ですませたくない。そこには人の強い意志があるから。戦争を描いたものを読むとき、いつも“その日”を待つように読む。でも当時の人たちは、当然、その日がいつなのかを知らない。このタイトルの八月十五日は、“その日”の二年前の八月十五日だ。キスカ島から生還した彼らのうちには、また“次”の戦場に送られた人もいただろう。そして“次”は帰れると限らないのだ。奪う命・奪われた命に “次”はない。玉砕が尊いと思わなければ生きていけない矛盾に心底冷えた。アッツ島に向かい敬礼する甲板上の人々の姿に、ラスト近くの木村が妻子と海水を撒く姿に、言いようのない想いが湧きあがり胸が締めつけられた。