投稿元:
レビューを見る
3.11において、沿岸地域では津波によって建築・土木構造物が甚大な被害を受けて以降、日本では津波に耐えうる構造物設計指針の整備が進んでいます。その甲斐もあり、津波避難ビル(自治体によって指定された津波襲来時の避難ビル)の設計ガイドラインが確立されています。また、意外と知られていないことですが、建築基準法では設計外力として「水圧」を考慮することを規定していますが、その「水圧」はプールや貯水槽の外壁に作用する水圧のことを指しており、津波や高潮のような氾濫流のことはまったく規定されていません。つまり、一般的な構造物はそもそも津波を受けることすら想定されていないことになります(だからこそ、避難行動が重要であるとも言えます)。
本書では、そのような耐津波構造設計に関する法規定から力学的な議論までを網羅的に記述しています。防災工学を専門とする方はもちろんですが、津波や高潮に関する最低限の知識を身につけるという意味で、一般の方にもおすすめできる内容になっています。南海トラフ地震や首都直下地震など、超大規模災害の発生が危惧されている現代において、まさに必読の書と言えます。
(ラーニング・アドバイザー/構造エネルギー工学 OHMURA)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/opac/volume/3448792